第6話 非情
フロアに鳴り響くけたたましい音を止めるべく
「確かこれは校内システムと連動してるから大元を止めれば……電波が拾えれば楽だけどそれよりも職員端末がどっかにあるはず」
ここは学生達が勉強や校内システムにアクセスする際に集まる、そのため数多くの端末が置いてあり広さもそこそこある。
「ここ来ねぇからわかんねぇ、確かこのフロアを管理してるサーバーに繋がる端末があった様な…これかな?」
なんとか目的の端末を見つけ出し自身の端末と接続した、本来許可されてない端末を接続しても弾かれるだけだが、
ふと横に目をやると
「おい何やってんだ! 早く先に行ってろ!」
「分かってる! 分かってるけど百合香ちゃんのお母さんが 後ろ!」
「!?」
起き上がった化物は
「ふぅ よかった…うだうだしてられない、行きますよ! 百合香ちゃんもついて来て!」
立ち尽くす百合香ママの腕を掴み走り出した、
「一度下がりましょう、出口はここだけじゃありません」
「いや、無理だね」
「永遠?」
「私がなんとかして食い止めるから永遠はその間に扉を開けて、出来るでしょ?」
「そんな無茶な作戦、俺が出来るかどうかじゃなくてお前次第だぞ」
「大丈夫、私に任せて」
2人は作戦を立て実行しようとした時、突如
「何やってるんですか!? 私が引きつけるのでその隙に!」
「あんた達は理想でしか物を語れないの? そんな甘ったるい青春ごっこやる趣味なんてないのよ、大事なのは効率よく自分を守る事よ!」
次に
投げ飛ばした…
(え?)
…………
「さよなら…
…………
(お母…さん?)
…………
バカな
…………
バカ
「がぎゃあ!!」
先程までとは違い、生々しい匂いと共に校内に響き渡る不快な音、化物達は天の恵みを受け取る様に
「お……かぁ…いい子…す………から……
小さな手を伸ばし必死に助けを求めた、しかしそれが届くことはない、
「出口はすぐそこね! 生き残れればいい事なんていっぱいあるのよ〜♡」
「何よこれ! あんたらよくも騙してくれたわね! 人を弄んで楽しい訳!? ほんと有り得ない! 死んで償え!」
「あのクソが」
「じょ、冗談じゃない! 来ないで! こんな所で死ねる訳ない、あんたら! 早く助けろ!」
当然
「私が百合香ちゃんに群がってる奴らを蹴散らすから永遠はあの人を助けに行って」
「は? なんで俺があいつを、それに2人なら別のルート探せるだろ」
「ダメ! 命は平等…絶対助けて私の前に連れて来て」
「やっと来たわね、早くこの扉を開けなさい! 奴らは鈍いからこっちに来る前に開けるなよ!」
「そんなに騒ぐ元気があるなら後ろのやつの相手でもしてなよ、前しか見えないならこの先死ぬよ」
「え?」
「なんでよ!
隅に追いやられ逃げ場のない
「うがぁ」
「ぎゃがあ」
聞こえて来たのは化物の鈍い声、ふと顔を上げると、自分を取り囲む化物達の向こう、次々と倒れて行く化物、
「イタィ! 邪魔! 離せ! …見えた! 私を助けてくれる人が! 私の王子様! さぁ…この手を掴ん……
腕を掴まれ、噛みつかれながらも
(…? 痛い? 蹴られた? なんで)
「きゃああああああああ!!!!!」
待望の
「人間のまま死ねると思うなよ…下衆が」
すぐに悲鳴は消え、咀嚼音がフロアに響き渡った。
〜〜〜〜〜〜
「なんで助けなかったの?」
扉をハッキングし解錠、そして残りの化物を始末したタイミングで
「半分以上食べられてるよなこれ、流石にこの状態だと化物にすらなれねぇかな」
「質問に答えて、なんで助けなかったの?」
「意味のない事はしたくないんでね」
「意味? そんなのいくらでもある、この人がした事が許せない、この人には苦しみが必要なの、こんな所で死んだら意味ない!」
「それならもう終わってる、絶望に叩き落とされた気持ちは身を持って知れただろ」
「それじゃ足りない! もっと…もっと必要なの! 泣いて喚いても足りない苦しみが」
「馬鹿馬鹿しい、そんな無駄な時間使うほど暇じゃないんだよ」
「見なかった?
…………
「だから時間の無駄だって言ったんだよ、お前、
「な!? 何言ってるの…」
「ほんと嘘が下手だな、最後ぐらい、人間のお前と2人っきりで居させてくれよ、そのために1秒でも時間が欲しい」
「永遠……私…」
「ごめん」
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