私にはお尻を出す良子ちゃんが見える!

タカテン

見てしまった!

 良子ちゃんがお尻を出している。

 

 ふと、そんな光景を目の当たりにしたような気がした。

 

 私は森野子熊もりの・こぐま。県内の女子校に通うごくありきたりな高校1年生。

 親の悪ふざけで付けられたような名前の割にはこれまで別に苛められるわけでもなく、勉強も運動もそこそこ、ほどほどに友達もいて、趣味も将来の夢も平凡だけど普通にあり、鞄の中には何かあった時の為に一万円を密かに隠しておくような女の子。スーパーカブには乗ったことも興味もない。

 

 そして良子ちゃんは勉強もスポーツも学年で一番のスーパー女子高生。

 さらにはぱっちりした目つきや日本人離れした高い鼻など顔面偏差値もすごく高くて、おまけにおっぱいぼいーん、腰回りキュッ、おしりぼーんなメリハリのある身体つきは、同じ女の子の私から見てもすごくエロかった。

 

 その良子ちゃんがスカートを脱いで、さらにはパンツまで脱いじゃって、お尻丸出しであろうことかテストを受けている。

 そんな光景が一瞬だけど視界に入ったような気がして、私は思わずテスト用紙から顔を上げて斜め前に座っている良子ちゃんをマジマジと見つめた。

 が、そこには普通にスカートを穿いている良子ちゃんの姿。

 ……当たり前だよね。テスト中なのに何考えてんだ私……。

 

 だけどさっき見えたような気がした良子ちゃんのお尻、我が妄想ながらぷりぷりでエロかったなぁなんて思うとなかなか集中出来なくて、この時のテストは結構散々なものだった。

 一方、良子ちゃんは今回も学年一位。さすがだなぁ。

 

 それにしても良子ちゃんが突然お尻を出すなんて、自分でも一体何を考えているんだろう。

 もしかして私、普通の女の子だと思っていたけれど実はそっち方面の気があったりするのだろうか。

 こんなこと誰にも相談出来ず悶々としながら、私は知らず知らずに目を良子ちゃんのお尻へ向ける日々を送った。

 けれどあれ以降、良子ちゃんがお尻を出す妄想が繰り返されることはない。やっぱりあれは脳が何かバグったんだと思うようになった頃。

 

 ズリッ!

 

 体育の授業で100メートル走のタイムを計っていたら、良子ちゃんがクラウチングポーズを取ると同時にクォーターパンツを下着ごと脱ぎ出してお尻を高く突き上げた!!

 

「りょ、良子ちゃん!?」


 背後に体育座りで控えていた私はつい声を上げてしまう。

 そんな私の反応に良子ちゃんがぎょっとした表情で一瞬振り向いたものの、スタートの合図で一気に走り出す。

 太ももまでクオーターパンツと下着を降ろしながらも、恐ろしいことに良子ちゃんは高校女子100メートル走の記録にあとコンマ数秒に迫るタイムを叩き出した。勿論、学年どころか校内で一番だった。

 

 一体どういう事だろう?

 テストの時はちらりと見えただけなのに、今度ははっきりと良子ちゃんがお尻を出すのを見てしまった。

 しかもそんな異常事態にも関わらず、誰一人として騒ぎ立てたりしない。

 え? おかしいよね? 花も恥じらう女子高生がお尻丸出しで走ったんだよ? 更衣室でも下着姿にはなっても裸にはならないわけで、誰かがこっそり背後からブラを下ろしておっぱいを揉むだけできゃーきゃー騒ぎ立てるのに、どうして誰も無反応なの?

 

 何かがおかしい。

 何かが起きている。

 いや、本当は何も起きてなくて私がただおかしくなってしまっただけなのだろうか?

 でも一体どうして?

 どうして良子ちゃんがお尻を出すなんて妄想に取り憑かれてしまったのだろう?

 

「子熊さん、ちょっといい?」


 頭が混乱していつ私の100メートル走のタイムを計ったのかも覚えていないうちに体育の授業が終わった。

 みんながぞろぞろと更衣室へと移動する中、立ち尽くす私に良子ちゃんが声をかけてくる。

 

「…………な、なにかな、良子ちゃん?」

「さっきのことなんだけど」

「ひっ!」

「その反応……そうか、あなたには見えているのね」


 そう言うと、良子ちゃんが私の目の前で再びパンツを一気に下ろした。

 

「良子ちゃん、一体何を!」

「とぼけないで! これが私の第六感スタンドにんげんっていいなヒューマン・イズ・グッド! お尻を出せば私は決して負けない。一番になるのよ!」

「第六感……?」

「そう。そしてこれが見えるということはあなたもきっと第六感の使い手。さぁ、子熊さん、あなたの第六感も私に見せて!」

「ええー!? そんなこと言われても私、分かんない。私、ただ良子ちゃんがお尻を出す姿しか見えないもん」

「そうなの? おかしいわね、こういうのって異能者たちが引かれ合って戦うのがお約束なんじゃないの?」


 良子ちゃんがお尻丸出しのまま、何やらブツブツ言って考え始めた。

 

「ううん、せっかく『第六感スタンド』とか『にんげんっていいなヒューマン・イズ・グッド』って設定なのに、これでは面白くないわ」

「設定って、さっきのってまさか良子ちゃんが勝手に考えて……」

「ちょっと黙って子熊さん! 今、設定を再構築……ん、子熊? ああ、そうかぁ、熊の子だからかぁ!」


 不意に良子ちゃんが突拍子もない声を上げた。

 もちろん、お尻丸出し……というかこちらからは女の子の大切なところが丸見えだ、さっきから。

 

「子熊さん、あなたの第六感が分かったわ。あなたの第六感はね、相手の第六感が見えるの。相手がいくら隠していても、子供たちの隠れん坊を傍から見ている熊の子のように、あなたには見えてしまうのよ!」

「え? でもさっき第六感の使い手は相手の能力も見えるみたいなこと言ってなかった?」

「上書きしたわ。問題ない」


 いやぁ、問題ありまくり、設定に穴ありまくりでしょう、それ。

 そもそもお尻を出したら誰にも負けないって設定、いかにも中二病が考える最強チートすぎない?

 

「てことでこれからよろしく、子熊さん!」

「はい?」

「ふたりで次々と差し向けられる刺客を倒すのよ!」

「……誰が差し向けるの?」

「それはまだ分からないわ!」


 自信満々に良子ちゃんが下半身丸出しで言う。


「さぁ、私たちの奇妙な冒険の始まりよ!」




 

「最後に『To Be Continued』って欲しいわね」

「良子ちゃん、そろそろ怒られるし続きも書くつもりないからもうそのあたりにしておいて」

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