第3話 足りない血筋



 東京都千代田区霞が関。警視庁内の一室では、男が二人、珈琲片手に話し込んでいる真っ最中であった。


「左遷されるはずだった新人の上司ってだけで、なあんでオメーがここに来ちまうかな」


 エラの張った輪郭に、一重の細い目。昨日に散髪してきたばかりだという短い髪を撫でながら、巡査長の吉田克司は吐き捨てた。

 聞き捨てならんと立ち上がった男が一人。階級同じく巡査長の高岡真澄は、吉田の近くへ椅子を転がして座った。顔を近づけ、睨みつける。

 高岡はラクの上司にあたる男である。


「部下の代わりに寄こされたまでです」


 高岡のぴんと張った声が嫌なのか、吉田は顎を引いて距離を取る。負けじと高岡は椅子を転がし、吉田を追いかけた。

 幅の広い二重に釣り上がった目。高岡の目付きはしばしば、他人を威圧する。


「吸血鬼対策課は組織犯罪対策部と捜査一課からの人員で創設されています。誰が来てもおかしくない。私じゃ何か不都合なことでもありますでしょうか」


 吸血鬼対策課。略して鬼対。近頃明らかになった吸血鬼に関する犯罪を取り締まる、警視庁内部に創られた新たな組織である。

 一課からの増員で鬼対に配属予定だった新人が急遽来られない為、上司であった高岡が代わりに配属されることになった。身代わりの左遷。本来、鬼対に配属されるのはラクだったのだ。

 鬼対に配属される前、吉田は組織犯罪対策部に、高岡は捜査一課にそれぞれ属していた。

 はっきり言って、組対と捜査一課の仲はよろしくない。吉田と高岡は何度も顔を合わせていて、その度に口論になっていた。主にネタの取り合いが原因だった。

 まさかこんなところで顔を見ることになるとは、と吉田は思っていたのだった。お互い左遷されてきた身である。口論も何も、これからは同じ穴の狢になるというわけだ。吉田は脱力し、椅子に背中を預けた。

 高岡は窓を眺め、本日も登庁していない部下のことを思った。

 些細なことで吸血鬼だと周りにバレてしまった高岡の部下は、公安の手により潜入捜査という体でとある宗教団体に預けてある。高岡を含む捜査一課の数名以外に、ラクが吸血鬼だと知るものは少ない。厳重に緘口令が敷かれていた。


「おまえさんの部下んとこよ、公安まで来たってんだろ」


 吉田の溜息は深い。五十を過ぎた途端に濃くなった額の皺が、吊り上がった眉頭に圧迫され、波打っていた。

 高岡も負けじと眉間に皺を寄せる。


「よくご存じですね」

「鬼対じゃ、お前んとこの新人が公安に連れてかれたって話題で持ち切りなわけよ。あいつら、ここの地下にきな臭い部屋持ってんの、知ってっか? ラクっつったっけな。そいつもそこに連れていかれたって、見たやつがいるんだよ」


 拷問。

 高岡の頭に浮かんだ二文字は、真面目で潔癖で率直な性格をしている高岡の脳内を煮え滾らせるには十分過ぎた。


「誰に聞いたんですか。見た人は、誰ですか。ここの、鬼対の人間でしょうか。私はラクが公安の指示に従って、潜入したとしか報告を受けていませんが」

「落ち着け、高岡巡査長。見聞きしたのは鬼対の人間だよ。そんでもって、そいつは俺の部下。外部に情報を漏らすような奴じゃない。安心しろ」


 警察のメンツは守るさ。そう続けた吉田は、冷え切った珈琲を口にした。

 高岡は決して、警察の面子がどうとかと考えたわけではない。素直に、部下であるラクのことを心配したのだ。自分に似て、真面目で熱くなりやすく、軽はずみな言動をとることがあるが、吸血鬼という種族の違いに気が付く隙が無いほど捜査一課に馴染んでいた。     

