第149話 もう止まらねぇよ
「今のは余り痛くなかっただろう?。それに…悪くないだろう男同士のSEXも」
瞼を薄く開くが、涙を沢山溜めた瞳では、視界がぼやけて思う様に見えない。吹き払うかのように、再度瞳をつむると顔を反らした時。涙が一筋頬を伝い流れた。
綺麗なクリスの体を舐め回すような視線で見つめている。次第にアスラの視線は、徐々に下の方に落としていくと、元気なクリスの物を捕らえそれを優しく握ると、上下にゆっくりと動かし始めた。
「もうやめ…てぇ…お兄…ちゃ…ん」
閉じようとした脚をアスラの手に寄って押さえ込まれてしまい、そのまま兄の肩に乗せられてしまった。
「何時までも子供だと思っていたのに、知らない間に大人に近づいてたんだな」
クリスのそれを反らし、全てを見える様にすると、余すところなく見ようとするアスラに、クリスは悲鳴にも似た叫び声を上げた。
「もうっ!やめてーー!!。見ないで!こんなのヤダ。僕は男なんだ…男なのにこんな…気が狂いそうだ……」
「なら狂えばいい。俺みたいに狂って、野獣の様に欲望のままに愛おしい子の身体に食らいつけ。クリス…言葉とは裏腹に体は正直だよな。ヤダとか言っときながら、こっちの方は素直になって、俺の指を受け入れてくれているぜ」
クリスの
「はぁあ…」
「クリス…長かった。やっとこの時が来たんだ。…一つになろう」
その言葉を理解したクリスは、慌てて逃げ出そうとしたが、それより早くアスラの手によって、押さえ込まれてしまった。
「大人しくしてるんじゃないの?悪あがきする分。終わるのが遅くなるぞ」
アスラはクリスの頬に手を添え軽くキスを交わすと、少し馴染んだ場所に自分の分身を押し当ててきて、狭い部分を少しづつ押し広げてきた。
「いやあぁぁぁぁ!!---」
先程散々解されていた事が幸いしたか。初めての時よりかは、多少は楽だったが、如何せん今自分の危機は、その指の何倍も有ろうかという
アスラは、優しくクリスの耳元で囁いた。
「クリス何も怖がる事はない。落ち着いて深呼吸しろ、そしたらゆっくりと力を抜くんだ。少しは楽になる」
クリスは言われた通り、何とか落ち着くと、深呼吸を試みた。固かった所も先程より解れてきた事を感じたアスラは、呼吸に合わせて、自身を徐々にクリスの中に収め始める。
「お兄…ちゃん…もう止め…て痛い…痛いよ」
声を掠れさせながら、兄に止めるように訴えるが、ここまで来て止める事の出来ないアスラは、クリスを労わる様に、優しいキスを体の至る所に送り続け、最後には可愛らしい唇を塞ぎ、甘い舌を絡めだした。
「悪いな。もう抑えが利かない。止めれねぇ。もう止まらねぇよ」
アスラのそれが少しづつ、自分の体内を犯し進んでくるのが分かる痛みに、クリスの瞳からとめどなく、涙が頬を伝い流れていく。
「くっ…はぁあ…ああ」
何とか、全てを収め終えたアスラの自身は、クリスの痛みが少しでも引けるのを待つかのように、少しの間クリスの体内に、自分を収めておいて、その間にクリスの表情を幸せそうに、見つめていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
上がった息を整えようとしているクリスに、アスラは労わるように聞いてきた。
「よく頑張ったな。これさえ乗り切れば後は何てことはない。気持ち良いのが待ってるさ。…もう平気か?」
如何にも苦しそうに、そして不機嫌に、兄を睨みつけた。
「へ、平気だから、早く終わらせて!」
その無愛想な言葉に、アスラは笑う事しか出来なかった。
「それじゃ動くぞ」
クリスに負担をかけさせない為に少しづつそれでいて、ゆっくりと動かし始める。
「ああ!…ぅ…」
綺麗に反らした体に、アスラはその体を抱きしめると、愛おしそうにクリスの体にキスを落としていく。
「愛してる。クリス…クリス…クリス…」
今抱きしめているのが、本物のクリスである事を確認するように、名前を繰り返し呼び続けた。
大分慣れてきたのか、クリスの表情にも苦痛から解放され、段々赤みを増した顔になっていた。
「はぁあ。ああ…くっ…いゃあー!」
この初めて感じる刺激に流されそうになるが、ここでこれを認めてしまったら、今までの自分が何処かへ行ってしまいそうで、怖かった。
『嫌だ。僕は今まで通りの生き方がしたいんだ。こんなの絶対認めない。こんなの、こんなの…なぜ僕が、こんな思いまでして、こんな事させられなきゃいけないんだ…』
クリスの思いを知ってか知らずか、アスラがクリスを見つめながら、満足そうにしていた。
「くっ…思った通り、可なり狭いな。挿入する度、俺のを締め付けて密着してくる」
時折体とか、唇にキスをしてくる兄にクリスの堪忍袋も限界に来ていた。
