第39話 望む褒美

時間は指定されていなかったが俺達が入った30分後くらいには外と繋がった。後で聞いてみたら1時間毎に収納魔法で中の状況を見ていたらしい。


「やっと会えたわ。もうちょっと遅かったらどうしようって思っていたところだったわ」


「なんだ?会いたくて仕方なかったのか?」


「違いますー。マリー様は私に会いたかったんですー」


「いやいや、ギュンターさんもう来てるからあんまり待たせちゃ悪いって思ってたの」


「あー、それは確かに。王様やあんたは王城に住んでるからいいけど彼は違うからな。もう始めれるっってならさっさと始めて欲しいって伝えてくれ」


「はいはい、そう言うと思って2人が来たらすぐに始めれるようにしてますよ」


なんとも手際がいい。正直前日に戻ってくるくらいのほうが良かったかも・・・。まぁ今更だ。



そして俺達は玉座の間へと入っていく。最初の時ほどではないがまだ緊張はするな。


「さて、4人全員いるな。これより、魔族による王都侵攻を見事に撃退してくれたそなたらに対する褒美を与える。それぞれ望むものを言うがよい。儂の権限の許す限り、望むものを授ける」


「私は今はいいわ。この国の王女としてやるべきことをやっただけだから」


「そうか・・・、こういう時くらいわがままを言ってもいいのじゃぞ。まぁよい」


「私は、マリー様と一緒に居たいです」


「ほほう、ほう・・・うーん、マリーをとな・・・儂からは何とも言えんマリー、どうなのじゃ」


「それはユウタのとギュンターさんの欲しい物を聞いてからでも遅くはないのでは?」


「そ、そうじゃな。ではギュンター殿!」


「・・・これを」


そう言ってなにやら紙を王様に渡す。王様はそれを読むと側近へと渡す。側近は紙を見ると慌てて部屋を出る。そんなに急ぐようなことなのか・・・?


「うむ、わかった。これはお主というより、お主の雇い主の意向じゃな。承ったと伝えてくれ」


「承知した。本当に感謝する。俺の用は済んだから帰る」


そう言って俺の願いを聞く前に帰ってしまった。もう少しいてもいいのに・・・。それに願いってのも何だったのか気になるなぁ。


「最後にユウタの望むものは何だ?」


この時がついに来てしまった。昨日あれだけ悩んだが正直まだ欲しいものが決まっていないのだ。もちろんお金も欲しいし、普通では手に入らないような武器だって欲しい。だが・・・。


「もっとこの世界を周ってみたい。いろんなものを見たい。そのために一緒に旅ができる仲間だな」


「ふむぅ・・・マリーから聞いたがお主はこの世界の物でないらしいの。確かに、現状で気を許せる仲間と言える存在はほとんどいないじゃろう。今までの状況が状況じゃったからな。今褒美でどんな物を貰ったとしても寂しい日々を過ごすことになるかもしれん。そういう意味では仲間と言える存在が欲しいってのはまぁわからなくもない・・・要するに2人と一緒に居たいってことか?欲張りさんめ」


「いや、話が飛躍しすぎです・・・」


「まぁよい。少しからかいすぎてしまったかの。さて、お主の望みじゃが、2人に聞いてみないと何ともじゃのう・・・」


「私は別に構わないわよ。サラと相談して決めなさい」


あっさりしてるなぁ。まぁそれだけのことを俺がしたといえばそうなんだろうけど。


「そうねぇ、まぁあんたの我儘に付き合ってあげてもいいわよ。今回の一番の功労者は間違いなくユウタだもの。ちょっとくらい我儘言っても罰は当たらないわ」


俺は嬉しさのあまり泣きそうになってしまう。だが、ここでそんな真似はできないのでぐっとこらえる。


「みんな・・・ありがとう。まだみんなと行ってみたい場所が幾つかあるんだ。それが終わった時、またこれからについては考えようと思う」


「その件なんじゃが・・・こちらからも一つお願いがあるのじゃ」


王様はそう言って1枚の紙を渡してくる。魔族と通じてた者から吐き出させた情報のようだ。


「そこに大事なことは書いてあるが今回の件の元となっている魔族を叩かないことにはいずれ同じような侵攻があるじゃろう。だからその大陸で情報を集めて欲しいのじゃ。ここだけの話、あの大陸から人類は撤退したといったが実は厳密には違う。大陸から出ることができずに残った者も一定数いるのじゃ。おそらく今は奴隷として暮らしているのじゃろうが・・・だから人間がいること自体は怪しまれない。魔族と戦う可能性はあるがユウタ殿さえよければ受けてはもらえぬか?もちろん、褒美は出す」


確かに魔族のいる大陸には行きたかったがこれも結構滅茶苦茶な要求ではある。


「まぁ、その大陸に行くことがあればついでにするくらいならいいぜ」


「そうか、感謝する。だが、安全を第一にな。そして行くときになれば儂のところに来てほしい。そこへ行くための準備もあるからな」


そして褒美?を貰った俺は3人での旅を続けれるようになった。


そして俺達は王様へ別れを告げて城を出る。結局褒美らしい褒美を貰ったのってギュンターさんだけだからもっと要求してもよかったかもな・・・。


城を出る前に一人の騎士が俺達を引き留める。


「国王陛下からこれを渡すようにとのことです」


そう言うと大金の入った袋を渡してきた。まぁ褒美らしいものを与えられなかったからせめてもの報酬と言ったところだろう。


「王様にはありがとうと伝えてくれ」


「承知しました」



城を後にした俺は今後について話を切り出す。


「早速なんだけど行きたい場所があって・・・」


「昨日読んでた場所に行きたいんでしょ?まぁ構わないけど・・・魔族のいる大陸にも将来的に行くでしょうしこれいつまでも手放せないわね」


魔石を取りだし、ため息をつく。まぁそうなるな。当初の予定ではもう処分するべきなんだろうけどこれからのことを考えるとやっぱりまだ手放せない。


「なんとなくどこに行きたいのか分かったわ・・・まぁいいけれど危険を感じたらすぐに撤退するわよ」


そして王女に昨日の本で読んだ拠点の場所について説明する。呆れた感じではあったが俺についていくことを了承した矢先、断るのもどうかと思ったようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る