ある日の放課後その3 超能力を使いたい:KAC20223

石狩晴海

普通のデート

「原理的に、この世界の超能力はわたしにも使えるのよね」

「どうしたんですか。唐突に」

「この前の説明を思い返して決めたの。せっかく使えるなら努力しなきゃウソでしょ」

「セキュリティのためとはいえ、システムの漏洩は出来ればしたくなかったんですけどねぇ」


 放課後デートというわけではないが、定期考査後の短い休みに2人してちょっと遠目の喫茶店に足を向けた時だ。


「食べたいスイーツがあるって、俺を連れ出す口実だったんだ」

「あら、それは本当よ。ごちそうさま」


 ホワイトクロネージュを食べ終えて小さく合唱。


「その甘い性根をへし折るために、もう少し詳しく説明してみましょう」

「それよりも、口調」

「気になります?」

「なるわ。足を伸ばしているんだから、それぐらいいいでしょ」

「わかったよ。順に説明してやる」


 ストローの端を抑えてアイスコーヒーを留める。

 カップからストローを取り出し、机の上で指を離し溢す。

 ストリーの中身は広がらず玉になって空中に浮いた。


「ごく簡単な念動だ。これぐらいならシステムに接続すれば誰にでもできる」


 そのままぱくっと口に含んで水玉を消滅させる。


「逆を言えば、肝心の要の”この世界のシステム”に繋がらなきゃこの程度もできない」

「でも、世界を認識できるなら誰でも繋がっているっていうじゃない」

「深度の問題だ。世界の物理法則を実感し演算できるかが重要視される。今の水滴だって引力が見えていなけりゃ出来ないからな」


 今度はグラスの縁を軽く弾き、中に入っている氷を一つの星型に整形させた。


「リスクだってある。アイツの封印は聞いただろ」

「超能力を使いすぎると怪獣になっちゃうだっけ」

「アイツほどじゃないが、俺にだって能力執行の代償はある。今やっている手品程度でもわりと腹減るんだぜ」


 身を乗り出し事の中心を聞き出す。


「それで、具体的にはどうすればシステムともっと深く接続できるようになるの?」

「生まれ持った資質、運命力に寄るんで無理な人間には一生できない」

「なによそれ。人を期待させておいて」

「こうして俺たちと知り合って交流を深めている時点で十分な訓練になってるよ。人様モブよりは随分と勘が良くなっているはずさ」

「慰めになってない。もっと見て解る派手な能力とかが欲しい!」

「最初から心を折るための説明って言ったじゃないか」

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ある日の放課後その3 超能力を使いたい:KAC20223 石狩晴海 @akihato

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