 高岡はラクを高く評価している。


「お前さんが部下を隠した宗教団体……ありゃ、ガサ入れの対象になってたとこだ」


 流石に近すぎると、吉田は高岡の座る椅子の足を蹴飛ばし、キャスターを転がした。高岡は離れまいと踏ん張って耐える。


「ガサって、組対がですか?」

「金の動き辿ってったら、行きついちまったんだよ。このまま潜らせてると、いずれバレちまうかもな」

「なんとかならないんですか」

「俺はもうココの人員だ。組対に戻ってどうこうするってのは……」


 開いた窓。ぬるい風が入ってきて、高岡は冬の終わりを感じた。日の落ちた夜でも、これだけ暖かければ、もう冬は居座れまい。

高岡はすっくと椅子を立ち、窓を閉めた。外からの音が聞こえなくなり、部屋は物が多くて散らかっているものの、本来は静かなところなのだ。


「引き戻します」

「そんな簡単に帰ってこられるとは思えんがなあ。公安の唾付きだぜ。あいつら鼻が利きやがるからな……連れ戻したところで、またどっか連れていかれるだろうよ。二度と帰ってこられない……深いとこに」

「じゃあ、一体どうすれば……」

「悩むなよ、簡単なことだろうが」


 吉田は、以前やめたと言っていた煙草を口の端に引っ掛ける。もちろん屋内禁煙の為、火はつけずに咥えるだけ。


「俺らで取り締まるんだよ。組対より公安より早く、俺たちが手を付ける」

「先に手を付けたところで、掴んだネタごと持っていかれるのではないでしょうか」

「その教団に鬼がいることはもうわかってる」


 胸ポケットから数枚の写真を取り出した吉田は、投げ捨てるようにテーブルへ置いた。

 写真は、首輪に鎖を繋がれた人間と、胸元に十字架を掛けた人物。他に、死体を運ぶ人物数名が収められていた。 死体を引き摺っている数名は皆一様に防護服のような白一色の装いで、胸元にプリントされた十字架や背後に立つ人物の身に着けているカズラ、神父が着るひらひらと服にしては頼りない布切れなのであるが、それを見ない限りはどこかの保健所が除染作業をしているように見える。ニュースでたまに目にする、鳥インフルエンザの殺処分作業に似ていた。


「巷で噂の吸血鬼狩り。あいつらは必ずツーマンセルらしくてな。実際に仕事をするのは人間だってのに、何故か相棒が吸血鬼なんだよ。こっちの首輪のが吸血鬼だな。住民が不審者がいるとかって警察通報用電話をかけてくることもあるんだよ。現場に行くと、たまに出くわす」

「現行犯で引っ張ってくることは?」

「まあ、何度か引っ張ったことはある。大抵は逃げられるが……二人組で行動しているのをゲロッたやつも、元狩人だった」


 もう死んじまったが、と吉田は指さしていた写真の人物を、首輪の男から十字架を提げた男に変えた。彼はもうこの世にいない。


「背後に写っているコレは、教会ですか。ラクが潜ったと報告を受けた教会に、よく似ている……」

「ご名答。そんなわけで、今すぐにとはいかねえが、ガサ状出すための証拠は持っている」

「私たち吸血鬼対策課が先に着手し、吸血鬼関連の事件だと報告してしまえば、金がらみの捜査をしている組対も公安も手を引くんですね?」

「おー、頭良いじゃねえか」


 それはあなただ、吉田巡査長。頭の悪そうな柄シャツに、趣味の悪いびかびかと光り輝く腕時計を見ながら、高岡は言葉を飲み込んだ。

 どうしても煙草を吸いたいのか、吉田は天井にくっついている火災報知器を睨んでいる。部屋の壁は汚くても、火災報知機は真新しい見てくれをしていた。きっちり作動するだろう。


