フタゴパズル
束白心吏
双子迷宮I
「──やっぱりここにいた」
聞きなれた声が屋上へ向かう階段の踊り場辺りから聞こえた。
見れば、いつものように優しく笑う彼が、私のことを見上げている。
やはりバレてしまった……色々な感情が混ざった感想を抱いている間に。彼は私の横の階段に並んで座った。
「……
「授業、飽きるもんねぇ……今日くらいサボっても罰は当たらないさ」
全てを言い切る前に、まるで予想してたかのように、知道は軽快な口調でそんなことを言う。
私は言葉を失った。だって、知道は優等生で、教師からも信頼されているのに、あっけらかんと裏切ろうとしているのだ。
「信頼は上っ面で従順にしていればまたすぐ貰えるよ」
まるで私の思考を読んだかのように知道は言う。
「どうして、いつも私の居場所がわかるの?」
「どうしてだと思う?」
以前からの素朴な疑問を、知道は愚問と言うかのように、間を置かずにそう返してきた。
その表情は……笑顔。からかっているような、悪戯を成功させた子供のようにも思える、無邪気さの残る笑顔に毒気を抜かれ、私は思わず寄せていた眉間の皺をほぐす。
「わかったら、なんでも言うこと聞いてあげるよ」
知道は人差し指を立て、自分の口に当ててそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます