第10話 少年と少女はまた一歩未来へと踏み出す。

ピピピッピピピッピピッ


「うーんっ・・・。今何時だ・・・」


スマホを見ると9:00と表示されていた。


「んんん・・・」

「ん?」


直ぐ近くから寝息が聞こえる。

そちらの方を見ると、希空の顔が側まであった。


「すぅ・・・」

「近いな・・・」


今は希空の家にお泊りをしている。

そして希空と同じベッドで寝ている。


「近いなぁ」

「すやぁ・・・」


元々、一人用のベッドなので無理やり二人で寝たが無理がある。


「起きようかな」

「すぅ・・・」


ベッドから身体を起こし、希空にスペースを空ける。


「昨日は、あんまり気にしてなかったけど異質だよな。この棚」


希空の部屋は、ぬいぐるみが多く可愛らしい部屋だなと思ったが、この部屋には戸棚が置いてある。

その中には、多くの薬が入っていた。

そうだ。

希空は病気なんだ。

そんな素振りを見せないから忘れていた。


「はぁ・・・。考えても仕方ないか」


俺は、希空の部屋を後にしてリビングに向かう。






「おはようございます」

「あら三神君。おはよう」

「おはようございます。お義兄さん」


リビングには希空のお母さんと希空の妹の美愛がが居た。


「希空はまだ寝てるのかしら?」

「はい。ぐっすりですね。気持ちよさそうに寝てました」

「ふふっ。それは良かった」

「お義兄さん!!ゲームは好きですか!?」

「好きだけど。どうしたの?」

「一緒にやりましょう!!」

「良いよ」

「やった!」

「美愛。あんまり三神君に迷惑かけないの」

「はーい」

「俺は大丈夫ですよ」


そうして美愛と一緒にゲームする事になった。


「お義兄さん強いです!!」

「まあな。ゲームは得意な方なんでね」

「凄いです!!。お姉ちゃんが言ってたんですけど、頭も良いんですよね?」

「希空って俺の事を美愛にも話してるんだな。それで頭が良いかっていう話だったな。俺は、そんなには良くないかな」

「そうでしたか。でもテストの順位が掲示されますけど、お義兄さんって3位とかに名前ありませんでしたか?」

「あったけど。よく知ってるな」


テスト結果は確かに掲示されている。

上位100位までは名前も書かれている。

そして俺は、学年3位として毎回君臨している。

その順位からは、上がりもせず下がりもしていない。

それにしてもよく知っているな・・・。


「というかお義兄さんって有名人ですよ」

「そうなの?」

「はい。バスケやってる姿はカッコいいみたいなのは、私のクラスでも聞きますよ」

「そうだったのか。あんまり目立つもんじゃないな」

「そうですか?。私は良いと思いますよ。それにお義兄さんのバスケ見てみたいですから」

「そういうものなのか」

「そういうものですよ」


美愛と小一時間ほどゲームをした。


「ふぁぁぁぁ。おはよ~」

「お姉ちゃんおはよ」

「希空。おはよ。遅かったわね」

「んー」

「希空。おはよう」

「おはよ・・・」


まだ寝ぼけている希空は目を擦りながら返事をする。


「お義兄さん。まだお姉ちゃんは寝ぼけているみたいなので、起こしてくれませんか?」

「起こすってどうやって」

「そんなの決まってるじゃないですか。眠れるお姫様を起こす方法なんて一つですよ」


美愛は、こう言っているのだ。

『キスをしろ』とな。

まあ駄目ではないけど、恥ずかしいな・・・。


「むにゃ・・・」

「はぁ・・・。希空起きろ」

「むぅぅぅ・・・???」


ちゅっ


「んっ!?」

「ぷはっ。目が覚めたか?」

「はぁはぁ。うん。覚めたけど死にそう」

「希空のは洒落にならんからな。自重しよう」

「うん」

「もうすっかり恋人が板についてるね」

「ふふっ。美愛もすぐに彼氏ができるよ」

「そう・・・だね」

「うん」


希空も起きたところで昨日の約束の準備を始める。


「美愛も一緒に来る?」

「良いの?」

「うん。蒼も良いよね?」

「ああ。俺は構わないぞ。俺ばかりが希空を独り占めする訳にはいかないからな」

「私が蒼を独り占めしちゃうからねぇ。美愛とももっと仲良くなって欲しいし」

「そういう事か」

「じゃあ私も行く!」

「ふふっ。じゃあ決まりね」


こうして、俺と希空と美愛の三人で遊びに行くこととなった。


「よしっ。2人とも準備できた?」

「俺は出来たぞ」

「私も!!」

「ふふっ。じゃあ行こっか。先に、役所で婚姻届。そのあとは、駅近くのアミューズメント施設に行くよ」


そう。

今日は、婚姻届を貰いに行く。

その後、希空とバスケをするためアミューズメント施設に行こうと話になっていたのだ。









「これが婚姻届かぁ」

「そうだな」

「初めて見た・・・」


俺たちは、今役所に来ている。

婚姻届を受け取り、それぞれの感想を抱いていた。


「じゃあ名前とかは、家で書こうよ。早く遊びたいし」

「おう」

「私も遊びたい!」


