永遠の勇気
仲仁へび(旧:離久)
第1話
夏の地の少年は友を亡くして旅立った。
世界を見て、まわるために。
「お前の分まで世界を見てくる」
冬の地の少年も、孤独になって旅に出た。
世界を見て、真実をその目に焼き付けるために。
「君が確かめたかった世界の姿を、この目にうつしてくる」
二人は出会い、共に旅をする。
「同じ目的なら、一緒に旅してた方が色々お得だろ」
「その物言いには同意しかねるが、一理ある」
心に二つ分の勇気を秘めながら、情熱と冷静の感情と共に……。
その世界は、作られた箱庭。
その世界の王にとって、都合のいい箱庭。
実験にされたその世界は、とある女性のためにあった。
「君を生き返らせて、君に幸せになってほしいんだ」
王は、なくした女性を蘇らせるために、箱庭で様々な実験を行い続ける。
「たくさんの子供達を集めて、実験を行おう。全ては彼女のために、この願いを叶えるために」
二人の少年は、その行為を、止めようと考えた。
「王様、お前のやっている事は間違っている」
「これ以上犠牲を出させるわけにはいかないな」
そして、出会う。
森の中の緑の少女と。
「私も二人に力をかすよ。だから三人で戦おう」
優しい心を宿した、おだやかなまなざしの少女と。
その三人の少年少女は、三人分の勇気を携えて、旅をした。
箱庭に住む子供達と交流し、愛に縛られた恋人達の鎖を断ち。
枯れ野を駆け、荒れ狂う海を渡り、天貫く山脈を超え、閉ざされた森の先へ進んでいく。
そしてたどり着いたのは、王の居場所。箱庭の中心部、王座。
「―-やはり、ここまでたどり着くか。最初に見た時、こんな日が来るのではないかと予感していた」
三人は情熱の剣と、冷静の盾、そして慈愛の歌と共に戦いに挑んだ。
報われぬばかりの王の願いに、終止符を打ち。
天から闇夜を引き裂く雷を呼んで、決着をつけた。
箱庭は崩壊し、王の命は費える。
三つの勇気が作り出した、その世界では、誰かがいたずらに実験で苦しめられる事はないだろう。
三人はそれぞれの住む場所へ帰っていく。
「またな」
「また会う日まで」
「きっと会えるよ。同じ世界にいるんだから」
変わる世界を、その目に焼き付けながら。
永遠の勇気 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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