骨拾いのジーン~封印迷宮都市シルメイズ物語~
荒木シオン
迷宮で死ねばどんな英雄もだたの財宝である
一匹狼の
探索者の数だけ封印迷宮との関わり方があり、そこに目的がある……。
ボクもそんな探索者の一人なのだけど、今日は陽も昇らぬ早朝から所属するクランに呼び出しをくらった……。
急な
軽く挨拶をしつつ、この珍しい状況に
「
エントランスから
彼女の名はエレナ。我らがクラン『馬の骨』を
さておき、その口から
そう、なにを隠そうクラン『馬の骨』は迷宮で力尽きた探索者を持ち帰り、その遺体
つまり、探索者たちが言うところの『
しかし、この人員数にクランマスターの浮かれよう……表層は
周囲の話し声に耳をそばだてると、原因はどうやらここ
で、マスターの話というか演説が終わり、じゃあ、元気に仕事へ行きますかー、と
「あぁ、ジーン! キミは別件があるから、執務室に!」
なぜか呼び止められた……。嫌な予感がする。
★ ★ ★
結果は大当たり。悪い
ボクに下されたオーダーは同じ骨拾いでも、表層ではなくその下、
人員や物資は好きに手配して良いから! と軍資金としてずっしり重い大金の詰まった革袋を渡されたわけだが、ボクの気はそれ以上に重い……。
だって、上層である……探索における
けれど、上層になるとそれがガクッと落ちて、
そんな
というわけで、ボクは今、少しでも生還率を上げるために
ここを訪れた理由は、
「
とある娼館の一室、男女の行為が行われているであろうそこへドアを
「おっと、珍しいお客様だ。ジーン、
ボクに
「うっさい。キミは娼館に暮らしてるみたいなもんなんだから、選ぶ時と場所なんてないだろ!」
「ジーンが私の元に来てくれたらこんな
こちらへ熱を
「ボクにそんな趣味はない! あとついに
「いやいや、ジーン? キミは否定するけれど、その
「よしっ、分かった。今この場でキミを殺そう」
仕事に必要な人材だが、なに、多少高くても他を当たれば代わりが見つからないこともない……はずだ。
そう決意して
「
いつの間かボクの背後へ回り込み、その手には抜き
「うっさい! 返せ! あと協力する気があるなら話を聞け!」
「あぁ、いいとも。ジーンの隣を歩めるなら私はどこへでもともに行くよ」
はっ、聞いたあとで
★ ★ ★
数分後、仕事の内容を聞き終えると
「うん……ジーンはいつも難しい案件を持ってくるね。なんだい? これは私を試しているのかな? 実は愛の試練というヤツなのかい?」
「っんなわけねー。あと冗談を言ってると今回はガチで死ぬから……」
「だろうね……。はぁ、けれど、ジーンと一緒に
「いや、そこはボクを守れよ。あの世へはキミ一人で行くといい」
「そして、私はジーンの心の中で生き続けると……おや、それはそれで悪くない」
なんて本気で思っているらしいラビの嬉しそうな表情に
「お~う、
半分外れて開けっぱなしのドアから赤い
「なっ?! なんでチェルトラがここに来るんだい?!」
ラビが目を見開き、驚いた様子で叫ぶ。
「うっさい。ボクがさっき呼んだ。お疲れ、チェルトラ、悪いね」
「なんのなんの、ジーンの頼みならどうってことないが、上層に行くってマジか?」
「マジもマジ。大マジ……生きて帰ったらエレナに絶対文句を言うね」
「カッカッカッ! そらそうだわなぁ~」
肩を
さて、これでメンバーが
あとは運を天に任せるのみだ。まぁ、
★ ★ ★
そうして準備を
目指すは第四十六階層・SEの第二区画。南口を使うより遠回りになるけれど、急がば回れ。まずは安全第一に……。
ボクたちはようやく上層へと
そして、これが上層からの生還率が
どういう仕掛けなのか不明だが、迷宮の構造というか環境が上層からは一気に変化する。
この森林などはまだいいほうで、場所によっては一面火の海だったり、酸の雨が降ってきたりするところもあるらしい。
さておき、ここまでで幸運だったのは迷宮生物にほぼ
おかげで体力やら物資など色々なものが大幅に節約できた。
表層を中心に活動している探索者は気の毒だが、ボクたちにとっては良いこと
で、
白を基調とし
大森林の入口、その木の根元に腰を下ろし、まるで一休みでもするかのように
その姿とそばに転がっている
死後数日経っている感じだが、迷宮生物に荒らされていないので、
「そんじゃ、まぁ……解体しますか」
だが、どんな神に
彼女の目的がなんだったのかは知らないが、迷宮に関わらなければ死後は安息の眠りにつけただろうに……。
「サクッと終わらせるから、その間の警戒よろしく」
「あぁ、大船に乗ったつもりで安心して作業するといい」
「ジーンは本当、
この二人がいれば、上層の迷宮生物にもおくれを取ることはない。
五感しか持ち得ない私のような
そんな彼らに周辺警備を任せつつ、遺体から衣服やその他装備を
最後に
うん……今回は別に嫌な感じもしないし、このまま何事もなく
前に同じような仕事を
他の探索者たちが
こうして仕事を終えたボクらは地上へ戻るのだった……。
……to be continued?
骨拾いのジーン~封印迷宮都市シルメイズ物語~ 荒木シオン @SionSumire
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