異世界転生したら「お笑い魔法」が使えるようになっていたんだが、これでなんとか魔王を倒そうと思います~ついダジャレを口走ったら大惨事になるかも~
砂漠の使徒
これが俺のお笑い魔法だ!
説明は省く。
俺は異世界転生して、能力をもらった。
それがこれ。
「お笑い魔法【ワライ】」
普通異世界で使う魔法って言ったら、水とか炎の自然系。
あと、回復やバフかな?
だが俺のお笑い魔法は、一味も二味も違う。
「おい、見つけたぞ勇者!」
おっと。
ちょうどいい実践相手が来た。
奴は俺を追う魔王軍だろう。
頭の角を見ずとも、雰囲気から悪そうだもんな。
「お前、俺の強さを知らないな?」
「ふっ、それはお笑い魔法のことか?」
あざ笑うように不気味な笑みを浮かべている。
魔王軍の情報伝達は早いな。
「そうだ」
だがこいつ、舐めてるな。
どうなっても知らないからな。
「そんなもの、知ったこっちゃねー!」
素早く手を腰の剣に持っていく。
それを抜き、俺に斬りかかってくるつもりらしいが。
「その剣、抜けんぞ」
俺は呟く。
すると、奴はあからさまに動揺しだした。
「おい、どうなってんだよ!」
必死で柄を引っ張っているが、無駄無駄。
俺の魔法は絶対だから。
「冥途の土産に教えてやるよ」
「クソっ! クソっ!」
「俺のお笑い魔法は、ダジャレを含んだ文の内容が現実になる」
「はあ!?」
「さっきは剣が抜けんと言ったからだな」
「そんなバカな魔法があってたまるか!」
「俺もそう思うよ」
でも、それが現実。
「それじゃあ、さよならだ」
俺は腰の剣を抜く。
「ま、待て! 待ってくれ!!」
これは初めの町の武器屋で買った安い剣だが。
「この剣、なんでも斬れるけん」
「ぐわー!!」
例えどんな分厚い装甲だろうと貫ける最強の剣に早変わりだ。
ちなみに、この文末の「けん」は方言なんだけど、これでも能力は発動する。
まあ、こんな感じでかなりの便利能力なのだ。
―――――――――
「ついにたどり着いたぞ、魔王!」
ここは魔王城最深部。
王の間だ。
玉座から赤いマントを羽織る人物が立ち上がる。
「ようこそ、憎き勇者よ」
こいつを倒せば、世界に平和が訪れる。
「お笑い魔法などという、ずいぶんふざけた魔法で部下を殺してきたようだな?」
ふざけてなんかいない。
いやまあ、ダジャレで倒してるけど。
「さあほら、我を倒して見せろ」
魔王は余裕満々だ。
腕を広げ、まるで俺に剣を刺してくれとばかりだ。
油断してるのか、それとも罠なのか。
どちらだろうと、この剣で貫けないものはない。
一気に終わらせるだけだ。
「くらえー!」
しかし、俺の剣は魔王に触れた瞬間、弾かれた。
「なに!?」
どうしてだ!
魔王は計画通りだったようで、意地悪な笑みを浮かべている。
「実はな勇者よ。私もお笑い魔法を習得したのだよ」
「お前も、お笑い魔法を!?」
あれって転生特典じゃないのかよ!
「さっき攻撃の直前に、その剣は貫けん、と言ったのだ!」
「クソ! そういうことか!」
だから攻撃が通らないと。
俺の武器はこの剣しかない。
ここに来て最大のピンチだ。
それなら。
「この剣は貫けるけん!」
魔法をかけ直すまでだ!
「無駄だ! その剣は貫けん!」
だめだ!
このままじゃ埒が明かない。
なにか、剣以外で魔王を倒す方法を考えなければ……。
魔王……魔王……魔王。
わかった!!
「魔王があま〇うになる!」
あま〇うってのは、前世で有名なイチゴの名前だ。
一応伏字にしとく。
「なっ……! 貴様ー!!」
最後に怒りの叫びをあげて魔王は……おっと。
イチゴが地面に落ちるところだった。
後でおいしくいただ……きはしない。
けど、下手な刺激を加えると魔王が復活するかもしれないから、扱いには気を付けなきゃ。
―――――――――
「よくぞ魔王を封印してくれた勇者よ!」
王の前で俺は報告を済ます。
「ついにやりました」
「ほうびにこの宝をやろう」
「おおっ!」
数人の兵士が運んできたのは、大量の財宝だ。
これで一生遊んで暮らせる。
スローライフ確定だー!
俺は宝を受け取って、いそいそと王の間を後にする。
あ、そうだ。
その前に一応言っておかなければ。
「最後にいいですか? そのイチゴ、扱いに気を付けないともういちご復活しますからね」
あ、やべ。
つい癖でダジャレにしてしまった。
「ふはははは! 馬鹿な勇者よ!」
こうして世界は再び闇に包まれた。
(完)
異世界転生したら「お笑い魔法」が使えるようになっていたんだが、これでなんとか魔王を倒そうと思います~ついダジャレを口走ったら大惨事になるかも~ 砂漠の使徒 @461kuma
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