きっとこうなる運命だった
平 遊
きっとこうなる運命だった
今日、彼女に振られた。
昨日まで、そんな予兆なんて一ミリも無かったのに。
二人で楽しく笑い合っていたというのに。
今朝のテレビの占いだって一位で、【幸せなできごとがおこりそう!】って言ってたのに。
彼女、あ、元カノ曰く
『サインは出してたんだけどな』
とのこと。
・・・・そんなん、わかるかよ・・・・
一人寂しい帰り道で、俺は空を見上げた。
実は、突然振られるのは今回が初めてじゃない。
何回か、ある。
その度に俺は、幼馴染みのヨウコに愚痴を聞いてもらってた。
また、ヨウコに言われそうだな。
『カナタ、どこまで鈍感なの?!』
って。
それでも聞いてもらおうと思ってヨウコに電話をかける一歩手前で、ふと思い出す。
そういや今年の正月、ヨウコに連れられて、お参りすると『第六感が研ぎ澄まされる』と評判の神社に行ったことを。
なんだよ、全然研ぎ澄まされてねーじゃん。ご利益無しかよ!
なんだか腹が立った俺は、文句のひとつも言ってやろうと、予定を変更してその神社へと足を向けた。
『第六感のお陰で命拾いしました。ありがとうございました!』
『虫の知らせのお陰で、おじいちゃんの最期に会うことができました』
神社には、山程絵馬がかかっていた。
どれもこれも、ご利益にあずかった奴らばかりの絵馬だ。
ちぇっ・・・・俺だけかよ、ご利益無いのは。
感謝ばかりが書かれた絵馬を読んでいるうちに、俺の怒りもいつの間にか収まり、逆に情けなくなってきて、帰ろうと体の向きを変えると。
「なんだよ、なんでお前がいるんだよ?!」
そこにヨウコが立っていた。
「さぁ?なんでかな?」
「なんでかなって・・・・もしかして、第六感?!俺がここに来る気がしてた、とかっ?!」
「はぁ?んな訳、無いでしょ」
呆れたような目で俺を見ながら、ヨウコは言った。
「なっさけない背中のあんたを見かけたから、ついてきただけ」
「・・・・そっか」
「振られたんでしょ、また」
「・・・・ああ」
はぁ、と溜め息をついて、ヨウコは笑う。
「神様でも、カナタの鈍感は治せないか」
「なんだ、それ」
「まー、もともとカナタに第六感なんて備わってないんだから、研ぎ澄ますも何もないか」
「・・・・ちょいとヨウコさん?酷すぎやしないかい?」
いつものごとく、ヨウコは俺に容赦ない言葉を浴びせてくる。
それでも、なんでだろうな。
なんだか、気持ちがラクになってくるんだ。
ヨウコと話すと。
・・・・俺もしかして・・・・
「Mなのかっ?!」
「なによ、いきなり」
「あっ、いやいや・・・・」
やばい、心の声が漏れてしまった。
でも。
「まぁ、カナタはMだと思うけど」
ちゃんとついてきてくれるヨウコって、もしかして・・・・
「ねー、カナタ」
「・・・・なんだ?」
「いま、ちょっとあたしに惚れたでしょ?」
「・・・・はぁっ?!」
「あははっ、意外と合うと思うよ、あたしたち。カナタの鈍感なとこ、嫌いじゃないし」
「えっ」
「鈍感すぎて、逆に面白い」
屈託なく笑うヨウコに、図らずも心臓が飛び跳ねる。
キュンっ!
って音が、外まで漏れ出てしまいそうな程。
もしかして。
朝の占いで言ってた【幸せなできごとがおこりそう!】って、このことかっ?!
「ねぇ、付き合ってみちゃったり、する?」
「・・・・それも、いいかも、な?」
「フフフ」
クスクスと笑いながら、ヨウコが言った。
「なんかあたし今日ね、こうなりそうな気がしてたんだ」
お前それって・・・・
「第六感、かな?」
俺は思わず振り返って、御神体が祀られている社を見た。
俺にはご利益一ミリも無かったのに・・・・ずるいぞ、神様・・・・
でも、ま、いっか。
結果オーライってことで。
【終】
きっとこうなる運命だった 平 遊 @taira_yuu
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