第六感

月夜桜

迷路を探索します!

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「メルティ、もうちょっと昔みたいに運動した方がいいんじゃ?」

「う、うるさいわね! これでも、トリニティで、働き、始めてからは、ちゃんと、運動、してるわよ!」


 稀代の魔法師であるメルティが僕に吠えてかかる。

 彼女は、僕と同じ魔王討伐隊だった少女だ。


「る、ルーグは、なんでそんなに体力があるのよ!」

「そりゃあ、僕はメルティと違って引きこもりじゃないし?」


 僕達は、そんな会話をしながら、現魔王の依頼の下、旧魔王が遺した迷路を歩いていた。

 依頼の内容は「先代が隠した遺産を探して欲しい」。

 どうやら、税収が赤字にも黒字にもならない状態で、大きな政策が取れないそうだ。


「あ、ルーグ。その角左ね」

「ん、左ね、了解」


 メルティの指示で通路を左に曲がる。


「待って」

「どうした?」

「……こっ、ち!!」


 そう言うと、魔力を溜めた左手を握りしめ、左の壁を殴りつけた。

 するとボロボロと壁が崩れ始め、ひとつの通路が現れた。


「……はぁ、相変わらず、メルティの感は凄いね。連れてきて正解だったよ」

「ふふん! そうでしょそうでしょ!」


 優しく頭を撫でてお礼を言う。

 彼女──メルティリア=ヘルスティアの第六感とも言える超直感には、魔王討伐隊として活動していたときも助けられた。


「!? ルーグ! 右足!!」


 一歩踏み出した瞬間に警告を発せられ、反射的に【空間跳躍】で後ろ側に退避する。


「ふぅ……物理的罠?」

「多分そうね。前魔王は、余程、ここのへそくりが大事だったみたいよ」


 そう言いながら小さな手でぺたぺたと床を触り、背を屈めたまま石煉瓦を押し込んだ。

 すると、彼女の頭を掠めるように左右の壁から槍が飛び出てき、それぞれの隙間を埋めるようにして止まった。


 ……凶悪過ぎない?


「いや、ほんと、メルティを連れてきてよかった。というか、大丈夫?」

「大丈夫よ。少し髪が切れたくらいね」

「メルティの髪は綺麗なんだから大事にしなよ?」

「そんなに言うなら、ルーグ、あなたが私の髪を切ってよ。ミューリの髪もあなたが切ってるんでしょ?」

「変になっても知らないからね?」

「いいわ。さ、ルーグ、行きましょ」


 どこか嬉しそうなメルティを先頭に迷路を攻略するのだった。

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第六感 月夜桜 @sakura_tuskiyo

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