1月9日

 蝶が舞っている。青や赤や黄の色とりどりの蝶が頭の中で飛びまわっている。

 ひらひら舞って、きらきら光る太陽の下で、蝶たちは。

 ああ、そうだ。これは夢の世界の出来事なんだ。だからこんなに美しくて平和なんだ。涙が出そうなほどに。

 あたしは、夢の中で、手を伸ばして、蝶をとらえようとしていた。両手のなかに閉じ込めたと思って、ゆっくり開くと蝶が花になってはらはらと地面に向かって散ってしまった。

 花?

 蝶だと思っていたら、花だったみたいで、あたりは一面の花畑に変わった。

 綺麗。

 あたしがそう言うと花は風に揺れた。

 不思議なほど美しい世界だった。

 ただあたしは一人でいることが突然不安になって、ここがもし夜になったら?などと考えはじめるともうだめで、怖い怖い気が狂いそう、と叫びそうになって布団から飛び起きた。

 精神安定剤を飲まなきゃ、とおろおろして机の引き出しを引っ掻きまわしてふと気づいた。

 夢の中で発狂してしまったとしても、起きて薬を飲む必要はないのではないか?ということだった。

 部屋の窓の外は雪が降っているようだった。真っ白な雪は深々と夜更けに降り続ける。

 枕元には夕飯がお盆に載って置いてあった。母が用意してくれたのだろう。

 夕飯を食べずに睡眠薬を飲んで寝てしまうことがあるので、こういうことになる。

 夜が怖い。死ぬほど恐ろしい。

 ーーーー本当に?

 本当だった。

 枕元の日記帳にはみみずがのたくったような字で、たすけて、しにたくない、と書いてあった。

 だれも助けられないよ。

 あたしは嘆息して頭を抱えた。

 いつ救われるの?

 時計の針が動く音だけが部屋から聞こえる唯一の音だった。


 

 

 

 

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だれかの日記 寅田大愛(とらただいあ) @punyumayo

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