戦の女神

織宮 景

悪魔の子供

 19XX年。戦争の真っ只中、ある少女が覚醒した。

 

 奇跡の子供は囚人の母親から生まれてきた。性別は女。容姿は髪色は白く、目は赤かった。引き取ってもらった先の孤児院では見た目から『悪魔の子』と言われ、他の子供達にいじめを受けていた。

 それが続いたある日、少女はいじめてきた1人の少年を指差し、こう告げる。


「明日死ぬよ」


 それを聞いた少女をいじめていた者達は少女の忠告を嘘だと言い、その後も血を吐かせるほど少女をいじめた。だが、ただの戯言ではなかった。

 明日になり、少年は朝食で食べ物を喉に詰まらせて亡くなった。最初はただの偶然。誰もがそう思った。しかし、彼女の偶然はこれだけではなかった。

 修道女が「孤児院で育てていた野菜が収穫時が来たので、次の日に子供達と収穫しよう」と話をしていると、例の少女が現れ。


「明日は台風がくるから今日収穫しないといけないよ」


 そう少女に忠告をされたが、自分たちにかまってほしいから言った嘘だと修道女達は考え、その日に収穫をしなかった。

 そして次の日、修道女は部屋を揺さぶるほどの轟音で目が覚めた。窓を開けると凄まじい勢いの風が修道女を襲い、尻餅をついた。そして鳴り響く雷の音。脳裏に少女の言葉を思い出す。また少女の言った通りになったのだ。

 これをきっかけに修道女達は少女の異変に気づいた。怖くなった彼女達は軍に連絡する。この件を聞いた軍は少女を軍の実験所へ送った。この時代の実験は戦争で使えるかということが重要だった。地図を渡して、何も明かさぬまま、自国と敵国の軍の位置を把握できるかという実験をした。結果は自国の兵の位置は完璧に当てはまり、敵国の兵の位置もほぼ当たっていた。その実験を繰り返し、十分に使えると分かった研究者達は参謀に少女の予言内容を知らせた。


「敵国の第二軍団の左翼に我が第一軍団を鉄道を使って運び、攻めろだと?そんなことをすれば敵国の第一軍団が救援に来るぞ!そのような戯言を吐く少女の話など聞いてられんわっ!」


 太った軍人が怒り、激しく机を叩く。


「聞いたぞ。その少女とやらは実験でこれまでほぼ100%で我らの作戦内容を当てていると。その少女の話を聞いてやってもいいんじゃないか?」


 知的な細身の軍人が言う。だが、太った軍人のほうは納得がいかないのか苛立ちを見せる。

 議論の末、この作戦を実行することが決まった。そして作戦を実行した結果、この戦いに勝つことができた。その後も、軍に利用され続けた少女。いつしか彼女は『戦の女神』と呼ばれるようになった。


 時は経ち、大人になって多くを理解した少女は戦争に加担したことを知り、自殺したらしい。

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戦の女神 織宮 景 @orimiya-kei

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