アイディアに敬意を

陰陽由実

アイディアに敬意を

それは予感と言うべきか

はたまた直感と言うべきか


それが降りたのは

ほんの、一瞬の出来事だった

まるで雷が落ちたような

神鳴りが訪れたような


この世の時間は流れを止め

私の思考ばかりが加速する

ピクリとも動くことは許されない

動きたいとも思わない

ただ目を見開いたまま

その思考をより良いものへとするために

料理をするように

生地を練り合わせるように

動かし続ける


やらなくては

一瞬のうちに理解をした

こんなところでグズグズと

無意味に座り込んでいるわけにはいかない

ただ唯一、無から姿を得るもの

頭の中に濁流の如く

不意に、現れる

アイディア


つくらなければ

この頭の中にある精神体を

ただの媒体に魂を移せるような

これ以上にない器を

他にはないものを


ペンを取る

やっていることはいつもと同じ

しかしどれも同じものはない

全てのものに敬意を示せ

つくるのだ


こんなものではない

こんなものは美しくない

良いものができるのは

それが自分にとって良いものだと

確信しているからだ

だからこそ、妥協するわけにはいかない

根拠など何もない

ただ、それだけだ


手を動かせ

前進後退を繰り返しながら

確かに前へ進んでいるのを感じる

全ては淡々とした作業

しかし、自分の全てが現れる作業でもある

最後まで気は抜けない

抜くわけにはいかない

抜けるわけがない


ペンを置く

精神体の器が完成した

この頭の中にあった

ただそれだけの不確かなものが

姿形を持って

私の前に佇んでいる


私は息をついた。



そしてまた、次のアイディアが脳を走る

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アイディアに敬意を 陰陽由実 @tukisizukusakura

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