強盗にあう俺

石花うめ

強盗にあう俺

 売れない俳優の俺は、今後売れていくためにどうすればいいか、占いばあさんに占ってもらった。

 占いばあさんは言った。

「あんた、強盗にあうよ。強盗のことをよく知っておいた方がいい」

 ただでさえ売れてなくて貧しいのに、強盗にあってお金を盗まれたりしたら人生終了だ。

 それだけは嫌だと思い、強盗について必死に勉強した。強盗の手口や犯罪心理などを学ぶだけでは不安は拭えず、目出し帽を被って強盗の見た目を真似て、強盗の気持ちになってみたりもした。

 ある日、ドラマの強盗役のオーディションがあった。受けてみたら、なんと一発で合格した。俺が出演したドラマは大ヒット。その余波は俺にも及んで「強盗役の演技がリアルすぎる」とSNSで俺のことが話題になった。

 それから俺は、強盗役のプロとして一気に売れっ子俳優になり、ついには主役の座までゲットすることができた。

 

 そして今日、俺に初めて専属マネージャーが付くと、所属事務所から連絡があった。

 楽屋で待っていると、誰かが楽屋のドアをノックした。

「失礼するよ。今日からあんたのマネージャーになるから、よろしくね」

「え!」

 楽屋に入ってきた人を見た俺は、驚いて大声を出してしまった。

 なんと俺の初めての専属マネージャーは、俺が強盗にあうことを防いでくれた、あの占いばあさんだったのだ。

「あのときのばあさんじゃないですか! そういえば、あなたの占いのおかげで俺は一回も強盗にあいませんでしたよ。占いは外れましたね」

 嬉しくなって、つい親し気に冗談を言ってしまった。

 すると、ばあさんは大笑いした。

「何を言ってるんだい。私の占いは大当たりじゃないか。『強盗、似合うよ』って私は言ったのさ。売れてないときのあんたは今にも強盗を起こしそうな見た目をしてたから、からかうつもりで言ってみただけだったんだ」

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