役所を後にし、アミューズメント施設へ向かう。






「じゃあやろっか」

「マジでやるのか?」

「バスケやるの?」


俺たちは、アミューズメント施設の中にあるバスケコートに居る。


「あっ蒼、手を抜いたら駄目だからね」

「へいへい」

「本気のお義兄さんを見られるんですね!!」


希空は、手を抜くなというが全力を出す方が難しい。

美愛に関しては、キラキラした目で見てくる。


「じゃあ私が先にオフェンスね。蒼は、ディフェンス」

「分かった」

「私は、得点をカウントします!」


そうして、俺と希空の1on1が始まった。


「行くよ。蒼」

「ああ」


ダンダンダンッ・・・ダンッ!


希空はドリブルをする。

かなり鋭いドライブだ。

普通に良いフォワードのドリブルだぞ。


「っ!!」


ダンダンダンッ!!

キュッ!!


希空はそのままレイアップをする。

だが・・・。


「よっ!!」


希空のレイアップをブロックする。


「むっ!!蒼、大人げない~」

「いや希空が本気でって・・・」

「2人とも凄い!」


確かにこれは、手を抜けない。


「次は俺がオフェンスか」

「かかって来なさい」


ダンダンダン・・・。


さてどうしたものか。

はっきり言って1on1は、苦手だ。

俺のドリブルスキルなんてたかが知れている。

だが、希空の期待に応えてやろう。


「あら?来ないの?」

「まあ見てな」


ダンダン・・・ダンダンッ!!


俺の得意なドライブ。

ドライブの寸前に素早いドリブルを二回。

そしてダックイン。


ダンダンダンッ!!

キュッ!!

パサッ


希空を全速力で抜き去り、その勢いのままレイアップ。


「ふぅ」

「蒼。流石は、バスケ部に勝った男ね」

「お義兄さん。凄いです!!」

「希空が全力でやれって言うもんだから」

「ふふっ。蒼って本当に面白いよね。私の期待を裏切らないんだから」

「私もやりたいです!!」

「じゃあやるか」

「そうだね」

「うん!!」


そうして、三人でバスケをした。








「ふぅ~。疲れた」

「そうだね」

「2人とも強すぎ」


俺と希空はバスケ経験者だが、美愛は違うため経験の差が出てしまった。


「久々にこんな全力でやった気がする」

「体育の時は全力じゃないの?」

「当たり前だろ。疲れるし、体育だし」

「それもそっか」

「えっ!?じゃあお義兄さんは、全力を出さずにバスケ部に勝ったんですか!?」

「いや、それはないな。バスケ部の奴とマッチアップする時は、本気でやったよ」

「ふふっ。美愛は見た事無いと思うけど、その時の蒼は本当に凄いんだから」

「ええ~。気になる~」

「ははっ。じゃあ今年の冬のクラスマッチだと見れるかもな」


日も暮れてきたので、希空たちの家に一度戻る。



「ただいま~」

「ただいま!!」

「お邪魔します」

「あら~もう帰って来たのね」


希空たちの家に帰ると、希空たちのお母さんが出迎えてくれた。


「かなり楽しめたよ」

「私も楽しかった!!」

「あらあらそうなの。ありがとうね蒼君」

「いえ。俺も楽しかったですし」


本当に今日は楽しいと思えた。


「ふふっ。そうなのね。それで今日の目的である婚姻届は貰って来たのかしら?」

「もちろん!!」

「じゃあ名前を早めに書いてしまいなさい。それと蒼君」

「はい」


希空たちのお母さんは、婚姻届を書くように促し、俺の方を真剣な眼差しで見つめる。


「もう一度聞くけど、希空で良いのね」

「俺は構いません。昨日も言った通り、希空を幸せにしてみせます」

「分かったわ。結婚を認めます。希空の事をよろしくお願いします」

「ありがとうございます」

「蒼も書いて」

「ああ。分かった」


俺は、婚姻届に自分の名前を書き、印鑑を押す。

印鑑は、常に持ち歩いているため、すんなりと書き終えた。


「あとは私たちと蒼君のご両親のサインだけね」

「そういえば、私まだ蒼の両親に会った事ないんだけど」

「確かにそうかもな」

「そうなの?じゃあ早めに挨拶した方が良いわよ」

「うん」

「そうですね。とりあえず、今日は家の方に帰るので、その時に言ってみます」

「そうね。結婚とかはその時の様子しだいね。とりあえずの所は、蒼君がご両親に伝えた方が良いかもしれないわね」

「そうします」


こうして俺は、自宅に帰る。

父さんと母さんに話をつけるために。


「蒼」

「希空」

「大丈夫だよね・・・」

「安心しろ。俺が希空を幸せにする。だから少し待っててくれ」

「分かった。ただ結婚の挨拶はさせてよね」

「勿論だ」

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心のない男子高校生と未来の無い女子高生 MiYu @MiYu517

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