占い師の勘
サビイみぎわくろぶっち
1.
「三丁目の占い師さ」
「ああ」
「最近、同じ事ばっかり言うようになったらしいぜ」
俺達占い師仲間の間でも、三丁目の占い師は、“当たる”ことで一目置かれている存在である。
でも、占い師というものは、実際の占いの才能よりも、口が上手いほうが売上に繋がるから、その辺は微妙なのだが。
「噂よると、誰にでも、“今後の三年間は、先のことを考えずに今を楽しめ”って言うようになったんだってさ」
「ふうん」
「あんま同じことばっかり言ってると、人気なくなるぞ」
“今を楽しめ”か。
お客さんの立場で考えると、言われて嫌な言葉ではないだろうが、手を抜かれていると感じる人もいるだろう。
「やる気がなくなったのかな」
「さあなあ…」
一体、どうしたんだろう。
話しを聞いてみるべきか。なんとなく、胸騒ぎがするし。
***
「ふんふん、それで転職を考えているんですね」
「でも、迷っていて…」
「迷う必要はありません。これからの三年間は、好きなことだけして過ごしてください」
「え…」
「無理に働かなくても大丈夫。思いっきり楽しむことが大切です」
「………。本当ですか?」
僕は自信を込めて頷いた。
「はい。信じてください!」
客は半信半疑という表情で帰って行った。
ふ~む。あの様子じゃ、僕のアドバイス通りに、好きなことだけして暮らすことはしないかもなあ…。
でも、占い師の僕にできるのはこれだけだ。
次のお客にも、僕は同じことを言うだろう。僕の中の占い師の第六感が騒ぐのだ。
三年後、おそらく人類は消滅する。
人類だけでなく、地球上の動物や植物もかもしれないし、もしかすると地球や月や太陽もどうにかなるのかもしれない。
僕のこの占いの能力が、昔の預言者や術者みたいに、詳しいことまで言い当てることができるような、強力なものだったら良かったんだけど…。
でも、本当に多分だけど、、隕石が地球に衝突するとか、地球の核が爆発するとか、そういうレベルのことが起こるんじゃないかと思う。
だから、詳しく将来を予言できたとしても、それに対する対処法はない。
よって、運命を受け入れ、残された時間を有意義に過ごすのが一番良い。
僕は道行く人に声をかけた。占い師ができることをするために。
「占いはいかがですか?今度の運勢を知りたい方はいらっしゃいませんか?そこの方、ご興味があるならいかがですか…」
占い師の勘 サビイみぎわくろぶっち @sabby
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