第40話 奥へ奥へ
魔の森の探索の計画を立て、早速森へと向かう。最初は俺が見つけた洞窟へと向かい、そこで休憩をした後、本に記されている拠点を探すという流れだ。
「それにしたってこの本を書いている人は本当に1人でこんなところ進んでいったのか?」
「今のところ、本に書いてある通りだから認めるしかないわね・・・信じられないけれども」
魔物達を倒しながら俺達は最初の目的地である洞窟へとたどり着く。ここまで、いやこのちょっと先までは来たことがあるから順調だ。問題はこの先だ。
「感覚がマヒしてるかもしれないけどよぉ、ここの敵は練習相手としては最適だよな」
「完全に狂人の発想じゃない・・・でもちょっと分かってしまうのが悔しい」
「攻撃を食らっても即死の心配のないユウタと一緒にしてはいけないわ」
俺という前衛と魔石があってようやく魔物達と渡り合えているが彼女たちにとって危険極まりない場所であることに変わりはない。
今回は探索が目的なので余計なことをして体力を消耗することは避けたい。安全第一で進んでいくことを今一度決心した。
そして翌日、いよいよ未知の世界へと足を踏み入れる。とは言ったが魔物達の強さが徐々に強くなっていくだけで特段変わった点はない。
しかし、3時間くらい進むと新種の魔物が現れだす。同時に周りの雰囲気も気のせいか重く感じだしてきた。
不思議に思い、思わず本を開くと丁度この辺りに拠点があるようだ。しかし、この先にもう少し進んでいくともう記載はない。つまり、この辺りが本の作者の限界だったということになる。
「なんだか不気味な感じがしてきたわね・・・拠点って言われる場所が安全なところだといいんだけど」
「行ってみないと何ともだな。少なくとも人一人が住めるくらいではあると信じたい」
「なんでもいいから早く休みたいわ。流石に魔物達の強さも洒落にならなくなってきている」
そうして印のついた場所の付近を探して1時間、ようやく人の手が加わった形跡を見つける。そして、そこには矢印のようなものが書かれていた。おそらく指定された方向へ進めということだろう。それにしても記号を読むのがやっとというくらい古びている。もう数年としないうちに朽ち果ててしまうのではないだろうか。
「全くの収穫0ってことにならなくてよかったわ・・・」
全くの同意である。ここまで来て嘘でしたーとなってしまっては怒りでこの本を破り捨ててしまうかもしれない。
矢印に従って進むこと数回。ついに目的の場所へとたどり着く。最後の矢印は下向きになっていたのでおそらく地下にあるのだろう。そしてその場所を調べると下が空洞になっていることに気付く。魔物達に見つかる前に俺達はその中へと入っていった。
中は薄汚れていた。そしてあまり広いとは言えない。元々天然の洞窟を改造したようなものらしかった。
「けほっ、何年放置されてたのかしら。あの看板から想像はできたけどあまり使えそうなものは残ってないようね。それにここにあまり長居するのも嫌だわ。なんだか気持ち悪い」
「そうだな、なんだかカビ臭いって感じがするな。一通り見たらさっさと出よう」
そして拠点を一通り調べる。あまり広くなかったため、15分もあれば大体の確認が終わる。
「さて、後はこの箱だけね。他はまともな形で残ってるものがあまりなかったわ。歴史的な価値のありそうなものは一通り取ったけど実用的なものはさっぱりだったわね」
「まぁこれだけ古いから何も見つからないことまで覚悟してたけど思ったよりはマシって感じかしら」
そして最後に残った箱を開ける。中には剣のようなものと本が一冊入っていた。そしてこの箱の中だけ箱に入れた時から時間が止まっているようだった。
「これは・・・魔法で劣化を遅らせていたようね。おそらくこの箱が開けられるまで効果が続くようにしていたのだと思うわ。これは余程大切な物だったのでしょうね。その剣はユウタが持っておくとしてその本を開けてみましょ」
剣を俺に押し付けてさっさと本を開くようにせがむ王女。まぁこの本にここに来た理由の全てが詰まっていると言っても過言ではないので仕方ない。
「わかったよ、じゃあ開くぞ」
ゆっくりと本を開く。見た目の通りしっかりとしている。これなら破れる心配もないから安心だな。
ここからは本の内容を語っていくとしよう。
『驚いた。ここまで来られるものが私以外にいたとは。私はこの森について色々調べていたがここよりも奥の魔物相手は私には荷が重かった。そしてこのことを後世の者に伝えればと思い森を出てここでの経験を記載することを決めた。そして私はもうここへは戻ってこない。もう一度ここまで来れる自信が無いからだ。この森は私の自信を折るには十分すぎた。それから、この本と一緒に入っていた剣、それは君もしくは君達に託そう。売るもよし、振るうもよしだ』
なんとも気の抜ける内容である。まぁこの剣を貰うことに抵抗がなくなったのはいいことだ。
「これだけじゃないわよね?他にも書いてないの?」
まぁこれだけだったら拍子抜けもいいところだ。俺はさらに本を進めていく。
本の続きには先の本で書かれていなかった森の生態などについてもう少し詳しく書かれている程度だった。期待外れの内容にがっかりしていたが最後の方に思わず目に留まることが書かれてあった。
『魔族が支配している大陸。ダグロ大陸という名前なのだが私はそこで生まれた。幼いころに魔族との争いでこの大陸へと逃げてきた。そして、多くの人間がダグロ大陸へと残された。別れてしまった者はどうしているだろうか。もう一度あの大陸へと渡って再開したいが私一人では叶わない願いだ。これを読んでいる者達は魔族と仲良くしているのだろうか・・・』
ここで途切れてしまっている。王様から聞いたことと本の内容は一致する。
「文章という形で魔族との争いが記載されているものは見たことがないわ。これはかなり貴重な物よ。そして大陸名。これは私も知らなかったわ・・・。当時の人からすると当たり前だったんでしょうけど」
「とりあえずこの本は大事にしておかないとね。それでこれからどうする?もっと奥へ行く?それとも帰る?」
「そうだな・・・いけるところまではいってみよう。少しでも無理と感じたら引き返す。これでいいか?」
「はぁ、まぁここで帰ったら二度と来ることはないだろうからね。ここまで来たら最後まで付き合うわ」
そして2人の同意を得、森の最奥へと進んでいくことを決めた。そして2日後、ついに一番奥と思われる場所までたどり着いたのである。
無双ゲームのモブ雑魚だった俺、ぶっ飛ばされ続け鋼の肉体を手に入れる。 結局主人公には勝てなかったがぶっ飛ばされた先がなぜか異世界だったので攻撃無効の身体で無双しちゃいます。 takaoka @takaoke
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