第13話 敵の敵は…
あれから
「ねぇ、さっきすごい銃声聞こえたけどあの2人はもう…」
「だろうな」
「よく分からない、こうなるって分かってた訳? あなたの動きからしてたまたまとは思えないんだけど」
「まぁそうだな、これ使ったんよね、上手くいってよかった」
「なにそれ」
「コイツはシャッターを開けるための装置、ちょうどあの化物が来た方向にそのシャッターがあってお前が捕まってるのを見てすぐに気付かれん程度に開けた」
「ふーん、2人を助ける選択肢はなかったのよね?」
「まあね、話し合い出来なさそうやしそもそもメリットなさそうやったし片付けて貰えてよかったわ、他人の死なんてどうでもいいし」
「そう…なのね」
淡々と語る
「よし! やっと見れた! ごめんごめん、時間かかった」
「これは…倉庫の映像?」
「そこのやつやね、一応確認」
「これ暗視カメラよね? 調達したライトがあるとは言え暗闇を歩くのは緊張するわね」
「だよな、電気のスイッチどこやっけ」
〜〜〜〜〜〜
「イッテェ…あの野郎、テンパりやがって、まぁほっとけば止まるだろ、それにしてもさみぃ」
「あぁさみぃ、あの窓閉じてぇけどあの高さは無理だな、我慢するしかねぇか」
「それにしてもヤバい奴に絡んじまったなぁ、どうやったか知らねぇけどいつの間にかシャッターを開けてやがった、それに別れ際のあの顔、人間じゃねぇぜありゃあ」
バタン! と勢いよく扉が開いた、「うぁぁ」と言う声、奴らが倉庫に入って来た。積み上げられた段ボールから様子を伺った窓から差し込む月光のおかげシルエットぐらいは見えた。そいつはしばらくその場に立ち止まったのちにこちらの方へ歩いて来た。
「ツイてねぇぜ」
「クッソ! どうなってんだ!」
奴の姿は見えず足を引きずる様な音を頼りに、積まれた段ボールの中心を軸に化物と対角線を位置取る事を意識し反時計回りで移動した。
「そろそろだな」
足音が聞こえなくなった、ここがチャンス、大きく息を吸い込み覚悟を決め飛び出した、しかし化物姿はそこにはない…
「どこ行きやがった!」
恐怖と緊張で頭が上手く動かなくなった、頭が真っ白になる感覚を初めて味わい体中から嫌な汗が吹き出る、冷気が体を包み体温が奪われる。一度冷静に額の汗を拭い頭を整理した。
「い…ぺい」
「ひっ!?」
突如耳元で誰かに囁かれた、驚きのあまり声も出ない。下を向いているため顔は確認できないが服装からしてそれは
「お前、生きてたのか! ややこしい奴だな、出てくるなら普通に出てこいよ、へへ! でも見直したぜ、まさかお前にそんなガッツがあったなんてな」
肩を2回叩き安堵の表情を浮かべた。安心したのも束の間突如激しい痛みに襲われ苦痛な表情を浮かべた。一瞬の事で何が起きたか分からなかったがどうやら左耳を食いちぎられた。コイツは
間髪入れずに再び襲いかかって来た。痛みを紛らわされるために歯を食いしばり突進、積まれた段ボールの山が崩れるほどの威力で吹き飛ばした。
すると本当に奇跡が舞い降りた、外に繋がる扉が! 鍵も内側から開けられる! 手が悴み感覚もなくなって来た、手こずりながらも扉を開けた。
久々の外の空気、空は雲ひとつなく大きな満月が姿を見せている、真夏の太陽を直視した時の様に反射的に目を逸らすほどの眩しさを感じた。
「これで俺は自由…だ……」
化物は確かに音、動き、暗闇なら光に反応する、しかしそれ以上に大切な要素を
「は、ははは! ハハハハハ! これが話題のVRか? なんて上手く作られた仮想空間なんだ! 素晴らしい! さあ! もういい! ゲームは終わりだ! 早く装置を外してくれ! ハハハハハ! ハハハハハハハ!!!」
噴水の如く噴き上がる鮮血、真紅に染まる満月を最後に息絶えた。
〜〜〜〜〜〜
「聞こえた? 多分さっきの奴らだよね」
「意外と長生きしたな、裏から出て10分ぐらいは経ってるか」
倉庫から店の裏から脱出した2人は、秋の音が流れる夜道を歩いていた。
「如月、あんたはどこまで計画通りの動きだったの? 占いとか信じないけど今なら信じれそうなぐらい上手く行きすぎてる」
「別に計画通りに動いたわけじゃねぇよ、もしものために備えとっただけ」
「今思えば初めからおかしかったわね、電子ロックを解除して中に入った時とか、謎に突っ立ってたでしょ」
「あぁ、あれな、初めから店内システムにアクセス出来たんよね、つまり誰かがハッキングしてあそこに繋げばいつでも誰でも扉を開けれる状態にしとった、それで念の為って感じ」
「でもそんなまどろっこしい事しなくても私を置いていけばよかったじゃない、私がいない方があなたは安全なんでしょ」
その言葉に少しドキッとした、心を読まれたと思った。もしかして出発前にやんわり断った事に対して感じた事なのだろうか。
「聖良のゆう通りやね、1人の方が楽やし安全、聖良はその逆、誰かに守ってもらいたい、どうせ自分を守るのは当然とでも思ってるだろ? 美人だし尚更釣れるだろうな」
その言葉を聞いてさらにムスッとした。
「そうね、その通りね、私はあなたを利用してるだけ、分かってるなら早く捨てなさいよ」
「そう、それでいいんだよ、お前は勘違いされやすいんだろうな、ただ素直なだけで」
予想していない答えが帰って来てその場で足を止めた。
「お前は自分の事をよく知ってる、弱い自分を
これまで見たどんな物よりも
「ちょっとあんた、名前教えなさいよ」
「名前? 知ってんじゃん」
「下の名前よ、これから私の召使いになるんだしょ? だったら名前ぐらい知っておかないとダメでしょ」
「とわ…
「いい名前じゃない、これから未来永劫、私に利用される人としてはピッタリね」
月明かりが照らす薄暗い夜道を歩く、これまで
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます