もうひとつの悲劇
@TOSHIAKI0906
第1話 入隊
皇国歴2855年
大和国K県海軍幹部練兵所
現在、海軍幹部候補隊員入隊式が行われている。
-続いて海軍総司令官からの挨拶及び訓示
総員起立!
練兵隊長の起立がかかるとすぐに、皆が一斉に立ち上がった。
そして総司令官が壇上にたった。
「諸君、この度はよくぞ幹部として入隊してくれた!これから諸君らは、大和海軍軍人として戦いそして散るのだ!そのために、諸君らは海軍軍人としての基礎をここで叩き込みそして、前線にて貢献できる軍人になってもらい…」
僕はいま、一人の海軍軍人としての門を通過するところだ。
今、数百人の前で歓迎の挨拶をしているのは海軍総司令≪長尾忠(ながお ただし)元帥≫だ。
元帥は、ノンキャリア俗にいう叩き上げで総司令の地位に着いたとの噂だ。
しかし…
(どう見ても、軍人より小太りの商人という言葉が似合うお方だ…)
一瞬、そのように思ってしまってから総司令の話がとても、薄いものに感じてしまった。
それにしても、まだ総司令の挨拶が終わらない…
横目で壁掛けの時計に目をやった。
(総司令官が、話し初めて10分たってる…)
なぜ、偉い人達はこんなに長く話すのか、理解ができない。
学校の校長や理事長、会社の社長も基本的に話が長い。
既に、総司令が話しだしてから20分ぐらい経っている…
(早く座りたい…)
周りを横目で見渡すと、既に退屈で立ちながら寝ているものもいる、ある意味、歓迎の挨拶から《耐える》訓練が始まっていると考えた方が幾分か楽に思える。
数十分後…
「で、あるから諸君らには期待している!
ここまで長い間話したが、私が伝えたい事は一つ《勝利》それこそが軍人として最高の栄誉だ!、それを掴むため訓練に励むのだ!以上!」
やっと総司令の話が終わった。
-総員着席!
練兵隊長の声で一斉に皆が座った。
(やっと座れた…)
総司令の挨拶が終わると一気に入隊式が終わっていった。
そして、入隊式最後の儀式がはじまる。
それは、入隊に際しての宣誓である。
宣誓の内容を簡単に説明すると、《軍人になったなら死を恐れず最後まで戦う》というのが宣誓の内容である。
その、宣誓を式の最後に総員で音読し解散になる。
-総員起立! 入隊における宣誓!
❰宣誓!私は大和皇国連邦軍の軍人として軍務を果たすとともに、常に軍人としての気品と栄光を忘れず、時にはこの身を盾にして大和皇国連邦国民及び国家を守り、軍人として死を恐れず最後まで戦う事を誓います!❱
全員が宣誓をし終わり、一瞬静寂が周りをつつんだ。
(宣誓が終わった。これでこの身は連邦の所持品となったのか…)
-これにて入隊式を閉式とする!
総員各部隊に別れて順次解散!
