クリスマスとお正月 - Happy New Year -

 聖夜――ではなく『性夜』を迎えたクリスマス。


 幸い、家には親父も母さんもいなかった。

 二人は仲の良い夫婦なので、今でも普通にデートしてラブホへ行くらしい(親父談)。てか、そんなことを息子の俺に話すなよ……!?


 おかげで歩花とは少し気まずくなったんだがな。


 気分転換に家を出て、今日も軽キャンピングカー『インディ272』で近場の河川敷を目指す。

 今年の夏は大活躍だった思い出深い車だ。



「お兄ちゃん、今日はクリスマスだけど……家で過ごさなくて良かったの?」

「なんだろうな。すっかり車中泊しないとダメな体になってしまってな。もちろん、歩花と一緒である前提だが」


「嬉しいっ! うん、解かった。クリスマスもお正月も車で過ごそうっ」



 すっかり乗り気の歩花。

 今日は地雷系の服装に身を包んでいる。ありがちなピンクの服と黒いスカート。まさに地雷系。

 最近、ネイルも憶えたのか爪が黒く塗られている。

 そして、細い手足と腰回り。

 相変わらずアイドル級の容姿とボディをしていらっしゃる。普段から、あんまり食べないから太らないようだ。



 河川敷に到着。

 インディ272を停め、さっそくセッティング。



 家を出る前に予め買い出しもしておいたし、夜のケーキもばっちり。無理に動く必要はない。



 この河川敷にはトイレも備わっているし、不便はない。一応、携帯トイレもあるが――大きい方はどうしてもできないからな。

 大きい方用の携帯トイレの購入も検討したが、今はトイレのある場所で車中泊をすればよいという判断から候補から外した。



「よし、歩花。夜まで映画を見よう!」

「うんうん。サブスクいっぱい加入したもんね!」



 最近は動画配信サイトに入りまくっているおかげで、映像作品が見放題だ。月額数千円を取られているが、映画やアニメを楽しめると思えば安いものだ。


 おかげで三つほど加入しているが後悔はない。

 それぞれのサイトにしかない映画とかアニメがあるからなぁ。


 歩花の大好きなアニメ映画『君のニャは。』を鑑賞。


 主人公とヒロイン、たまに雌猫と中身が入れ替わるというトンデモアニメ。まさかの猫にも人格があるという設定だ。


 ドロドロの三角関係が続き、最後にはヒロイン入れ替わった雌猫が主人公を刺してバッドエンドという……悲劇。



「……なんだこりゃ」

「こ、怖かったね、お兄ちゃん」



 怖いというか、歩花のヤンデレモードを思い出し、俺は軽くトラウマが蘇ったんだがな……?



 ◆



 夜を迎え、ポータブル冷蔵庫からクリスマスケーキを取り出し――切り分けた。

 車の中でクリスマスを迎える日が来ようとは。

 だが、めちゃくちゃ楽しい。

 歩花と一緒の時間を過ごせて幸せすぎた。


 ここまで大きな事故もなく、病気もなく過ごせてきた。



「メリークリスマス、歩花」

「うん。メリークリスマス、お兄ちゃん」



 コーラの入ったコップで乾杯。

 甘くて美味しいイチゴケーキも味わっていく。



「ん~~~、美味い。美味すぎる」

「お兄ちゃん。あぁん♪」


「マジか」

「はい、どうぞ」


「んむっ」


 歩花から“あ~ん”をもらい、口の中が幸せでいっぱいになった。あぁ、可愛い義妹がいてよかったぜ。クリぼっちならなくて良かったぁ!



 そして、性夜を迎えて俺は歩花とひたすら最高の時間を過ごした。



 ・

 ・

 ・



 その後、無事にクリスマスを終えて気づけば正月を迎えていた。

 長い冬休みを有効活用するため、それまでは車中泊やマンネリ防止でホテルで宿泊してみたりした。


 たまにはホテルも悪くないな。

 車中泊と違い、準備がほとんどいらなかった。

 リュックに必要なものだけ詰めておけばいいからな。



 だが、31日はわざわざ山の方まで向かい、車中泊をした。初日の出を見る為だ。



「寒いねえ、お兄ちゃん」



 断熱材を入れているとはいえ、暖房がないと車の中は寒い。

 防寒対策として今回は、ガスストーブを導入してみた。



「悪い。これを使ってみよう」

「お~。この前、通販で買ってたストーブだね!」


「そそ。ガス缶をこんな風に後ろにセットする。で、横についているダイヤルで点火」



 ボゥッと点火すると、すぐに暖かくなった。

 こりゃスゲぇ。


 注意点としては、一時間に一度は換気すること。一分程度は必要らしい。でないと一酸化炭素中毒を起こして、下手すると死ぬからな。


 だから車内で使う場合は、一酸化炭素警報機(チェッカー)を設置した方が安心感がある。当然、俺はインディに取り付けた。二個も。



「わぁ……焚火みたい!」

「凄いよな。ガス缶ひとつで約三時間燃焼してくれる。弱モードなら四時間程度だな」

「結構持つんだね」


「ああ。ガス缶は三つセットで800円ほどだった。コスパはそこそこだが、三つあれば九時間は維持できるから十分だろう」


 無くなったら買い足せばいいし、ガス缶ならガスコンロとかにも使いまわせて便利だ。

 当初はガスは危険なものだと思っていた俺だが、最近は認識を改めた。


 いくら大容量電源があってもエネルギーに限界はある。


 ガスは爆発や、利用する駐車場などによっては火気厳禁だったりでそこそこリスクがあるものの、ガスはガスで利点があると理解したこの頃。


 今回のようにガスストーブなら“電源なし”で利用できるので、災害時にも強い。なにより、ガスコンロにも併用できる点。


 やっぱり電気+ガス両方の設備を用意しておいた方が何かと便利だ。



「歩花、ぬくぬくしながら日の出を見よう」

「うん!」



 時刻は1月1日元旦、朝5時。

 いよいよ夜明けだ。

 6時あたりで初日の出となるので、もう直ぐだ。



 しばらく待つと日が昇ってきた。

 今日が天気がよくて良かったぜ。



「見えてきたぞ」

「よかったぁ、お兄ちゃんとこの景色を見れて」



「歩花、今年もよろしく」

「うん。新年あけましておめでとう」



 雰囲気に押され、俺はいつの間にか歩花とキスを交わしていた。



 最高の新年だ……!




◆2025年新年あけましておめでとうございます!



『ヤンデレ義妹と旅するえっちな車中泊生活』久しぶりにエピソードを追加しました!


 また気が向いたら更新いたします。

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ヤンデレ義妹と旅するえっちな車中泊生活 桜井正宗 @hana6hana

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