第五十三集 久しぶりに

  6月22日 11:00 洛陽闘技場 観客席


  「お前ら絶対許さないからな。」


  「そんなこと言わずに、この通りや!」


  「すまなかったッコ!」


  昨日の夜石にされてから散々だった。しばらく放置されて、23時の男湯と女湯が変わるタイミングで従業員さんが来てくれなかったら俺は死んでたかもしれなかった。こんなしょうもないことで。


  「あっはっは!よいではないか魁紀!無事生きてるんだからな!」


  「豪もそこになおれ。」


  「あっ…あっはっは…すまん…」


  俺を残して自分達だけで逃げるのは大罪だ、さてどうしてくれようか。


  「まあ許してやってくださいよ丑崎さん、オイラも言えた立場ではないですが、丑崎さんも同じことしてましたし、そこら辺で良いのでは?」


  「うぐ…」


  小戌丸の言う通りだ、俺も同じことをしてたし、確かに責めれる立場じゃないな。


  「はぁめんどくせぇ…わかった、今回の件は不問にする。ただ、次も同じことがあったら今度こそ全員で逃げるぞ。いいな?」


  「任せとき!」


  「了解ッコ!」


  「この人達本当に反省してるんですかね…」


  反省してるのかしてないのかよく分からないけど、この件はもういいや、めんどくせぇ。子浦もなんか知らんけどいねぇし。


  「ん?この匂いは、つんつん、あぁ!こんな所で何してるんですか子浦さん!」


  「ちっ、バレてしまうじゃないですか小戌丸正!」


  「あぁ?子浦そこかぁ!!」


  「ヒッヒッヒッ!捕まえれるものなら捕まえてみてください!」


  「お待たせしました!妖術学校実力対抗戦、3日目の試合を始めます!」


  おっと、それところじゃなくなったな。先輩達の試合を見なければ。


  見どころはやはり2年1組の源拓先輩だな、俺に突っかかって来たけど実力は本物らしい。ただ酒呑様が言うには、小戌丸にすら及ばないとの事だ。十二家との差なのか、それともなにか他に違うものがあるのか。


  …


  童子切内領域


  源拓、か。カカカッ!くだらん男よ。あれが頼光の子孫だとは、頼光も報われぬなぁ。


  それより、なぜあやつから茨木の臭いがするのだ、もしや今度の宿り主はあやつとでも言うのか?女狐め、何を企んでおる…


  …


  15:00 らく道旅館 自室


  いやはや、圧巻だった。2年生ってだけあって、どの学校もかなりの実力を持っていた。その中でもやはり、源先輩が一際輝いて見えた。


  3つの分野を全てこなし、相手を蹂躙していた。あれが小戌丸より弱いだとか考えられないんだが…でも酒呑様が言うんだから間違いないだろう。


  それよりも、どうしよっかな、今日の試合も終わったし、特にやることが無くなったな。うーん、よし、寝るか。


  「魁紀君!久しぶりに相手してよ!!」


  前まではよく聞いた声だ、つい昨日も聞いた、そう、南江だ。


  「こ、と、わ、る。」


  「えぇいいじゃん別に!何か減る訳じゃないんだから!」


  「体力精神力が減るからダメー。」


  「第五班のみんなもいるから!」


  ほう、それはそれで気分が乗るな、久しぶりに第五班のみんなと同じ時間を過ごせる。


  「よし分かった、お前の相手はしないけど、みんなの遊び相手はしよう!」


  「なにそれツンデレ?」


  「殴るぞお前。」


  誰がツンデレだ、俺はいつだって常にツンツンだ。


  16:00 大阪城公園


  そんなわけで大阪城公園に来たわけだが、暑いな、もうすぐ夏だから仕方ないけど。


  「大阪城って初めて来るんだよね。」


  「ぼ、僕も。」


  「僕も。」


  「俺も。」

 

  「私も。」


  「えっ!?みんな来たことないの!?」


  面白すぎるだろ、南江以外誰も来たことないとか。


  「お前むしろいつ来れたんだよ。」


  「えっ!?みんな中学の修学旅行で行かないの!?」


  「「京都だったよ。」」


  「そんなぁ…」


  中学生当時はUFJ(ユニバーサルフロンティアジャパン)に行きたかった気持ちもあったけど、俺は京都で良かったと思ってる。なにせ風景もいいしお寺とかも凄い好きだったから。


