双子迷宮II

 ある日のこと。

 昼休みが終わる5分前の予鈴が鳴り、生徒が教室に戻ってくる頃。

 あれからずっと、知道がどうして私の考えがわかるのか考えているけど、全くわからない。知道の生活を見ていたらわかるかと思ったけどからっきしだった。

 でもそれ故に私は知道がいないことに気づいた。いつもなら昼休み中どこも行かずに、両耳にイヤホンをはめて音楽を聴いてる知道がいないのだ。まだ授業は始まっていないためいなくても不自然ではないが、どうも私は彼が来ないだろうと確信にも似た予想を抱いた。



「──お? 山口は休みか?」


 チャイムがなり入って来た5限の教師が、知道の席を見てそう言う。


「さっきの時間まではいました」

「けど、昼休み見なかったよな」

「どこ行ったんだろ」


 クラスメイトがざわつき始める。私もその一人だ。

 いつも真面目に全ての授業に出ている分、余計に心配になる。


「学校にはいたんだよな……山口。何か聞いてるか」


 今度は私を指して教師が問う。山口姓は私か知道しかいないのでいいが、私だって知道がどこにいったかはわからない。その意をこめて首を横に振ると、教師は「そうか……」と呟いて何かを少し考えたと思ったら、また私に視線を向けた。


「よし、山口、ちょっと探しに行ってきてくれ」

「え?」


 想定外な発言に、私は素っ頓狂な声を出してしまう。

 だって、さっきこの教師はなんと言った? 私に、知道を探してこい?


「む、無理……です。私、どこ行ったか知らない……」

「そうか? でもほら、双子のテレパシー的ななんかで、わからないのか?」

「……」


 そんなの、ない。少なくとも私には備わっていない機能だ。

 しかしそれを言っても、どうにか探しに行かせたいのか、教師は「頼む!」と頭を下げそうな勢いで言う。


「……わかりました」


 嫌々ながらも、私は碌な手がかりもなく、知道を探して学校を彷徨い始めた。

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