「……吉田巡査長。貴方は何故、私の部下を連れ戻すことに協力的なんですか。貴方はその、恐ろしいとは思わないんですか」

「吸血鬼がか? 馬鹿だな、俺の嫁さんのが怖えよ。敵に回しちゃいけねえのは吸血鬼でも公安でもないぜ、女だよ」


 ガハハと豪快に笑った吉田に、高岡は少し安心していた。





 輸血パックが届いていないのだと、頭を抱えるドクターの旋毛を、左回りか、とラクは眺めていた。


「今月に入って一度も配達人が顔を見せていないんだ。なにかあったのかもしれない……」


 医者であり神父でもある男は、傍らにある冷蔵庫まで椅子のキャスターを転がして近付くと、扉を開けて空っぽの中身を見せた。

 覗いてみたラクは、先月はそこから十二個も貰えたのになぁと残念そうに首を横に振る。

 器用にボールペンをくるくる回していたダリアが、かちゃんと机にペンを落とした。ドクターが縋るような目をしたからである。


「ドクター。おまえが次に何を言うかは大体予想がついている。だが、すまないな。俺は動かんぞ。他を当たれ」

「そう言わずに頼むよ。うちの教会には、まともに動ける者が他にいないんだよ」


 珍しく結んでいないドクターの髪は、下ろすと腰のあたりまであった。その髪をぐしゃぐしゃにするように頭を掻きむしりながら、ドクターは名簿を捲っては唸るのを繰り返した。名簿はいつから使っているのやら、紙の至る所が破け、変色していた。

 ラクはちょこちょこと静かにドクターの背後に回り、彼の手元を覗き込んだ。 部屋の汚いヤブ医者の字は、至って普通。少し行書気味だが、読めないほど汚くはなかった。ラクの書く字に比べたら、綺麗な方である。


「へえ、結構いるんだな。俺たちの他にも」

「いるにはいるよ、勿論。だけどねえ、ちょっと困ったことに……今動けるハンターがいないんだよ。輸血パックが無いせいでバディの回復が間に合っていなくてね……」


 バディの吸血鬼は歩く救急箱。ハンターの殆どはバディを物として扱う。 吸血鬼を狩る際に、多少怪我をしても保険があるからと無茶な狩り方をするハンターが多いのである。

 土手っ腹に大穴を開けて、息も絶え絶えバディの首に噛み付く。それが現在のハンターたちの殆どだった。そのため、バディが貧血気味である場合、ハンターが十分な回復を行えないのは当たり前のことなのだ。 バディの吸血鬼の健康あってこそのハンター。皮肉なもんである。その健康は同族殺しのためだけに必要なのだから。

 ドクターは不思議そうな顔をしているラクに笑いかける。分度器なんかで測れば、毎度同じ角度だけ口角を上げているのではないか。そう思わせるほど、造りの良い笑顔。


「どうせダリアのことだから、君のことを現場に連れて行かないようにしていただろう? だから君はまだ、他のコに比べて体力に余裕があるはずだ」


 成る程、という顔をしたラクの額をダリアがつついた。余計なことを言うんじゃないと、目が語っていた。


「俺のご飯が今後無くなるかも知れねえんだよ?」

「知るか。ネズミの血でも啜ってろ」

「じゃあアンタ、ネズミの血を啜った俺の血を吸うことになるけど、いいわけね?」


 ダリアはだらしなく座っていた一人がけのソファから立ち上がり、ドクターの目の前に座った。


「で、ドコなんだ」

「【ア・プチ】というレストラン。一応言っておくけれど、そこの従業員はここへ配達している物が輸血パックだと知らないんだ。教会での炊き出しに使う食料ということになっている」

「ほお。レストランか。てっきりあんたのツテで病院から貰ってると思っていたが」

「直接貰っては足がつくだろう? 色々と遠回りしてここまで来ているのさ」


 走り書いたメモを、ドクターはダリアに手渡す。ダリアはメモを読んだあと舌打ちをして、ビリビリに破いて床に捨てた。ダリアにとって都合の悪い指示内容が書かれていたのだ。