その時。自分の顔の正面に来たアスラの顔を、ぶっ叩こうとした時、兄に自分の行動が読まれたのか、両腕を捕まれたかと思ったら、枕の横に押さえ込まれ、濃厚なキスをされていた。
唇を離したアスラは、ニコッと笑っている。
『このぉ~』
そう思っていたら、いきなりアスラの動きが早まって、余計刺激が身体中を駆け巡り、クリスは必至で、枕を掴んで耐えようとするが、それさえも兄によって両腕の自由を奪われている事も有り、出来ないでいる。何かにすがる事も出来ない。その内兄の両手によって押さえられていた手首から、撫でる様に触れながら降りて来る指に、自分の両手に重なり合わせる様に、指を絡めてきた。刺激から逃れたい一心で、思わず兄に応えるかの様に、知らず知らず力強く握り返していた。
「ああっ…はぁあ…もう…止めぇ…てぇ…はぁ…はぁ…」
息を乱しながら止める様にお願いをしてみたが、虚しくも動きを止めようとしないアスラに、クリスの潤んだ瞳からは、一滴の涙が渇いていた頬を伝い、また濡らしていく。
「くっ…イク。クリス…イク時は、一緒にいこう」
「だ。誰が……ふざけんな…はぁああ…んっ…」
アスラはその言葉に苦笑いしながら、クリスをもっと感じたくって、力強く何度も何度も突き上げる。その度にクリスの初めてとは思えない程に刺激的な喘ぎ声に、そそらされて更に追い詰めてしまいそうになる。
「わぁ!…くっ…うぅっ…」
そこでもう限界に来ていたのか、アスラが自分の性をクリスの中に解き離すと、荒い息を上げてクリスに倒れ込んできた。
そして少し遅れてクリスも、アスラの腹に向けて、性を解放させる。
お互いに荒い息をついていたが、瞳を閉じている額の上に冷たい物が落ちてきたのに気が付き何だろと思い、うっすらと瞳を開けてみると、目の前には兄の顔が近い場所に有った。その額から、自分の顔に汗がまた一滴落ちてくる。
その事に気が付いたクリスは、息を整えながら、目の前の兄の顔を見つめていた。
兄の肩に乗せられていた両脚を、力なく兄を挟む感じで下に下ろした。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
2人は、まだ治まらない荒い息を整えようと、特にクリスは必死だった。
そんな中アスラは、上半身だけ起こすと、愛する人の体を擦りながら、可愛いクリスを見つめている。
「どうだったクリス?。初体験は」
とんでもない事を聞いてくる兄に、完全に切れてしまい、気が付けば手を上げてしまい、乾いた音が部屋中に響いた。
見事に平手打ちを決められた頬を、擦る事も無くニッと笑うと、その場で胡坐をかいた。
「俺はてっきり拳で来ると思ってたのにな。でもかなり効いたぜこの一発は、お前も喧嘩したら強そうだよな」
兄の話しもそこそこに、脱がされた服を掴む為に、ベットから抜け出すが、激痛と腰が立たないとで、床にペタンと座り込む形になってしまった。
「痛ーい……っ」
「おいおい。急に立てる分けないだろう。腰に悪いぞ」
それを見ていたアスラは、笑いを堪え乍らも、ベットから下りると、クリスを抱え上げ、ベットに座らせた。
「触るな!」
自分に触って来る兄の手を払いのけると、ゆっくりと立ち上がる。
「……お兄ちゃんなんか…お兄ちゃんなんか……もう僕に触るな…もうあんたは他人だ……元々…そうなんだから……」
大粒の涙をこぼしながら歩き出すと、全裸のまま自室へと戻って行ってしまった。家には自分以外誰も居ない事が幸いしただろう。
残されたアスラは、出て行った扉を見つめていたが、視線をベットに移すと、今まで此処に居たクリスの事を思い浮かべている。
「全てが可愛かったな。俺は諦めない。とうとう一線を越えてしまったんだ。もう後戻りはできない。…クリスが何と云おうと、拒絶されても必ず俺に振り向かせて見せる。
窓から見える空は、午前中の柔らかな日差しが、部屋の中を照らし出していた。
トーマスとモルトンは、タキテリに酒臭いと、嫌な顔をされながら笑い合い。リキータとダリエアは、デパートで楽しそうにワクワクさせながら、商品選びに燃えていた。
そんな中クリスだけは、自室のベットに力なく倒れ込むと、余りの悲しみに、声を殺す事も無く泣き出した。その泣き声はアスラの元まで届いていた。
その泣き声を聞き、小さく溜息を付くと、側に立てかけてあるエレキーを手にし、アンプをケーブルで繋ぎ、ピックを手にすると、クリスが思いっきり泣けるように、自分に聞かれない様に、派手めなロック調の音楽を弾き始めた。
【BL】雪に願いを 佐伯瑠鹿 @nyankonyanko
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