第9話 痛み分け
「美智子…ほら! 水持って来たよ、それとも先に何か食べる?」
問いかけるが反応がない、ゆっくりと近付いてくるが明らかに様子がおかしい、
(どうすれば…? 立ち止まった?)
「ら…げて……」
「!? 美智」
「ああぁ!!!」
その時が来た、僅かに残った理性も全て消え去りただ目の前の
(強すぎだろ! なんて力してんだ)
「うあぁぁぁ!!!」
「だめ! 美智子!」
「大丈夫?」
「あれは友達?」
「そうだけど…今はもう……」
「そっか、覚悟ができてるなら話は早い」
銃を取り出し慣れた手つきでセーフティーを外した
「美智子……これじゃ何も変わってないじゃない……」
「……クソ! 早く逃げましょう、あんな音立てたら外の奴らが入って来る、どこに避難してるか知らないけど案内しなさい」
「あんた怪我してるじゃない、じゃあこのバッグは私が持つからあんたは護衛しなさい」
「え? 分かっ!?」
危険を察知した
「何! どうしたの!? もうこんなに近付かれてるの!?」
「ミスったな、油断した」
気が付けば周りに数体の化物がいる、まだ包囲されている訳ではないが、このまま逃げても大量の化物を引き連れる事になる可能性が高い。
「とにかく早く行きましょう、今ならまだ間に合うわ」
「…先に行っててくれ」
「はぁ!?」
「そこの従業員用の扉から裏の駐車場まで行ける、多分出て左側に大破した車があるからそこで待っててくれ、俺はコイツらを一旦反対側まで引っ張る」
「いや意味わかんない、そんな事するより振り切った方がいいでしょ?」
「いや無理、アイツらは血の匂いに集まって来る、これで逃げてもついて来るかもしれん、さっき押し倒された時にガラス片か何かで切っちまった、怪我は大した事ないけど出血はそれなりにしてるから誤魔化せないだろうな」
「でも…」
「いいから行け、俺の合図で動け」
「……分かった」
「3…2…1…」
「なんなのアイツ、普通学生があんな所から正確に撃ち抜けるなんてありえない、作戦もめちゃくちゃだし、ほんと頭いいのか馬鹿なのか分かんなくなる」
気が付けば裏の駐車場まで来ていた、化物が追って来る事はなかった、店の中から聞こえて来る銃声は少しずつ遠くなっているのが分かる、無事に逃げ切れたのだろうかと心配をしつつも
「見える範囲だけでも結構な数いるじゃない、ほんとに大丈夫なのかしら」
バッグを置きその場にしゃがみ込んだ
「ん? ちょっと待てよ…もし何かあって私がここにいなかったら如月はどうすんの……メモぐらい残しとかないと」
もしもの事を考えメモを残す事にした、紙は大丈夫、適当に商品のパッケージを使えばなんとでもなる、問題は筆記用具、バッグの中を探したが入ってなかった、どうするか悩んでいるとズボンのポケットの中にシャーペンの替芯が入っていた、これは
「ありがとう美智子…でもどうしよう地面じゃ書きにくいなぁ、平らな物ないかしら、車も大破しちゃってるからガタガタだし……」
周りを見渡すと路地裏に置いてある室外機を見つけた、幸運が重なり気分が高揚した
一方その頃〜〜〜
「やっと止まってきたか」
「うぁああぁ」
「うざ、どんだけ血に飢えてんだよ、ほらよ、これあげるから一生そのハンカチ嗅いでろ」
作戦は成功し化物達を
「やっと着いた、でもまだちょっといるなぁ、もうちょい遠回りしていくか」
さらにほんの少しだけ迂回して目的の場所、大破した車まで辿り着いた、しかしそこに
「遅かったわね…」
「あ……行こう…」
それから言葉は何も交わさずに、2人で
帰り着くなりまずは怪我の治療を始めた、
食事も終わり外も暗くなって来た、水が汚染されている可能性を考え風呂には入らないが、少しでも体を清潔に保つためにウェットティッシュを使い体を拭いた。
「如月、寝る場所ある?」
「ベット使っていいよ、俺はソファで寝れるけ大丈夫」
「ありがとう、悪いけどもう寝るわ、なんか…疲れちゃった」
「…おやすみ」
本来寝るにはかなり早い時間だが仕方ないだろう、友人との別れは辛い、一生分の悲しみを受けたと言っても過言ではない。
向こうは
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