 一連のダリアの様子を見ていたラクは、そんなところに捨てるんじゃありませんと一言言いたくなったが、元々汚い部屋なのだし、片付けるのは自分ではないため、口を開くことはなかった。床には既に沢山の紙屑が落ちているのだから。


「ラクくん、ちゃんと連れて行ってね」


 分かったと返事をする男に満足したドクターは、診察台に頬杖をついてフフっと息を漏らし笑う。

 こうなることがわかっていて、今まで俺を現場に連れて行かなかったのか、と感心したラクがうんうんと頷いたのを、ダリアはキッと睨みつける。


「本当に使えないと判断したから連れて行かなかったんだ。勘違いするな、馬鹿」


 大人しくしてろよ。そう呟いたダリアを、ラクは飛びつき抱きしめ、声を出して喜びたい気分だった。

 ここ何日と、屋敷に篭りっぱなしであったのだ。やっと昼間に外へ出られる。喜びが溢れんばかりなのだが、飛びついては流石に殴られると思ったので、なんとか我慢した。

 微笑ましくその様子を見守っていたドクターは、机の引き出しから車のキーを取り出すと、診察台に置いた。

以前、ダリアが死体を運んだ際に使った車のキーだった。


「調査結果は終わり次第、直接私に報告してほしい。本当だったらついて行きたいのだけど、私は今日これから板金屋の田所くんのところに行かなくてはならなくて」


 板金屋の田所という男は、主に教会が使用する車の整備や清掃を担当している人物で、短気で潔癖症の、面倒くさい男。ダリアの愛車を清掃したのも、この田所である。

 粗雑で大雑把なドクターとダリアにとっては、あまり顔を合わせたくない人物だった。 うっかり廊下で出くわしでもすれば、やれ服装が乱れているだの、やれ仕事の仕方が汚いだのと小言を頂戴するからである。姑よりうるさいのだ。

 俺について何か言っていたに違いない。ダリアはスンと鼻を啜る。


「田所か。車に関して何か言ってなかったか?」

「左後ろにぶつけた跡があったって怒ってたかな。あと彼、キミがバディを決めたって気付いてたよ。車の臭いが違うってさ」

「相変わらず気持ち悪いな」


 いくぞと言ってダリアは鍵をポケットに入れ、そのまま手を突っ込んで歩き始める。

 ラクは田所ってどんな人なのだろうと考えながら、ダリアの後ろをついて行った。この男が嫌うくらいの人物だ。口煩くて、俺に似て潔癖症なのだろうと。

 ラクの首にはもう、鎖はついていない。それでもラクが逃げないのは、とある目的のため、それだけだった。 昼間で、人の目につく場で目立つことを避けたいからなのか、繋いでおかなくても大丈夫だと判断したのかはラクには分からないが、犬のような扱いを受けずに済むというだけでだいぶ気持ちが楽だった。

 協会の裏の駐車場。ド田舎のショッピングモールの駐車場と同じくらい広いが、車は一台しか停まっていない。黒塗りの普通車。クリーニングより帰ってきた、ダリアの車である。

 ダリアはロックを解除して、運転席に乗り込んだ。ラクは反対側の助手席へ。


「なあ。俺ってそんなに匂う?」

「……臭いか臭くないかってことか?」

「それもあるけど、やっぱ人間と吸血鬼じゃ匂いの感じ方が違うのかなって。ほら、前の蜘蛛女のときにさあ。俺にとって同族の匂いってのは、鼻が捥げそうなくらい臭いんだけど。アンタ、感じなかったんでしょ?」


 蜘蛛女とはラクが勝手につけた渾名で、初仕事で行ったスナックにて狩り殺した、天井に張り付き移動していた女吸血鬼のことである。

 エンジンをかけたダリア。隣のラクがきちんとシートベルトを装着したのを確認してから、アクセルを踏んだ。 ぐんと前進した車体についていけなかったラクは、前のめりになっていた体をシートにぶつける。


