第48話 エピローグ

「グリーン!」

「姉ちゃん!」


 女性達は皆元の家に帰り、家族達との再会を果たした。

 現在、大通りでは今までさんざん幅を利かせてきた兵士達が民衆に土下座で謝り、中には今までいびってきた民に殴られたり蹴られたりする兵士までいた。


 レイドのおかげでランドームの恐怖は無くなり、暴君の死はあらゆる連絡手段が使われて、すぐに国中に広がった。

 この場所だけでなく、きっと国中で民衆が歓喜の声を上げているだろう。


「しっかし、あの九九レベル男も可愛そうに、まさか相手が二〇〇レベルとも知らずに斬りかかるとはな」

「そうそう、ランドームの時は五〇〇レベルだったけどな」

「何? 貴様、今朝私に二〇〇レベルだと言わなかったか?」

「あれ、言ってなかったっけ? 俺根性理論スキル持ってるからヤル気によってレベル変わるんだよ」


 根性理論、あの黒騎士が持っていたリミットウォールと同じレアスキルで、現在所持を確認されているのは世界に数人と言われている。

 それでも、せいぜい上がるのは数レベル、どんなに高くても一〇レベルである。


「……貴様、女好き過ぎるぞ…………」

「ははは、まあな」


 と言うと、こちらにグリーンとその姉が駆け寄ってきた。


「今回は助けていただき、本当になんと感謝したらよいのか……」

「勇者の兄ちゃん、やっぱり勇者はみんなを救ってくれるんだよな!?


 昨日の夜のは何か理由があったんだよな!?」

 それに対してレイドは営業スマイルで、


「その通りだ、あれは君が困った時は勇者に頼ればいいなんて思わないように、君を鍛えるために心を鬼にしてあえてあんな事を言ったんだ」


 あまりの都合の良さにエルが驚愕していると、

 周囲の人々から次々と「さすが勇者様」と歓声があがり、レイドは民衆達に胴上げされ始めた。

 確かに強いが、馬鹿でスケベで美女と美少女以外は苦しもうが死のうが関係ないという外道っぷりにも関わらず、国民から英雄として崇められるレイドに呆れつつ、それでもレイドがこの国を救った事実は変わらないと、エルはレイドを温かい目で見てあげた。


(理由はどうあれ、民を救い感謝される、これはこれで勇者の資質かもしれんな)



   ◆


 レイドは、街の人達から是非国に残って欲しいとか、ランドームの代わりに王になってくれと言われたが、全てを断り昼の船に乗って別の大陸を目指した。


 ランドームの言うとおり、あまり清廉潔白な英雄では作れるハーレムには限界があるのかもしれない、それでも、一国の王にもなれば法律を変えてあの国を一夫多妻制にして多くの美女と合法的に結婚できた事だろう。


 魔王エルバディオスを倒した時と今回の一件、これでレイドは一生を地位や名誉、金と権力そしてハーレムに塗(まみ)れた人生を送るチャンスを二度も捨てた事になる。


 理由は勿論、エルと一緒に暮らすためである。


 確かに、レイドがあの国の王になってしまうと、他の国の王に身元がバレてしまうだろう。


 レイドは大陸中を冒険して各国の王や姫と面識のある勇者、魔王退治に行ったはずのレイドが一国の王となり魔王と暮らしているなど、とてもではないが皆が黙っていないだろう。


 レイドの目的、それは本名で胸を張って周囲から後ろ指差されること無くエルと幸せに暮らす事なのだ。


 そのためには、勇者レイドも、魔王エルバディオスも知られていない別の大陸に行くのが絶対条件なのだ。


「しかしレイド、本当に良かったのか?」


 甲板の上で潮風に吹かれながら、レイドはエルの頭を撫でた。


「何度も言わせるなっての、俺の目的はお前とのラブライフであって地位や権力には興味ナッシング、つってもデート資金は欲しいからな、どっか住み易い国見つけたらそこで勇者業でもやるかなっと」


 楽天的な顔で海を眺めるレイドの横顔を見て、エルの胸がトキめいた。


 ランドームを倒した後、レイドは一〇〇人近い美女と自分を天秤にかけ、それでもなお自分を選んでくれたのだ。


 顔を赤らめながら、うつむいて、エルはやや視線を背けた。


「その、レイド……お前がどうしてもと言うならば、まあ、今までの功績に免じて……キ、キスくらいなら…………あれ?」


 チラリと横目で見て、レイドがいない事に気付く。


「レイド?」


 周囲を見渡して、レイドを見つけた。

 なんと、レイドは甲板のテーブルに着く客に飲み物を運んできた美人ウェイトレスを口説いていたのだ。


 またあの営業スマイルでだ。


 レイドの一番は自分だろう、他の子は遊びだろう、それでも、エルはレイドが他の女の子と一緒にいるだけで……


「レ~~イ~~ド~~!!」


 振り返ったレイドの視界に飛び込んできたのは、巨大なハンマーを持って飛び掛ってくるエルだった。


「ちょまっ……エルお前――」

「魔王☆ハンマー!!」

「ぎゃああああああああああああ!!!」


 魔王に殴られて、甲板には勇者の悲鳴が響き渡った。



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 作品解説した通りここまでです。

 人気があったら本格投稿したいです。


 本作を気に入ってくれた人は、同じくファンタジーギャグでMF文庫J発売の【無双で無敵の規格外魔法使い】をオススメします。

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エロ勇者は美少女魔王に寝返りました 鏡銀鉢 @kagamiginpachi

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