第14話 共生
家にたどり着くなりご飯を食べた、時計の針は午後9時を指している。家を出てから戻って来るまで2時間ほど経過した。遠回りしながら移動した事を加味しても想定より遅くなった。途中までかなり順調だっただけに余計にそう思う。
なんとか接続する事に成功した。あまりに眠すぎてパソコンを起動する時間が物凄く退屈に感じる。カロリーバーを食べて眠気を誤魔化す
パスワードを打ち込みデスクトップを開く。するとすでに通知が一件来ており相手は兄貴だった、メッセージには電話番号が書かれている。携帯を取り出し番号を入力した。静かな部屋に着信音が響く、1コール、2コールと進むたびに鼓動が何故か早くなる、緊張してるのか? 身内に電話するだけでこんな気持ちになるとは思っていなかった。気持ちがそわそわした状態のまま着信音が止み兄貴が電話に出た。第一声が出ない、何を言えばいいか分からない、どこから説明すればいいか分からない。
「久しぶりだな、永遠」
久しぶりだがとても聞き慣れた声、この人が
「あ、久しぶり」
何故だろう、自然と涙が溢れて来た、悟られぬ様に必死に涙を拭う。
「お前泣いてるのか? なんだよ、そんなに怖かったのか、それとも寂しかったか? どちらにせよ生きてくれてて嬉しいよ」
「まさか千ちゃんにもらったこのvpn機器が役に立つなんて思わんかった」
「だろ!? だから俺の言う事聞いてればいいんだよ、お前が俺について来ればこんな事にもなってなかったんだから」
「何回も言っとるけど、それじゃただの劣化にしかならん、それは嫌だ」
「変わってないな、安心したよ、母さんから聞いてるけどそっちでも頑張ってるんだってな」
「ぼちぼちだよ、それより今の状況そっちから確認できんの?」
「そうだな、東京は封鎖されてる、県境には政府の特殊部隊が取り囲んでるからそこに行けば出られるけど信用しない方がいい」
「なんで?」
「保護された後に検査のため一旦隔離されるんだけどさ、そっちの知り合いに手伝ってもらって施設のシステムをハッキングして内部をチェックしてんだけど今んとこ誰1人としてその施設から出た人がいねぇ、ぜってぇ何か隠してる」
「そうか、じゃあ別の作戦考えねぇと」
「なに?」
「意外だな、お前のことだから行って確かめるとか言い出すかと思ったよ、成長したな、それとも考えが変わる様な事でもあったか?」
「別に考えが変わった訳じゃない、俺だって現実を見る事ぐらいあるよ」
それはさておきこれからどうするか話し合った。
「ヘリコプター? 途中まで船で近付いてそこから飛ばすつもりか?」
「そう、場所さえ指定、なんならおおまかな範囲でもいい、それが分かれば俺が手配する、とびっきりの戦闘部隊をそっちに寄越す」
「テレビ局ぐらいか?」
「まぁそうなるよなぁ」
「ん? 何か問題ある?」
「別に問題はないんだ、けど場所の情報が取得出来ないんだよ、原因は分からん、お前や俺はなんとなくでも場所が分かるけどこっちの奴らがノーヒントで辿り着ける訳ないからな」
東京だけ正確な場所が取得出来ないらしい、千葉や神奈川、埼玉や山梨といった隣県は問題ないが何故か東京だけ分からない、
「なぁ、もし政府が何か掴んでるとしたら外から来たヘリコプターを無条件でハイどうぞなんて事するか?」
「………」
「千夜?」
「悪い悪い、他に誰かいるのか? 音聞こえんだけど」
「あぁいるよ、たまたま出会っただけの関係だけど」
「男か?」
「違う」
「マジかよ女! 可愛いか?」
「美人だよ、千ちゃんは好きなタイプかな、顔はいいけど悪役令嬢みたいな正確しとるし、ハハ」
「何すんだよ〜 たんこぶ出来たわこれ、悪役に怪力足したらただのギャングだろ」
「電話の相手はあなたのお兄さんよね? 悪役令嬢なんて訳の分からない事ゆうのやめてくれる? さっきはなんとなく許したけど次はないからね、あと痛いなら絆創膏でも貼ってなさい」
「ハハハ、楽しそうだな、まずは自己紹介、俺はそいつの兄、
「私は
「まぁそれは俺たちのチャームポイントだから気にするな、所で話はどのぐらい聞いてた?」
「ヘリコプターでーとか場所が分からないーとかかな」
「じゃあ話は早い、まずはこっちでなんとかして位置情報を取得して部隊を動かす、それまでは遠足の準備をしててくれ、移動時間はどのぐらいか分かるか?」
「だってよ、あんた分かる?」
「ゆうて知ってるテレビ局一個しかないんだよな、
「テレビ東京?」
「そう」
「分かった、場所はテレビ東京かその周辺にする、なるべく急ぎで動くから2人もいつでも動けるように準備しててくれ、それじゃあ何かあればすぐ報告する、ちゃんと飯食って寝ろよ」
とりあえず連絡の手段が取れた事に安堵の表情を浮かべた、今までのしかかっていた責任が一気に軽くなった気がしたから。今後を想定して早速遠出に必要な物を確認した。日持ちする物が沢山あるため食料は問題ない。考えるべきは怪我をした時だろう、包帯やガーゼぐらいはあるが止血剤なんかがあればより安心できる。
「聖良は医学部の友達とかいるか?」
「他の大学でいるにはいるけど…まさか薬局から持ってこようなんて馬鹿な考えはやめなさい、ちょっとだけ知ってるけど齧った程度の知識を持ってる奴が1番危ないんだからね」
「分かった分かった、どちらにせよ1回行ってみようぜ、湿布とかテーピングとかあって困る事ないしワセリンとかあってもよくね? 傷口に直接ガーゼやら包帯もなんか嫌やし」
「それもそうね、じゃあ朝から動きましょう、今度は起こさないでよね」
「はいはい」
ソファに横たわった
「どうした?」
「あんたって怒んないよね」
「どうした急に」
「…あんたも寝るならベットの方がいいでしょ? 狭いけどここ空いてる」
「え、それもしかして誘ってる? しばらくヤッてないし張り切っちゃうなぁ」
「な、ば、ばバカじゃないの! 近づかないで変態! 床で寝てなさい!」
赤くなった顔を服の襟で覆い背中を向けて、横になった。
「あれ? もしかして処女か?」
「…………死ね」
「図星? ごめんごめん、お言葉に甘えさせてもらうよ」
お互い背中を向けて横になる、2人で布団を分け合い狭いベットの上で眠りに就いた。
「……ばか」
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