「俺たち人間には吸血鬼の匂いはあまり分からない。何となく鉄棒を触った後のような臭いがする……気がする」

「曖昧じゃね?」

「あまり分からんと言ったろ。体臭を気にする歳でもないだろ」

「だから体臭ってか種族臭? まあ、臭ってなければいいんだよ、べつに」


 腹が減る、魅惑的な匂い。思わず喉を鳴らし、唇を湿らせる。そんな匂いだと言えば、怒るだろうか。ハンドルを握ったダリアは、横目でちらりと吸血鬼を盗み見た。

 バディの吸血鬼の血を摂取したハンターは、高確率でバディの血に依存する。狩場で怪我をしても大丈夫だろうという慢心や、バディの吸血鬼がいないと外へ出られなくなるといった精神的な依存。ダリアはおそらく、バディを美味しそうに思ってしまう、カニバリズムに似た依存傾向が出ていた。

 青く血管の浮いた白い首を首輪で隠したのは正解だった。鎖の付け外しの時、何度その首筋に歯を立てようとしたことか。

 運転中にも関わらず、ダリアの頭を占めていたのは今晩の飯のことだった。

 ダリアはもとより、今回の調査に乗り気だったのである。

 ダリアにとって現在のラクは、喉から手が出る、いや、胃袋が出て直接迎えに行くくらい美味しい物に見えている。その美味しそうなものがやせ細っては、勿体ない。輸血パックが届いていないという報告を聞いてすぐに、俺が何とかしなければと思い至っていた。


「あー、ダリアさんよ。今のとこ、右だったぜ」

「……もっと早く言え」

「Uターンできるだろ、その辺で」


 ラクが伸ばした腕。初めて会った時よりがっしりとしていて、元警官だというのも頷けるほどに健康的。筋肉により圧迫されているのか、皮膚を盛り上げている静脈。齧り付けば、噴水のように血が流れるだろう。

 急ブレーキ。ダリアは車を突然停止させた。これ以上、この距離を保ったままの運転は危険だと判断したのだ。


「あ、あぶねえ……何してんだアンタッ」

「車はそこのパーキングに停める。そこからは歩きだ」

「急ブレーキしなくてもいいじゃねえか」


 パーキングに車を停めて車から出る際、ラクはぶつくさと文句を言って膝を擦った。勢いよくぶつけてしまったのだった。サッカー選手さながらにアピールをするラクを置いて、ダリアはさっさと目的地に足を進めていた。置いて行かれまいとラクは小走りになり、隣へ急ぐ。

 隣の美味そうな男のことをなるべく考えないようにしながら、ダリアは目的地の看板を確認した。レストラン【ア・プチ】。イタリアンを中心に、そのほか創作料理を提供する飲食店。チェーン店はなく、ここ新宿にある一店舗のみの営業。人気があるようで、昼のピーク時間を過ぎた現在も、店内には数名の客の顔があった。

 扉を開いたダリアの後ろ、ラクは目をかっ開いて固まっていた。臭いが、するのだ。扉を開けたその瞬間から、辺り一面より吸血鬼の匂いが湧き出てきた。ここは吸血鬼の腹の中だと思えるほど、その匂いは強かった。

 ラクを見ようともしていなかったダリアは、バディの動揺に気が付かない。客だと思って出迎えに来た店員に事情を説明していた。


「ああ、社長のお客様ですね。事情は聞いております。こちらです」


 店員の作り笑いにドクターのほうがマシな笑い方をするなと思いつつ、ダリアはラクを連れて店の奥へと進む。店員は階段の前まで行くと、ここを上がってすぐ右の部屋ですと言ってその場を去った。客がいるため、早く通常の業務に戻りたかったのだ。

