読んでいて、悲痛な心の叫びであるはずが……どこか幻想的であり、ともするとなにか美しい詩歌が吟じられているのを聞いているような気持ちになる。そんな短編です。たったの800文字に込められた表現を、ぜひ一読してみてほしい、そんな逸品です。この時点では三日月であるなら、満月になる頃にはこの子はどうなってしまっているのか、など……想像をかき立てられる、そんな一面もあるのでは、なんてことも思います。
素敵なタイトル、しかし、中味は、ホラー!!めっちゃ、ホラーですよ。こんなに文字数少ないのに。濃密な怖さです。「私」は見てしまう。目をそらせない。おぞましい恐怖の「出来事」の、前と、最中と、後までも。研がれた表現力と、物語全体に漂う綺麗さで、読者も一気に読まされてしまいます。短い文字数と侮るなかれ。心してこの物語を味わうとよろしいでしょう。