あいあいあ

楠木黒猫きな粉

いいいいいい−−360

孤独を覚える光路を歩く。心臓はどこを向くのだろうか。焦げゆく身体はそれでも進んだ。

駆け抜けた四季が火を置いていく。

灯火の数だけ身体は落ちた。私という時間は燃え続け、それ故に感覚全ては消えた。


焦がした心と憧れに追われた。桜と共にそこに咲いた。去る冬が見せた星が私を突き動かした。

煙火の春。私という全てを焚べた。


初めに燃えたのは目だろうか。太陽を見たように視界が潰れた。惹きつけられたのかも知れない。開花した桜は散り、雨に降られ、緑が包んだ。陽炎のように世界はぶれていた。もはや火は全身を包んでいた。

遠望の夏。私は盲目的に求めた。


枯れた緑。色々な匂い。混じり合って消えていった私の望み。ぶれた世界は否に溢れ、賛を失った。井を抜け出し空を見る。潰えた過去たちが落ちた五指を咥えていた。

待ち望む金木犀。迷道の秋。

私は私を惑っていた。


抜け落ちた木。突き刺した温もり。弾けで消えた淡い未来。盲目の視界、砕け落ちた五指。私という形はもはや薪にも満たないだろう。

許されない逃避。投げ捨てた安定を今はただ眺めている。私という意味を未だ理解できず、ひた走る。解否の冬。

私は名前を忘れていく。


四つの朝と夜を跨ぎ、私ははじまりの星を見る。とてもきらめいて、それでいて冷たい星を眺めている。

目は見えず、後悔を繰り返し、忘れ、迷い、ぼかして節目を跨ぐ。

薪はなくとも火は燃えた。

身体はなくとも前に進んだ。


私は私という奇跡を焚べた





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あいあいあ 楠木黒猫きな粉 @sepuroeleven

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