 案内をしてもらった礼もそこそこに、ダリアは階段を進んだ。一段二段三段。上がっていくほどに、ラクは警戒心を強めていった。濃くなる、あの香り。


「ダリア」

「後にしろ」

「この店、やばい」


 ラクの放った言葉の意味を理解しているのか否か、ダリアはわかったとだけ言って、階段を登り切った。

 店員に言われた通り、登ってすぐ右にある扉を三回ノックする。中から「どうぞ」と女の声が返ってきた。


「こんにちは。お忙しいところ申し訳ありません。東京支部からの使いで来た者ですが」

「ああ、教会の方で?」


 女の見た目はおそらく二十代後半から三十代半ばといったところで、明るい茶色の髪を後頭部で一つに丸めた清潔感のある髪型だが、服装は秋葉原の客引きをしているコンカフェ店員に似た、モノクロのメイド服。一癖ある社長だなとでも言いたげなダリアの視線にラクは頷く。

 しかし、社長と思われたそのメイド服の女は社長は留守にしていると言った。ならばこの女は誰なのか。店員なのかすら怪しい。


「我が社が慈善事業として行っている、教会での炊き出しに使用する食材の件でございますでしょうか」


 どうやら社員に間違いはないらしく、ダリアは頷いておいた。コンセプトは皆それぞれ違うものである。挨拶の元気すぎる居酒屋のようなものと思えば、違和感も拭えよう。


「おかけください」

「はい」


 ダリアとラクが座った目の前にあるローテーブルを挟んで、メイド服の女は腰を下ろした。近付いてみて二人は気が付いたが、女の目は不思議な色をしていた。ブルーグレーが地の色で緑も少し混じっている。そこへ輪っか状に明るい茶色、オレンジにも見える配色。アースアイと呼ばれるものだった。じっと見ているのも失礼なため、ダリアはさっと目線を落とし、いつの間にか用意されていた珈琲を見た。見つめていると、吸い込まれてしまいそうなほど綺麗であった。


「副社長の天羽と申します。社長の月宮より伺っております」

「社長さんからはもう事情をお聞きになっていますでしょうか」


 あのダリアが敬語を使っている。ラクはぱちっと目を開き、一瞬、臭いのことなど忘れそうになる。いかんいかん、と頭を軽く振って、警戒を再開する。目の前の天羽という女。この女からは臭いが強かった。うまく香水などでカモフラージュしているのだろうが、ラクの鼻は誤魔化されなかった。

 女、同族か。ラクは天羽を睨みつけた。天羽は目線に気が付いていて、余裕気ににっこりと笑う。美しい笑顔であるのに、ラクの背中にはぷつぷつと汗が浮いた。ラク本人にも、冷や汗の理由がわからなかった。


「ええ、もちろん。その件で、月宮より一つご提案が」

「どのようなものでしょうか」

「はい。これまでは専属の配達員をこちらでご用意させていただいておりましたが、昨今の不景気も影響して……と申しますと大変お恥ずかしいのですが……」

「こちらから受け取りを、と?」

「はい。あくまで提案でございます。一度持ち帰って、神父様とご相談ください。今ここでお返事をというのは難しいと存じますゆえ」


 ダリアは暫く黙る。じっと腕を組み、天羽の手袋を観察した。人間が腕を組む場合。その場を終わらせたいという心理が働いていると見て良い。ああこの人、早くこの場を離れたいんだな。相手が吸血鬼と気が付いたからなのか。それともただの勘なのか。どちらにせよ、正しい判断であった。


「わかりました。それでは今日はこれで失礼いたします。またご連絡を」

「承知いたしました。本日はご足労頂き、大変申し訳ございませんでした。今度いらっしゃる際にはぜひ、下のスペースでお食事でも。その時には月宮も同席してよろしいでしょうか」

「ええ、楽しみにしています」


 腰を上げたダリアに従って、ラクもソファを離れた。天羽は出ていく二人を見送りに後ろをついて来ていたが、店内から出なかった。店の扉の近く、日の光が差さない陰になっているギリギリのところを動かないまま、別れの句を口にする。黒だ。ラクはパーキングに行く道すがら、ダリアに話を付けようとした。


