第5話 受け継ぐ覚悟〜受け止める現実
「その時計…お前が若菜にあげた物じゃ…さっき希と一緒にいたのは若菜じゃなかったのか?」
「確かに若菜の時計だとは思う、けどよく考えてみろ、身につけてる物の1つや2つ落とすなんて珍しくもない、考えるだけ時間がもったいない」
下を向いたまま話す
「永遠! そっちじゃない、行けよ! 助けに」
「何言ってんだよ、こんな時にも冗談か?」
「お前って動揺したらそんなに分かりやすいんだな、ギャップ萌えってやつか?」
「…………」
「この時間がもったいないんだろ? だったら早く行け、合流地点は駐車場、お前なら大丈夫、たまには俺の事も信じてくれよな、もう無理はしないさ、ヘマしたら島さんに合わせる顔がねぇから」
「ありがとう、先に行っててくれ、すぐ合流する」
お互いに拳を合わせ別々の方向へ進んだ、
血痕が途切れ辿り着いた先は図書室、扉を少し開けて中の様子を伺うと、本はバラバラに散乱、至る所に血が飛び散ってはいる、今の所人も化物も見えない、細心の注意を払い中を見て回ったが誰もいない。
最後に職員用の休憩所へと向かった、こちらは先程までとは違い無駄に綺麗に整理されている部屋を出ようとした時、複数あるロッカーの1つに血が付着している事に気が付いた。
この血が先程の女性の物なら…もしも奴らに噛まれた際の傷であれば襲って来るかもしれない、警戒を強めゆっくりと扉を閉じ部屋に入った。
しかしそれはフェイクだった、綺麗に整頓された部屋、一箇所だけ付着した血痕、視線を、意識をそちらへと集中させる、前方への警戒が強まれば強まるほど後方の警戒が薄くなるその瞬間に狙いを定め、開いた扉を利用し隠れていた人物は
気配に気付き後ろを振り返った、頭上目掛けて振り下ろされた木材に対し左腕を犠牲にいなしバランスを崩させてからすかさず首根っこを掴み床に押し倒した。
「離せ! この!」
「若菜?」
「え?」
「お前なんでこんなとこに…
「おねぇちゃんを離せ!」
その時脳震盪を起こしかねない強い衝撃が
「百合香! 隠れてなさい!」
「でもおねぇちゃんが!」
「あ、落ち着いて下さい! この人は私の友達です」
…………
「あ! うちの娘が! ほんとにごめんなさい! 勘違いしちゃったみたいで」
図書館の非常口から外へ出ようとしたが何か挟まっているのか開けられなかったので仕方なく他をあたろうとしたが、外から足音が聞こえて来たためこの部屋に隠れたと言う。
「それでともりんは職員用駐車場に行ってるんだよねぇ 今から追いつける?」
「最短で行ければ問題ないけどまず無理だと思う、結構この階にも集まって来とるし、だからと言ってわざわざ危険な場所を歩く必要はないんじゃないか? 合流出来るのが1番いいけど安全策を取ろう、4階にある職員階段を確認してみようか?」
「そだね 百合香ちゃん、もうちょっとの辛抱だよ 怖くない?」
「うん、おねぇちゃんとお母さんがいるから、それと、さっきはごめんなさい」
「まだ8歳やっけ? しっかりしとうね、謝る必要ないよ、君は若菜やお母さんを守ろうとした、誰にだって出来る事じゃない」
「永遠、永遠は最後の時まで、ずっと私のそばにいてくれるよね?」
「あぁ…約束する」
なるべく奴らと対峙しないルートを進んで来たが化物が5体ほどで道を塞いでいる、ここはどうしても通らないといけない、悩んでいると
ちょうど化物達の中心にハンカチが落ちたすると化物達は狂った様にハンカチに反応し群がり始めた、一箇所に集まり夢中になっている所を
「イッテェ…いくらこいつらの骨が脆いって言ってもいつかこっちの骨が折れそう…お前は大丈夫そうやね、空手の全国経験者は違うねぇ」
「我慢我慢、少しの辛抱だよ」
「2人ともすごい!」
「さぁ、先に進みましょう」
再び4人は進み出した、
少し腑に落ちない部分もあったが、今はそう言う事にして進む。
「そう言えば、百合香ママさんはどこか怪我してます? その血は奴らの物ですか?」
「怪我は大丈夫…この血は私達を守ってくれた夫の物、ここの卒業生でたまたま展示会があったので見に来たらこんな事に……」
「随分早い時間に来ましたね」
「ついでに昔お世話になった人に会いたいって言ってたけど…今頃2人とも天国で会えてますかね」
「なるほど…島崎先生の事ですか」
「はぃ」
それでも皆先生を慕っていた、特に
そうこう話す内に目的の場所まで後一息の所まで来た、かなり遠回りしてやっとここまで来た為、もう
それでも4人に緊張が走る、辺りに倒れている死体がいつ動いて来てもおかしくない、最新の注意を払い一歩ずつ歩みを進める。
…………
…………
…………
「ぐがぁああ!!!」
その時、
踏ん張ろうとしたが、床に溢れた血液により足が滑りそのまま背中を後方の展示用ショーケースに強く打ち付けた。
「いったぃ…百合香!」
「お母さん! ごめん!」
「いいからでかい声出さないの、静かに!」
ジリリリリリリリリリリ! と突如けたたましい音が校内に鳴り響いた。
「え!? 何!? 非常ベル!?」
「まずい、ショーケースのブザーが鳴りやがった」
「まずいよ永遠、どうしよっか」
「先にこっちを止める方が早い! 若菜はそこに這いつくばってる
このままでは奴らが集まりハッキングの時間が確保できないと考え、
「あの、ごめんなさい、私が騒いだから」
「大丈夫だよ百合香ちゃん、私達なら心配ない、先に出口まで行きましょう、さあ、
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