これで、今日1日の予定がほぼ全てが終わり、あとは各部隊に戻り点呼をし、各練兵兵舎に戻るだけだ。
部隊は、既に割り振られている。それも、能力順にだ。
一番軍人としての素質があるものが、第一○(ひとまる)部隊に配属される。以降は一桁台が増え最後は、第二○(ふたまる)部隊である。
一部隊は総勢20名で構成されている。
ちなみに、僕は第一四(ひとよん)部隊だ。
(相変わらず、俺は中途半端な感じだな…)
僕はそのまま、一四部隊の集合場所に向かった。
一四部隊の集合場所は練習用艦艇の前が集合場所だ。
既に数十人が集まっていた。その中に知っている奴がいた。
「よう!猛(たける)、久しぶりだな!」
僕は、猛に近づきながら言った。
たが、猛は反応しない、いや多分僕の事を忘れているのだ。
それも、仕方ない。山本猛とは中学校卒業後から連絡をとっていないのだから。
「急にすまんな、覚えてないよな…三吉だよ。保育園から中学まで一緒だった。」
猛は、右眉を上げて数秒後、思い出したかのように、笑顔で答えた。
「いや、覚えてるよ!みっちゃんだろ、忘れるわけがないよ笑」
《みっちゃん》は猛が僕を呼ぶ時に使っていたあだ名だ。
敏光(としみつ)だから《みっちゃん》とても安直なあだ名だが、たまに女性に間違えられる事もあった。
でも、久しぶりにあだ名で呼ばれたが悪い気分にはならなかった。
多分、自分でも《みっちゃん》を気に入っている。
「良かった~、覚えていてくれたんだ。でも、最初はヒヤヒヤしたよ。もしかしたら、他人のそら似かもしれないって思ったんだから笑」
「ごめんって、だって中学卒業して6年も会ってないんだぞ。それに、みっちゃん卒業した時より、筋肉質でサッパリしてるから名前を聞くまで分からなかったよ笑」
たしかに、猛が言う事はごもっともだ。
6年も会ってなければ昔の記憶しか残ってないのだから…
「でも、猛は6年前からあまり変わってないからすぐに分かったぞ、相変わらずヒョロイよな~、よくその体で入隊できたな笑」
「それは、みっちゃんもだろ筋肉質なのは確かにあまり変わらないけど、元々病弱だったじゃん笑」
「確かに病弱だったけど、6年前とは違うよ。体を鍛えていくうちに体が強くなって、今では風邪すら引かないぞ笑」
「それなら納得だわ笑。俺が入隊できたのは体じゃなくて頭で入隊できたんだ。」
そういえば、猛は小・中ともに成績優秀で高校も国内屈指の難関高を勉強せずに入る事ができるぐらい、頭が良かったのを思い出した。
僕は、常に猛に勉強を教えてもらっていた事も思い出した。
あの頃は四六時中、二人でつるんでいて楽しかった。
「確かに!猛には四六時中と言ってもいいほど勉強を見てもらってたわ笑」
「みっちゃんはやれば出来るのに、やらないだけだから勿体ないよ。でも、幹部候補として目の前にいるから、今後は勉強を教えなくても大丈夫だな!笑」
「そうだね、猛の言う通り勉強自体できない訳ではないからね。次は僕が、筋トレを猛に教える番だね笑」
「みっちゃんに教えてもらうのは新鮮だけど、よろしく頼むよ笑」
猛と話してるのはとても楽しい。
幼なじみの友人と話していると時が過ぎるのがとても早い。
周りを見渡すと自分達を含めて20人が既に集合していた。話し過ぎたと思ったけど、今から整列し直すみたいだ。
「もう、みんな集まったから再整列するみたい」
「再整列が終わって兵舎に戻ったら話しの続きをしような!みっちゃん!」
僕は「そうだね!」と言って、再整列の位置に移動した。全員が移動し終わったらすぐに部隊長が点呼をかけた。
点呼終了後、部隊長から今後の生活の注意等の示達があった。
部隊長の示達が終了後、部隊長がこの部隊の副隊長を担当する者を2名指名した。
僕も猛も、指名されなかった。ある意味安心した。
(できるだけ面倒な仕事はしたくない…)
しかし、部隊長はそれを察したのか分からないが、僕は、部隊の風紀を取り締まる警備主任に指名された。
指名されたからにはやらなければならない、部隊長から警備主任の腕章を手渡され、その場で右腕につけて、敬礼し部隊長に対して
「警備主任の命、承りました!」
と言って、その場で再び気をつけの姿勢に直った。
その後一通り、部隊長が各員に対して役者を与えていった。
ちなみに、猛は《会計及び健康管理主任》に指名された。
部隊長が、各員に役者を言い渡した後すぐに解散を指示した。
なお、今後の私生活や訓練などは副隊長の指示にて動く。部隊長は基本的には練兵最後の艦艇運用及び攻撃指揮の試験で会うまでは、直接会う事はない、しかし、副隊長達は月に1回は部隊長と会う事になる。
会って聞く内容は、雑務から試験まで多岐に渡るとともに、唯一部隊長に意見具申を行う事ができる機会でもある。
副隊長が改めて部隊長の解散の指示を復唱し、改めて副隊長2人から解散を指示された。
部隊長に対して全員が敬礼し、そのまま兵舎まで副隊長2人を先頭に2列縦隊で行軍し、兵舎へ戻っていった。
(明日から、本格的な訓練がはじまる…
気を引き締めないといけないな…)
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