「ありゃ吸血鬼だって」

「……」

「いいのかよ、狩らなくて」

「俺は確証を持つまでは殺さん。人間を害したという事実に基づき、その命をもって償わせる」


 それって遅いんじゃないの。ラクは右手で胸元に降りた長い髪を背中へと払う。


「……俺はどうなのよ」


 ラクの罪とは。そもそも、ラクは何故、警察という組織から追い出されるようなことになったのか。吸血鬼と露見してしまったのは、ラクのとった一瞬の行動。

 原因はラクがまだ潜入捜査を行う前、警察の花形ともいわれる警視庁刑事部捜査一課に所属していた時のこと。先輩刑事を庇ってつい、吸血鬼の特徴である吸血を行ってしまったことにあった。


「お前は、殺したわけではないからな。教会の慈悲だ」


 死んでいない。ラクが血を吸った人間は死んではいないのだ。瞬間的に血液を奪われ、失血性のショックに見舞われたものの、輸血により回復している。


「仕方のないことだったと聞いている」

「あんたどこまで知ってんの」

「警察に知り合いがいてな」


 ダリアは多くを話さないきらいがある。言葉が足りないと批判されることがしばしば、しかしラクにとってはありがたいことだった。今のラクの存在は、言ってしまえば警察の腫物、教会にとっては脅威。突けば埃の出るボロ人形。少しでも好奇心の強い人間がこの場にあれば、なぜ殺されるかも知れないのにこの男に協力するのか、やら、人探しとはいったい誰を探しているのか、などと訊くだろう。ダリアは絶対にそのようなことを口にしない。


「へえ。友達いるんだ?」

「三十三年生きてるんだ、友人くらい沢山いる」

「……ふうん」


 三十三歳か。俺と四つしか変わらないのか。二十九歳のラクは、ダリアの落ち着いた容姿と思っていたよりずっと若い実年齢にギャップを感じた。

 ダリアはニヤッと笑い、パーキングの利用料を支払いながら「意外だったか?」と言う。友達がいることに関してか、年齢に関してか。

 百円玉を切らしていたため、ダリアは尻のポケットに入れていた皺だらけの千円札を、節の目立つ指で撫でて伸ばして精算機に食わせた。遠くでウンとロック版が首を垂れる音がする。


「よく言われる。老け顔」


 釣銭を摘まんだダリアは、そいつをラクの胸ポケットに突っ込んだ。 ラクは今日も、ダリアの服を拝借していた。珍しく、色は白。


「いらねんだけど」

「財布がないんだ。家に忘れたらしい」

「あ? 免許は」

「車に置いてある」


 少し喋ったかと思えば、また静かになる。緩急の激しい、極端な男。静かな車内に、うとうとしながらラクは思った。





「受取人を差し出せって?」


 ドクターは何やら観察しようとしていたのか、顕微鏡にプレパラートを設置する手を止め、振り向いた。

 冷めきった珈琲を手に、ラクは頷いて返事をした。ドクターの溜息は深い。吐いた息を休符に、研究室は静かになる。重たい空気を天井の換気扇はこれでもかと混ぜていた。


「罠だと思うがな、俺は」


 電子レンジで珈琲を温めていたダリアが吐き捨てる。


「あのさァ、ドクター。俺、あそこの人信用していいか、わかんねえわ」

「どうしてだい?」

「あの副社長の女って吸血鬼だぜ?」

「言ってなかったっけ?」


 聞いてないんだけど、とラクは冷めた珈琲を一気飲みして、カップを診察台に叩きつけた。

 おかしいと思ったのだ。ダリアが何も行動を起こさなかったことが。初回の仕事であんなにも無残な処刑を繰り広げ、自分の体に大穴が開こうと吸血鬼を殺していた男が大人しかった。


「アンタも知ってたんだな?」

「発想を変えろ。なぜ、配達の確認だけで俺たちが揃って駆り出されたのか。おまえが必要になる場面はどこだ?」

「あー?」


 ラクは腕組をして、首を回す。ぐるぐるぐるぐる回して、何とか一つの仮説を立てた。ピーク時を過ぎてまばらな客足だというのに、足りない従業員。店に合わない服装の副社長、来なくなった配達員。


