ハイ&ロー
高野ザンク
霊感・ヤマカン・第六感
堺は自分の第六感に自信をもっていた。
だから、今、目の前のカードが、出されたカードよりも上か下かということも、なんの迷いもなく決めることができた。
巡り巡って辿り着いた闇カジノ。彼が臨むは「ハイ&ロー」。ディーラーの手札よりも自分の手札が上か下か。それを当てれば勝ちという、シンプルかつ直感がその勝敗を決めると言ってもいいゲーム。
堺には、どういうわけかあらかじめ結果がわかるという感覚がある。ゲームガチャで回した途端にレアがでることがわかったり、タロットカードの1枚引くときに、直前に頭に浮かんだカードが(しかも正・逆という位置関係も含めて)ズバリ出現するということもできる。残念ながら、常にこの感覚を使えるわけではないではないが、この神懸かった状態になった時は、必ず思った通りの結果が出る。堺はそこに絶対の自信をもっているのだ。
確率を元にディーラーと対峙して10ゲームほどこなした今、堺はこの感覚を引き当てた。目の前にあるカードがディーラーの6よりも上か下か。確率でいえば、これより低いローカードは2、3、4、5の4枚。出る確率は33.3%。対してハイは8枚あって66.6%。セオリーであればハイを選ぶだろう。堺もこれまでのゲームをそうやってこなしてきた。だが、今、彼は自分のカードの数字が「3」であることがわかっている。
だから自分の残りコインを全てベットした。
堺がローと宣言した時、ギャラリーがざわつく。失笑を浮かべるものもいた。確率的には不利だから、大胆な掛けに出たと思ったのだろう。だいたいの奴はそういう反応をする。かつて、こういう場面でただひとり、彼の選択を理解して全く動じない女がいた。名前は鈴木だったか佐藤だったか、、、とにかくありふれた名前だった。ただ彼女は、いつも表情ひとつ変えず、堺と同じ答えを用意していたような態度でいた。今、彼女がこのギャラリーにいたならば、どんな反応をしただろうか。その態度を知りたいとも思う。
ふと、自分の感覚の自信が揺らいだ。わかっているはずなのに、誰かの同意が欲しい。あなたは間違っていないと、彼女に断言してほしい。
間違いなく、今、第六感が自分に舞い降り、俺は神懸かっている。
堺は心の中でそう言い聞かせて、目の前の手札に手を置いた。めくる瞬間に、件の彼女の顔が脳裏に浮かぶ。思い浮かべた表情から、堺はこのゲームの結果がわかってしまった。
そうだった。
神は時々悪戯をするのだ。
(了)
ハイ&ロー 高野ザンク @zanqtakano
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