掴み取った決意
顎歌
手を伸ばしたその先に。
俺は、深淵へ必死に手を伸ばす。
深淵は、腕がギリギリ入る程の僅かな隙間から遥か先まで、続いている。
奥は、暗闇で目も使えず、音すらも飲み込んでしまうため、耳も当てにならない。
だから、感覚だけが頼りだ。
はっきり言って俺のやっていることは、
無謀な事かも知れない。
在るのかすらも分からないお宝を
この深くて、狭くて、暗い穴から
手の感覚だけで探し出す何てことは
不可能だと周りの人々は、諦めるだろう。
俺もそうだったんだ。
必死に手を伸ばしてる奴らを馬鹿にして
嘲笑っていた。
その結果が、地に這いつくばり、ゴミのようなこの生活だ。
それなのにプライドだけは高くてゴミみたいな言葉を吐き、這い上がろうともしなかった。
だが、今日の俺が言っている。
伸ばし続ければ、その先に
鈍く光る何かがあると。
それを掴めれば、俺は変われると
強く感じるんだ。
手を伸ばせば、すぐ近くに俺を変えられる物があったのに今まで見ないふりをして逃げてきた。
だが、俺は、もう逃げない。
もう伸ばしもせずに諦めてた俺に戻るのは
嫌なんだ!!
俺は、深淵に向かって叫んだ。
俺の決意は、すぐに飲み込まれたが
何度だって叫んでやる。
何度だって手を伸ばしてやる。
今日の俺を救えるのは、今日の俺しかいない。
そうだろ?
俺は、感覚を研ぎ澄まし、更に奥へと腕を伸ばした。
うおおおおぉー
雄叫びを挙げながら闇雲に手を振る。
すると指先に何かが当たった。
俺は、その何かをガッチリと
掴んで離さない。
遂に成し遂げた。
俺は、黄金色に光るお宝を見て
泣きそうになりながら、思う。
これで俺は、変われたのだろうか。
いや、これからだ。
決心を新たに、ここから俺の成り上がりが始まるのだ。
とりあえず、今日の晩飯は、豪華になる。
この500円で何食おうかな。
そんなことを考え、夜の街に姿を消した。
掴み取った決意 顎歌 @agoro
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