双子迷宮III

 まず向かったのは、屋上に続く階段。

 この学校には二つあるから両方の階段をのぼってみたけど、どちらにも知道の姿はなかった。

 あとはどこだろう……私は廊下を歩きながら知道が行きそうなところを考える。

 保健室……ない。だって知道はそもそも保健室の辺りに近寄らないのだから。

 図書館……ない。司書さんはサボりに厳しいし、まずいられないだろう。

 美術室……ない。知道は絵が苦手だし、前に「美術室とは縁がなさそうだ」と言っていたから。


 どこかな……考えても考えても、どこに知道がいるのかわからない。行き先を決めようにも同じことを何度も考えてしまい定まらず、もう降参して教室に戻ろうかと思った時、天啓のように発想が降りてきた。


 即ち、『私ならどうするか』。


 これまでも私は色々なところにサボって隠れていた。先日の屋上前もその内の一回。

 私は一度として同じ場所に隠れないから、きっと知道もそうだ。そして知道は私の隠れた場所には隠れないだろう。それだけでも候補は結構絞れる。

 体育館、部室、外……どれもまだ私は隠れたことがないが、確信を以て違うと思える。


――信頼は上っ面で従順にしてればまたすぐ貰えるよ


「あ」


 カチリとパズルのピースがハマるような感覚がして、私は階段を駆け上る。

 目指すは最初に行った屋上。その出入口。

 この高校では屋上への侵入は校則で禁止されている。入ったことが見つかれば最低一週間の停学処置がとられる。

 それだけすれば知道は確実に。けれどきっと、それが望みなのかもしれない。

 本来なら鍵をかけてある筈の外へと続く扉は、少しドアノブを捻っただけで空いた。



「──正解♪ お見事だよ。るい


 屋上に出てすぐに頭上から声が聞こえた。

 見上げると、知道がいつものような優しい笑顔で暖気に屋根に座っていた。

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