ガラス割り人形
結包 翠
第1話 ガラス割り人形
ガラスが割れる瞬間は、綺麗で切ない。
凪いだ水面のようにつややかな表面に細かいヒビが走って、次の瞬間には不揃いな破片が宙に飛び散る。
澄んだガラスがきらめいて瞳の奥を焼く間、鮮烈な音が鼓膜を揺さぶる。
あの音。うつくしい音。無垢な音。
それがいつも風に乗って、僕の元まで流れてくる。ガラス割り人形達が出す音だ。
ガラス割り人形は感覚が鋭い人だけが感知できる存在で、それほど数は多くないらしい。子供の頃にそんな噂を聞いてから、僕はずっと、いつかガラス割り人形と会ってみたいと思っていた。
彼らが何を思ってガラスを割るのか。虹のかかる晴れ空を見上げた時のような、色彩豊かな高揚感を煽る音と共にある彼らは、どんな姿をしているのか。
ずっと、ずっと、知りたかった。
繊細な音を生み出すから、きっと天使みたいな姿だろうと思っていた。
だから。
出会い頭に岩を投げつけてきて目を血走らせている女の子がガラス割り人形だなんて、信じられなかったんだ。
ガラス割り人形 結包 翠 @yudutsu_midori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ガラス割り人形の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます