第261話 リッドと特務機関
今僕は、宿舎の横にある室内訓練場でカペラが呼びに行った獣人族の子供達を、ディアナと一緒に待っている。
ちなみに、室内訓練場は前世の記憶で言えば、学校などにあった体育館をもう少し大きくしたような感じの建物だ。
その時、室内訓練場の出入口がゆっくりと開き、カペラの姿が見えた。
彼は、その場で会釈をすると、僕に向かって声を発する。
「リッド様、狸人族の三兄弟と兎人族のラムルとディリック。馬人族のアリスとディオをお連れ致しました」
「ありがとう、カペラ。皆も、突然呼び出してごめんね」
カペラに答えた後、この場に集まってもらった獣人族の子供達を見回して声を掛けた。
この場に集められた皆は、あまり接点のない子達だ。
兎人族と馬人族の子達からは何故呼ばれたのだろう、と不思議がっているのが表情から読み取れる。
一方、狸人族の兄弟というか、三つ子君達はニコニコと楽しそうだ。
彼らは、三人とも同じ顔と背丈をした美少年で髪形も『おかっぱボブ?』で統一されている。
ただ、前髪の長さだけが違っていて、両目が見えている子が『ダン』、右目だけ見せている子が『ザブ』、左目だけ見せている子が『ロウ』、という感じだ。
僕は咳払いをして注目を集めると、悠然と言葉を紡ぐ。
「まだ内密だけど、ここにいる君達には『バルディア第二騎士団所属辺境特務機関』……略して『辺境特務機関』に入団してもらいたいんだ。今後は、カペラの訓練を中心に受けてもらうからそのつもりでいてほしい」
説明を聞いた子供達は狸人族を以外は、きょとんした面持ちを浮かべている。
その中、考え込むような表情を浮かべた兎人族のラムルが手を上げた。
「……質問してもよろしいでしょうか?」
「うん、どうぞ」
「リッド様が仰った『辺境特務機関』とはどのような存在になるのですか」
ラムルの問い掛けに、僕は頷きながら笑みを浮かべた。
「その疑問は当然だね。じゃあ、今から説明するよ」
その後、僕はこの場にいる子供達に『辺境特務機関』の内容を丁寧に説明していく。
特務機関は『情報漏洩対策』『情報収集』『要人警護』など、通常とは異なる特殊任務が主となる組織だ。特に、情報関係の任務が多くなるだろう。
最近開発した『木炭車』や『懐中時計』は言うに及ばず。
『魔力回復薬』なども含め、今後も様々な開発や魔法研究を行っていく予定だ。
しかし、バルディア領が豊かになればなるほど、近隣諸国だけでなく帝国内からもその技術や情報を探りに来る輩が増えるだろう。
今後のバルディア領を守る為には、ある意味では一番重要な機関となるはずだ。
現状のバルディア領は、情報収集も騎士団任務の一部となっているようだけど、それだけでは弱い。
絶対に反対すると思っていた父上も、この点については以前から思うところがあったらしく、第二騎士団設立の際『特務機関』を作ることも了承してくれている。
そして、『特務機関』の設立にあたり、一番頑張ってくれたのは実はカペラだ。
彼は、元々レナルーテの諜報機関である『忍衆』に所属していた。
今回、そこで学んでいた技術、経験、知識を彼は惜しみなく、僕達に提供してくれたのだ。
カペラから手に入れた『忍衆の仕組み』と『バルディア騎士団の仕組み』、以上の要素を掛け合わせ、良いとこ取りをした組織が正式名称『バルディア第二騎士団所属辺境特務機関』ということになる。
「……というわけさ。つまり、ある意味では君達が今後のバルディア領の要にもなるわけだね」
僕の説明を聞き終えると、狸人族以外の子達は何とも言えない面持ちを浮かべている。
その時、おずおずと馬人族のアリスが手を上げて、僕に問い掛けた。
「リッド様、特務機関の必要性は何となくわかりました。ただ、僭越ながら私達が選ばれた理由はなんでしょうか?」
「そうだね、じゃあ次の説明に移ろうか」
そして、僕はアリスの問い掛けに答える流れで彼らをこの場に呼んだ理由の説明を始めるのであった。
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