双子迷宮IV
「案外はやかったね」
手を引かれて屋根の上にのぼった私に、知道はそんな言葉をかけた。
しかし実際、私が知道の捜索にかけた時間は20分ほど。知道の早さと比べればまだまだだけど、自分でもよくここまで早く見つけられたと思う。
「──わかったでしょ? 僕が簡単に涙を見つけられた理由」
「うん」
答えはただ双子だから。それだけだった。
双子だから、考えが手に取るようにわかってしまうのだ。
だから知道は私の抱く好意も知っていて……私も知道が抱く好意を知っている。ずっと両想いだったことが嬉しくて、だけど恥ずかしくて、だけど嬉しさが勝って自然と頬が緩んでしまう。
背中に感じる体温の幸福感と共にそれを味わっていると、ギュッと知道が私を背後から強く抱いた。
「知ってる? 男女の双子って前世で心中した恋人の生まれ変わりって」
「……知ってる」
私は過去に調べたソレの記憶を漁る。確か、心中した罪で愛し合えない兄妹に生まれ変わってしまったという話だったはず。
そんな話を知道が信じると言うことに驚きを禁じ得ないけれど、やはり私たちは双子なのだなと強く実感した。
「だからきっと惹かれるんだろうね……僕たち」
「……」
哀愁の籠った呟きに、私は何も言葉を返せない。
だって私は、最悪子供を作らなくてもいいと思っているし、近年はそういう医療も発達している。どうしても欲しいのならそういうのを使うのだって手だと考えていた。だから、付き合っても問題ない、と。
「もしも、さ。涙が気づかずに告白してきたら、断ろうって思ってたんだよ」
「それは……」
「僕の為。ずっと一方的に知ってるの、結構罪悪感あったんだよ」
「……でも、知道は教えてくれた」
「……」
「バカな私でもわかるように、教えてくれた」
「それもきっと、罪悪感からかもね」
そう聞いて、私は無性に苛立ちを感じた。
目頭が熱くなるのを感じながら、私は衝動のままに振り向き、驚く知道の顔に私の顔を近づけて、ついばむようなキスをした。
「──涙?」
「……勝手に、決めないで」
「……」
「勝手にっ、決めつけないでよ……っ」
私は別に辛くない。好きな人と結ばれるのなら、こんな双子の繋がりなんてどうでもいい。寧ろなくたっていいくらいだ。
「私は、もっと見て欲しい。本当の私を、触ってほしいっ」
「……でも」
「でもじゃないっ」
「──」
「私は、知らなくてもよかった。一方的なものでもよかった……っ」
「……ゴメン」
心の底からの知道の謝罪に、溜飲が下ってきた。
知道はそっとハンカチで私の
「結局、終わっちゃった」
「……もう一時間、ここいよっか」
涙の泣きはらした顔を誰にも見られたくない……そんな風に知道が思っていると、何故か確信が持てて、私は知道の方を見る。
景色を見ていた知道も視線に気づき、少し頬を赤くしながら私を目を合わす。
「「……ふふっ」」
どちらからともなく笑いが起きた。
それから次の授業が終わるまで、私は知道の腕の中で目下に広がる風景を眺めていた。
フタゴパズル 束白心吏 @ShiYu050766
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