第2話 初期練兵訓練(1)
皇国歴2855年
大和国K県海軍幹部練兵所 練兵兵舎
現在時刻0555
後5分で起床時刻になる。
既に、周りは目を覚ましているが起床時刻になるまでは、ベッドから出てはいけないな決まりになっている。
ただし、副隊長は0500に起床し、自部隊がその日に行う訓練の内容確認及び行動計画を
0600までに終わらせ、総員起床後の総員示達にて報告する。
その報告をもって1日が始まる。
現在時刻0600
-総員起こし! 服装は戦闘服装!
副隊長が隅々まで届くような大声で総員を起こした。
その声に反応し、総員がベッドから飛び起き
急いでロッカーに入っている戦闘服装に着替えている。
起床から、総員点呼と総員示達を10分以内に終わらせなければいけない。もし、10分以内に終わらない場合は訓練内容の追加があるため皆必死で着替え、集合位置に走って向う。
-5分経過! 急げ!
(後5分しかない…)
残りの隊員が走って集合場所に到着、総員が集合位置に整列した。
基本、整列の際の隊列は2列横隊である。
整列の順番は既に決まっている。しかし、僕は《警備主任》のため、総員の点呼報告を副隊長へ報告するので最左翼後列に整列している。
そして整列し点呼を行う場合、副隊長2人は含まれない。
総員が集まった。
-整頓する短間隔右へ並へ! 直れ!
-総員点呼!
二人の副隊長が矢継ぎ早に、指示をだし皆はその指示に素早く応え、整頓し点呼を開始した。
最右翼から(1!2!3!…)と順番に最左翼へと番号をかけていく。
(…7!8!9!)総員が点呼を終了し総員の集合を確認できた。
「副隊長!報告します。第一四部隊総員20名集合完了異常なし!」
僕の報告が終わるとすぐさま副隊長が、本日の訓練内容及び行動計画を示達している。しかし、副隊長は浮かない顔をしていたため、左壁に掛けてある時計を横目で確認した。
(0615かぁ…、訓練追加だ…)
副隊長の報告が終了し、そのまま総員で練兵所食堂へ向かった。
現在時刻0645
食堂にて朝食を取った。
現在は、兵舎内の清掃と0715からはじまる訓練の準備を行っている。
今日の訓練は《基地警備》と《海上戦闘の基礎・座学》の予定だが、課業止め後に確実に追加訓練があるのは、朝の時点で予想はできているが内容はまだ、副隊長から示達されていない。
(訓練初日から憂鬱だ…)
内心でそう思いつつも、顔に出ないように訓練の準備を進めていた。
「みっちゃん、なんか浮かない顔をしているけど大丈夫?」
猛が僕の真横から話しかけてきた。
多分、猛は自分の準備が終わったから手伝いにきたんだろう。
「そうか?いつも通りだと思うけど」
「みっちゃんが大丈夫ならいいんだけど、何か手伝えることある?」
「準備はほとんど終わったから大丈夫だよ、ありがと」
僕はそう言いいながら、猛に笑みをみせてから床に置いてあった訓練道具を持って、共同居室を出た。
僕が居室(きょしつ)を出た瞬間。
「みっちゃん、ちょっと待って俺も一緒にいいくよ」
と猛が少し慌てるようにしながら自分の居室に行き、訓練道具を持って小走りで戻ってきた。
「お待たせ、もう基地警備訓練の集合場所に行くの?」
「そうだね、少し早いけど行こうかなと思ってる」
「分かった。それじゃあ行こうか」
猛はそう言って僕の横を歩き始めた。
僕は時間を確認するため、左胸のポケットに入れた懐中時計をみた。
(0700か、集合場所には0705には着くな)
懐中時計を元のポケットに戻した。
現在時刻0710
僕と猛は移動中そして、集合場所に着いてからも話をしていた。
既に、ほとんどの隊員が訓練場に着いており、副隊長が教官を連れて来るまで待機している。
「なぁ、みっちゃん、基地警備の訓練って何やるのかな?」
「たしか、予定をみる限りだと初期は射撃訓練で、中期に防衛戦の基本と行動訓練で、後期及び修業時の試験で模擬弾による防衛戦闘と選抜による陸軍との模擬戦が予定されているはずだよ」
「まじで!陸軍と模擬戦ができるの!」
「あくまでも、予定だから変更もあるはずだよ」
「そっかぁ…あまり期待しない方がいいか…」
ー警備主任!副隊長と教官が来ました!
ある隊員が僕を呼び、周りの隊員はその声を聞き整列し始めた。
「もう休憩は終わりか」
「だな、みっちゃん、いや《警備主任》お仕事ですよ笑」
猛はそう言うと、走って整列位置へ向かった。
僕も、ゆっくりと整列位置へ行き、列を整頓させ副隊長と教官を迎えた。
ー警備主任!後は引き継ぐ!
僕は、副隊長に「了解」と敬礼し警備教官の元へ向かった。
警備教官の正面に向き合い敬礼し、訓練のための報告を行った。
「報告します。総員20名欠員無し、訓練準備完了、訓練指導よろしくお願いいたします!」
再び、教官に敬礼し隊列に駆け足で戻り整列した。
僕が隊列に戻ったのを確認してから、教官が訓練の内容を話しはじめた。
ーこれより警備訓練を行う、初期練兵は射 撃訓練を実施する。射撃に仕様する銃器は、《12mm対空機銃》、《四式7.7mm自動小 銃》、《三八式6.5mm半自動小銃》、 《五○式6mm短機関拳銃》、《一四式8mm自動拳銃》、の歩兵用銃器と艦艇砲の《127mm連装》の射撃訓練を行う。
これより早速、歩兵用銃器の訓練を行うため 射撃場へ移動する!
僕たちは隊列を維持し、教官を先頭に射撃場へ移動した。
射撃場は3つある。しかし、一般で使用できる施設とは異なり、海軍は艦艇を改造したものを射撃場として利用している。
艦艇の中を改造したのみで、艦艇の外部兵装はそのまま利用ができる。
そして、今回使用する射撃場は《旧型駆逐艦 村雨》である。
ー全体止まれ!射撃場に到着した。各員、場内に入ったら、本日使用する装備を武器庫にて射練場係員から受け取り、点検を行い射撃地点にて待機せよ。かかれ!
僕たちは、教官への答礼を行いそれぞれ場内に入っていった。
「みっちゃん、一緒に組もうぜ!」
猛が後ろから声をかけてきた。
射撃では2人以上の組を作って行うのが原則のため、猛は幼馴染みの僕を誘ったのだ。
「いいよ笑」
僕はそう言って、猛と一緒に武器を取りに行き射撃地点へ移動した。
皆が準備できるまで多少時間があったので、猛と話しながら、装備の再点検を行った。
最後の一人が入いり、ドアが閉まった。
教官が、武器の使い方と射撃の仕方を展示しその後、教官による実弾射撃の展示を行った。
-というのが、一通りの動作と射撃の仕方だ。今日は全ての武器を使用し感覚を掴んだ後に、最初の射撃記録を実施する。
では、射撃訓練を始める。
総員かかれ!
僕たちは、教官の敬礼に答礼し、自分達が事前に確保した射撃位置へ移動した。
「みっちゃん!早く、もう一部は撃ち始めてるよ」
「すぐ向かうよ!笑」
僕は、猛に急かされ射撃位置へ移動した。
もう周りは撃ち始めていた。
-ダダダダ、パァン、ダダダンダダダン
射撃訓練が始まった。
これから、一年間の幹部練兵が銃声とともに始まった。
もうひとつの悲劇 @TOSHIAKI0906
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