  「ほら、来たことあるんだろ、案内してくれよ。」


  「仕方ないな!ここは班長の私に任せなさぁい!」


  久しぶりにこいつが班長してるところを見るな。


  「では、あちらに見えますのが、大阪城です!」


  「「それはわかるよ。」」


  「なんでそういう反応するの!ここはおお!とか凄い!!とかでしょ!!」


  いや、大阪城くらいは見たらわかるよ、今そこに来てるんだから。


  「もう!みんななんか冷めてるんだから!ほら!大阪城入るよ、1人300円かかるから準備して!」


  「「はーい。」」


  16:20 大阪城城内


  大阪城、1583年から1598年にかけて、豊臣秀吉が築いた城である。だがその後、大坂夏の陣において、大阪城は落城した。そして1620年に、徳川二代目の将軍徳川秀忠によって再築された。


  「秀吉の城だったのに、徳川家に崩されて建て直されるとはなぁ。」


  「壊したならなんでわざわざもう一度建て直したんだろうね。」

 

  「徳川家も秀吉のことは尊敬してたからなんじゃねぇの、知らんけど。」


  「リスペクトってやつ?」


  いや、そうだけどそれは違うだろ。


  「みんな楽しんでるところごめん、妖魔の反応がある。」


  なんだよ健太、なんだかレーダーみたいになってるじゃねぇか。


  「場所はわかるか?」


  「大阪城公園のど真ん中だ。しかもこれ、前にも感じたことある反応だ。」


  1度会ったことあるということか…まさか…


  「みんな、行ってみよう!被害が出る前に!」


  「「おー!」」


  16:45 大阪城公園


  「あ、あれって…」


  「あぁ、牛頭鬼だ。」


  「ゴォォォォ!!!」


  予想とは違ったけど、まさかこいつがまた出てくるとはな。


  「みんな構えて!通君、最前線は任せるよ!」


  「う、うん!」


  あれ、なんか前と戦い方変わった?俺がしばらく第五班留守にしてたから戦い方変えた?


  「健太君は後方支援、千尋ちゃん、粱君、魁紀君は私と一緒に突っ込むよ!」


  なんだ、より脳筋になっただけじゃないか。


  「ゴォォォォォォォ!!!!」


  「金棒ブンブン振り回すなって、危ないでしょ!」


  「遥ちゃん避けて!炎呪符(えんじゅふ)・鬼火(おにび)!!」


  へぇ、松田がいつの間にか陰陽の応用ができるようになってる。


  「千尋ちゃんありがとう!」


  「僕もやってやる、対妖魔剣術(たいようまけんじゅつ)・電光石火(でんこうせっか)。」


  あれは柏井師匠の技だな、とにかく速いやつ。粱のやつも見ないうちに剣が使えるようになったな。


  「俺も忘れられたら困る!対妖魔投擲術(たいようまとうてきじゅつ)・紫雨(しぐれ)。」


 健太は上空に飛んで、少し紫色の電気を帯びたナイフを投げた。


  投擲術とはまた珍しいものを、健太のやつよくあんなの習得したな。


  「魁紀君危ない!」


  「あっ、やっべ。」


  「ぼ、僕が守る!守護の盾!!」


  目の前に輝く盾が現れ、牛頭鬼の攻撃を止めた。通もまた知らないうちに強くなっていた。


  「最後は私が!対妖魔格闘術・排山倒海!!」


  「ゴォッ…ゴォォォォ……」


  うん、南江は特に変わってなくて安心した。


  「よっし!いっちょ上がり!」


  「みんな知らないうちにかなり強くなったなぁ、もう俺なんて要らないんじゃないか?」


  「先生とあんな特訓したからね、強くならないと怒られちゃう…」


  あの特訓ってそんなにスパルタなやつだったっけ…


  にしてもなんで牛頭鬼がここに。無事に倒せたからよかったけど、もしや茨木童子がまた現れたのか?それとも玉藻前の仕業か…


  「魁紀君、大丈夫?暗い顔して。」


  「あぁ、大丈夫大丈夫、ちょっと考え事しただけ!」


  はぁ、めんどくせぇな。警戒を怠るなということかな。


  21:00 姫路城 某所


  「クッハハ!見ないうちに強くなりやがって、仕留め損ねた。だがだが、その努力も無駄に終わる。楽しみだなぁ、決勝戦の日、この手で丑崎魁紀を殺せるのが!クッハハハハハハハハッハハハ!!」

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干支十二家妖魔日記 りちこ @richiko-bee

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