第7話 非力な光は影を生み出せない
「落ち着いた?」
2人は近くにあるふれあい広場のベンチに座っていた、ここは学生達が日々の勉強疲れの合間の気分転換の場所としてよく使う、とても風当たりがよく心地の良い場所、先程まで泣いていた
「うん、ありがと。 いきなりだけど…いつから気付いてたの?」
「再会した時からなんとなく、その後の行動で確信した、ふざけて全国経験者なんて言ったけどあれは無理があるやろ。噛まれたのは右腕か?」
「うん」
そうすると
「やっぱりか、朝は袖を捲ってたのに会った時は捲ってなかったからなぁ」
「あぁやっぱりそこなんだ、相変わらずいい洞察力だねぇ」
…………
「今どんな感じ? その…体調とかさ」
「体調か…よく分からない、でも…少しずつ体が蝕まれてるのは感じてる、永遠が一緒じゃなかったらもう終わってるかも」
「奴らの生態に詳しいのもそれが原因か? 血の匂いに敏感ってやつとか」
「そうだねぇ 私も分かんないよ? でもなんだか感じ取れちゃうんだよ、生きてる人間の血の匂い、だから永遠もこれから気を付けてね、怪我したらまずしけつうゔ! がは!」
突然苦しそうにうずくまり口から血を吐いた、内臓が破裂したかの様な激痛が身体中を襲い立ち上がる事すら困難な状態にも関わらず
「若菜…そもそもどうしてこんな…」
「もう時間が無いみたいだね、大丈夫、何をすべきか分かってる、この高さなら…楽に死ねる」
「あ、そうだ、覚えてる? 私達2人の、初めての夜の事」
「なんだよ急に」
「別に…凄い楽しかったなって、こんな事になるなら、もう少し誘って、なんなら時間があれば今からでも…なんちゃってぇ ははは…どうしたんだろう私、そもそもありえないよね、こんな体になった私の事なんて女として見れる訳無いもんね〜」
「そんな事ねぇよ」
たった数秒、それでも2人にとってかけがいの無い大切な時間、心に深く刻まれた大切な瞬間だった。
「ありがとう。あ、関係ないんだけどさ、そう言えば、方言出てないね」
「あぁ、こんな状況やしな、そもそもこっちに来てから意識せんとでらんくなったんよね、やけん家族に電話した時もたまにそれイジられる」
「永遠の家族ってほんと仲良いし楽しそうだよね」
「まぁ、子供の頃はしょちゅうくらされたけど」
「ふふ、タフな生き方して来たんだよね〜永遠は」
…………
「それと永遠、さっき言葉遮っちゃったよね?」
「俺の? なんかゆったっけ?」
「えっと〜そもそもどうしてこんな状況になったのか、希はどうしたか とか聞きたかった?」
「まぁ知りたいよねぇ うーん、これだけ言っとく……永遠は私みたいにバカじゃ無いから…後悔しない様に…自分のためだけに生きて…じゃあね」
「それどう言う意味…若菜!」
その後は予定通り職員用の扉から一階まで降りて行った、4人でここを目指したはずが気付けば1人、3人もいなくなった、厳密に言えば初めから
「おう、遅かったな永遠、まぁ別に心配はしてなかったけどよ、もし会えなかったらってちょっと不安になっちまったのは事実だな」
いつも聞きなれている声が扉の方から聞こえて来た、間違いなく
「律儀に待ってくれてるなんてお前らしいな、他の連中もどこかに隠れてるのか? な訳ないよな、どうせ置いて行かれて…」
「は? なんだよ、その怪我…なんで全身血だらけなんだよ!」
「怪我? 何言ってんだよ、怪我なんてヌルいもんじゃないよ、もう終わりさ……そうか、その様子だと若菜もダメだったんだな」
「なんで、何があってこんな事に」
「全部あのクソ女の仕業だよ、俺がこうなったのは」
「希の事言ってんのか?」
「そうさ、自分の命が最優先、それは別におかしくもなんともない、むしろ普通、でもアイツは利用できるものはなんでも利用しやがる、俺の足を撃ち抜いて囮にしやがった!」
「嘘だろ、なんで」
「赤の他人を助けようとした俺を邪魔だと思ったんだろ、だから利用して消したんだよ、俺達はあんな奴と今まで一緒に活動してたのかよ」
「へぇ〜お前も泣くんだな、それよりも聞けよ、イテテテ……最悪な結末になっちまったけど、お前に会えて幸運だったぜ、ちょうどお前にしか頼めない事があったんだよ」
「頼みって、これがどうした?」
「ここに来て鈍感なフリか? 分かるだろ? そいつで俺を殺してくれ…俺を人間のままでいさせてくれ、お前にしか…頼めない 外すなよ?」
流石の
「へへ、お前も迷う事あるんだな、なんか親近感……さぁ撃ってくれ、後はその引き金を引くだけ、お前が来てくれるって信じてたから俺は今もこの状態でお前と話せてる、もう限界なんだよ…」
…………
「まぁ、どうせ別れるならもっと話したかったよな、お前の事もっと知りたかった、大人になってお互い別々の場所で仕事をして、たまに飲みに行ったりとかしたかった、それはもう不可能、再開していきなりお別れなんて酷すぎるよな? ごめん、全部お前に押し付けて、結局俺はお前みたいなヒーローになれなかったよ……俺の分まで生きてくれなんて我が儘は言わない、お前は自分のために生きたい様に生きてくれ! そんなお前の事を俺や若菜は尊敬してた…そんな顔すんなよ、前向いて行こうぜ!」
…………
(クッッ!!!)
銃声と共に大量の血と脳が飛び散った、
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