怨嗟の権化

冬城ひすい@現在毎日更新中

時折感じるもの

まただ。

どうしていつも感じてしまうのだろう。


深夜二時。

俗にこの世ならざるものが跋扈する魔の時間帯――丑三つ時に目を覚ます。


”――”


聞き取れない言葉を口走り続ける何かが窓の外を歩いている。

それも一、二で利く数ではない。

時折、こちらを見ては窓にへばりついて顔を見てくる気配を感じる。

そんな時は決まって眠った振りでやり過ごす。

もっとも起きようと思っても金縛りのせいで動けないというのが本音だ。


”お願いだ。お願いだから、早く朝になってくれ”


じっとりと冷たい汗をかきながら、魍魎の声ならぬ声を感じ続ける。


幼い頃からそうだった。

人には見えないものが見える。

これを第六感だというのなら、そんなものは欲しくなかった。


駅のホームでにっこりと手を振ってくれた女の人に手を振り返したら、母に何をしているのと聞かれたものだ。

もう一度女の人の方に視線を向ければすでにその姿はなかった。

そして電車に乗った時、窓の向こう側で手を振りながら走っている女の人を見た。

その時、電車はかなりの速度で走っていたというのにまったく同じスピードで並走し続けてきたのだ。

次の駅に着いた頃にはいつの間にか姿を消していた。


またこんなこともあった。

高校の修学旅行で班ごとに肝試しをすることになったのだ。

三人一組のペアになって決められたコースを通り、最奥のお札を取って帰ってくるという単純なものだった。

自分の体質を知っていたため、恐れていたが無事に三人で戻ってくることができた。

そして後から聞いて身の毛がよだったものだ。


「え? 俺、昨日の夜は具合悪くなっちゃってさ、旅館でずっと休んでたぜ?」


ならば肝試しのとき、ずっと傍にいた田中君は誰だったのか。

もう一人の女子にそれを聞いたとき、あの場には自分と貴方しかいなかったと言われてさらに恐ろしくなった。


それからも時折この世ならざるものを感じることができるようだ。


今宵もまた、魑魅魍魎が跋扈する。

いつかきっと見えなくなることを願って。




”――キミモオイデヨ”

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