Lenticularisーお笑い/コメディー

MACK

誰にだって弱点はある


 この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。


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 ドラえもんはネズミが嫌いだし、弁慶だって脛を打ったら泣いちゃうし、アキレスだって踵を狙われたらアウトだったりする。どんなに万能で、強くて、英雄であっても、どこらかには弱点がある。

 そういうちょっと足りないところがある方が、人間的には魅力的なのではないかと。ちょっと抜けがある、そういう所がきっといい。可愛い。

 カッコイイ吸血鬼がニンニクにのけ反ったりするの、萌えだし?

 え? 萌えない!? おかしいな……。

 火属性は水に弱い、土属性は雷に弱いとかそういうのとかもさ。


 だいたいどこらかに弱点がないと、ゲームで倒せない敵ばっかになっちゃうじゃん。そしてこれから、私の弱点が判明するのだけど。いや、弱点が明らかになるからって倒される予定はないから! 攻略本に書くなよ!


 等と、脳内コントを繰り広げつつ健康診断の問診票を握りしめ、自社ビルの二階の大会議室に向かう。

 あー緊張するなあ。緊張するよね健康診断!


 社員番号を見せてチェックを入れてもらっていざ入室。

 

「ぎゃ」


 思わず漏れるよね、可愛くない悲鳴。キャッなんて女子っぽい可愛い悲鳴、あげてみたい。まあ大抵驚いた時に出る悲鳴って「ひっ」「うおっ」「ぐおっ」でしょう大部分の人が。きゃ☆なんて可愛く言う余裕があるならまだまだ全然パニックじゃない。「ぎゃ」と出てしまった私の衝撃、伝わった?


 何故かうちの会社の検査、一発目が眼圧検査。


 そう、私の弱点は目! ボスキャラの弱点としても多いよね。シューティングゲームとかアクションゲームとかシューティングゲームとか。あ、シューティングを二回言ったかも。ごめん、混乱してる。


 健康診断の何が嫌かって、採血でもバリウムでもなく、眼圧検査。


 体重測定とか身長測定とか聴覚検査で徐々に検査機運を高めてから受けたいのに、一発目。一発目から殺しに来てる。


 すごすごと覚悟を決めて椅子に座る。顎をつけ、額をつけて覗き込む。気球が……と思った瞬間に吹き付けられる風! ダメージを受けてのけ反る私。ビクッとする人は多いけど、のけ反る人はあまりいない気がする。こうなっちゃうのも嫌な理由だ。ほら検査の人、笑ってるし!

 一回これを食らっちゃうともうダメ。ダメージなだけに。

 腰が引けるというか首が引ける。

 目が開けていられないの。開けておかなきゃって思うのだけど、気球が見えた瞬間に目を閉じちゃうレベルでダメになるのだ。目に何かされるのは本当にダメ。ダメージを含めると、ダメって何回言ったんだ。あ、数えなくていいから!


 検査の人ごめんなさい、時間かかってるよね! 気分はシューティングとかアクションのボスキャラ。ほら、ボスキャラってずっと目は開けてないしさ……。開いた瞬間にお願いしゃす! という感じで……。

 こういう時だけ反射神経がよくて、「プ」に反応して「シュ」の時には閉じてるパターンとか。瞼すげえや!


 気づけば後ろに五人ぐらい並んでたりしてるけど、健康診断のクライマックスを最初に終えた私は、何喰わぬ顔で残りの検査を華麗にこなすのであった。



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 この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。(くどい)


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