一瞬に彩りを
妖の祭りを楽しんでから、三年ほどの月日が過ぎた。しばらくして、梢は姿を現さなくなってしまったが。
「……こっちを通るのは、やめておこうかな」
以前、崖から落ちて本気で死ぬかと思ったことがある。ちょうどその頃から梢がいなくなった。
何も言わずにどこかへ言ってしまうのは、梢らしくない。人と妖の隔たりを誰よりもなくそうとしていた梢が俺に何も言わずに消えてしまうのは、なにより寂しかった。
「……ん?」
そういえば、なぜか空が暗い。上を見上げてみると、なにやらとんでもなく大きなものが空を覆っていた。
「木……?」
妖怪であることは間違いなかった。ここまで大きな妖怪が人と関わりがある場所に出てきてしまうと、力が弱い人間でも見えてしまう。
けれど、この妖怪はなにかについて行っているように見えた。
「人の子! 人の子! 木霊のことが見えているのにどうして無視をするのですか!」
「うるっせぇ! 普通の人の子はお前らみたいなのが見えないんだよ!」
どうやら、人間との関わりを求めているらしい。会話はよく聞こえないが、人の方は妖が嫌いなようだ。
「前はおまんじゅうをくれたのに……ひどいです、人の子」
「うっとしいなお前……ああもう、好きにしろよ。他の人がいるときは話しかけてくんなよ」
「……いいのですか!?」
「いいよ。好きにしろよ」
会話は相変わらず聞こえない。けれど、妖はその巨体を引きずって男について行ってしまった。
妖の一生の中で、人というのは儚い。俺にとっては長い長い梢との日々も、きっと梢にとっては一瞬だったのだろう。
仲が深まる前に離れたのなら、それでいい。俺にも人の友がいて、いずれ恋人と出会うのだろう。
だから、せめて。この
永遠の一瞬に花を 神凪柑奈 @Hohoemi
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