クラスメイトを自由にできるソシャゲをインストールした俺は、クラスで一番気になる女の子を課金の力で……。

kattern

第1話

「『推し活GO?』」


 授業中。

 暇だったのでスマホを弄っていると変なゲームの広告を見つけた。


「『【水着イベ開催】『推しのクラスメイト』を君の課金でエッチにしちゃおう。』? なに言ってんの?」


 すぐにスワイプして消そうと思ったけれど、広告に出てた女が目についた。


 こいつ――クラスメイトの十津川じゃねえ?


 十津川ミコ。

 学校で三本の指に入る美少女。

 大企業の社長令嬢でおっとりしていて誰にも優しい。さらに巨乳。

 男子生徒の多くが――オナペットにしているえっちなクラスメイト。


 どうして彼女がアプリの広告に?

 モデルやってるなんて聞いていないけれど?


「暇だし、インストールしてみっか」


 俺は広告からアプリの詳細画面に移動すると、説明も読まずにインストールした。

 インストールは五分も経たずに終った。


『推し活GO! 君の『推しのクラスメイト』とはじめる青春ストーリー!』


「……なんじゃこりゃ」


 意味わかんねーな。

 とりあえず、スタートボタンを押す。

 するとすぐにFGOみたいなメッセージパートがはじまった。


 ただし、出て来たキャラクターはクラスメイトばかり。


「……まじかよ」


『大田原くん! これから一緒に楽しい青春を過ごそうね!』


 クラス委員長で誰にでも気さくな新井田小夜。


『私を推してくれると嬉しいな!』


 クラスのイケてるグループのリーダーで男女な柵原夏江。


『君が推してくれるなら、私たち、なんだってしてあげちゃいます!』


 そして――広告と同じポーズをする十津川ミコ。


 どうなってるんだ。

 意味が分からない。


 混乱してスマホを握る手が震える。

 そんな僕の手の中で画面にポップアップが表示された。


 そこには、こう書かれていた。


「『スタートアップ報酬! 誰でも好きなクラスメイトを、一体プレゼント!』」


 誰でも?

 本当に誰でも手に入るのか?


 頭の中をヤバイ妄想が駆け巡る。

 もし、このゲームが、俺が思っているようなヤベえゲームだったら。

 漫画みたいに『推しのクラスメイト』を好きなようにできるんだとしたら。


「だとしたら、俺は……」


 スタートアップ報酬を『受け取る』のボタンを俺の親指が突いていた。

 表示されたクラスメイト一覧の中から俺が選んだのは――。


◇ ◇ ◇ ◇


「大田原くん! この制服、スカートの丈が短いんだけど!」


「……いや、そのくらい普通だよ」


「カーディガンもこんな派手なの目立っちゃうよ!」


「学校指定のじゃん。なんでいつも地味なの着てるのさ」


「あと……前髪だけは戻させて! 顔が見えるの怖いの!」


「なんでー、かわいいじゃん。絶対そっちの方がいいよ、しーちゃんは」


 俺の推し『宮原詞子』は顔を真っ赤にしてひーんとべそをかいた。

 推し活アプリで『我が推しに命ずる! クラスのイケてる女子みたいな格好をしろ! あくまで普通の奴! それが一番エッチ!』と命じたのだ。


 したらこれよ。


 細い生足がちらっと見える短いギンガムチェックのスカート。

 白いちょっと大きめのカーディガン。袖が余り気味なのが最高にキュート。

 いつもは垂らした前髪を水色のヘアピンで横に分ける。たったそれだけなのに、くりくりっとした垂れ目がちな瞳で――百点満点美少女。


 最の高の極みで死ぬまである。 


 俺は「う゛っ!」と唸って胸を押さえた。


 普段はもっとこう「クラスで栽培されてるきのこ」みたいな野暮な格好だからね。

 ちょっと身だしなみ整えるだけで――こんな美少女なんだからふしぎだね。


「最高。俺の推し最高。クラスで一番地味な大人しい系女子。けど、プライベートでは甘々系子犬少女。宮良詞子。一生推せる……マジ女神」


「私はサイアクだよ!」


 推し活GOは本物だった。

 俺は『推しクラスメイト』を手に入れゲームの力で自由にすることができた。

 そして、『スタートアップ報酬』で手に入れた『【地味地味じめじめしめじ系女子】宮原詞子』を、最高に可愛い俺だけの彼女にした。


 課金いっぱいした!


 10万円くらい!


 アルバイトして、もっとかわいくしちゃる!


 次の『水着イベント(クラスメイト全員に水着グラあり)』超楽しみ!


「どうして、どうしてこんなことに……。なんでなの」


 しーちゃん(愛称)がとほほと肩を落とす。

 そんな姿も最高に愛らしい。


 どうしてってそんなの決まっている。

 席が隣でちょいちょい話をしていた彼女の事を、俺は昔からいいなと思っていたのだ。童貞男子が女の子に惚れる理由なんて、それくらいのチョロいもんですよ。


 そして――。


「だってしーちゃん、ステータスの欄に『推し:大田原学』って書いてあったから」


 彼女の推しも俺だったから!


「そうだったけれど! こんな変態だなんて知らなかったんだもん!」


「変態じゃない! 彼女にかわいくあって欲しいのは全世界の彼氏の正しい欲求!」


「だからってゲームで強制的に言うこと聞かせなくてもいいでしょ!」


 そう言いながらも、絆メーターはボッコボッコに上がっているのだった。

 ステータスも、気がつくと「最愛の人:大田原学」になっているのだった。


 くーーーーーっ!!!!!



「推し活GO最高だぜ!!!!!!」



「ほんとサイアクのゲーム!!!!」



【了】


~~~~~~~


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クラスメイトを自由にできるソシャゲをインストールした俺は、クラスで一番気になる女の子を課金の力で……。 kattern @kattern

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