「吸血鬼による店の乗っ取り?」


 笑顔のドクターはうんうん頷いている。ラクはなんだか恥ずかしくなって、口を尖らせた。知らなかったのは、自分だけだったのだ。初めから。

 しかし、危険を伴う仕事だったと後から聞かされれば、遅れて恐怖心が来るものである。あの場にいなかった社長。もしかするとあの天羽という女吸血鬼、あの店の従業員を食って回っているのか。そんな想像まで、ぶくぶくと太る。


「社長は月宮と言っていた。ドクター、契約した社長の名前は月宮であっているのか?」

「ツキミヤ、聞いたことがないね……一体いつから社長が変わったのやら。毎月の定期連絡では変わりない内容でメッセージが来ていたけれど……」


 ドクターの操作したノートパソコンの画面には、レストランの社長と思わしき人物とのやり取りが表示されていた。先々月のメールを最後に、一通たりとも届いていない。ドクターの背後より覗き込むようにしていたダリアとラクは、顔を見合わせる。どうやら、狩りの対象はもう一匹いるのか。

 一つ気になったことがあったため、ダリアはノートパソコンを引っ手繰ってファイルを開いた。吸血鬼に関する事件の新聞やそのほか情報サイトの切り抜きが収められているところである。


「証拠がないんだよね。前社長やいなくなった配達員が食われたという証拠。いや、食われたのかも怪しいな。もしかしたら、まだ生きているかもしれないし。単に辞職しただけかも」

「可能性を考えていてはキリがない。ともかく、次に接触したとき社長に会える。探りを入れてみるか」

「キミがやる気を出してくれて私は嬉しいよ、ダリア。ラクくんのためにそこまで」

「寒いことを言うな。全ては俺自身のためだ」


 より多くの吸血鬼を殺せる体のために。ラクにはそう聞こえた。

 実害を出さない限り、殺しはしない。そう言って見せたあの顔は確かに、吸血鬼が憎くて憎くて仕方のないといった顔であった。親切な隣人なんぞ、この世にいないのだという顔。

 プレパラートを設置する作業に戻ったドクター。接眼レンズを覗き込みながら、微動ネジでピントを合わせている。


「返事はイエスで返しておいてくれないかな。こちらで受取人を立てるかはともかく、向こうの出方次第ではそのレストランが狩場になるのかな」


 ふんと鼻で笑ったダリア。話はこれで終わりなのだろう。パソコンを放り投げ、スマートフォンでどこかに電話を掛けながら部屋を出る。出る際、ついてこいというようにラクの方を一度だけ見た。ラクは暗い廊下を、ダリアの後に続いた。 せっかく温めた電子レンジの中の珈琲は、誰の手に触れることもなかった。

 ダリアの電話先は先程のレストランだった。返事をすると言って一言二言話すと通話を終えた。車のロックを解除して、帰路に就く。

 ブンと勢いのある音をさせて過ぎ去る街灯を目で追っていたラク。あのさあ、と怠そうにダリアに声をかけた。


「俺、また留守番?」

「嫌か?」

「もう引き籠るの飽きちゃったんだわ。たまに連れ出してもらえると、飼われてる側も大変うれしいわけなんだけどよ」

「じゃあ来るか」

「え、いいの?」


 意外にも得られた了承に、ラクは驚いて振り返った。ダリアの表情は些か固い。そうか、とラクは気が付く。ラクの同行を許すということは、救急箱が必要になる仕事なのである。初回のスナックに行ったときのようなラクの反応を試す仕事ではなく、本格的にやり合うかもしれない。

 ラクは固唾を飲んだ。暫くは、夜更かしせずに早く寝よう。効果があるとは思えないが。

 帰宅後、冷蔵庫を漁っていたダリアは、最後の輸血パックをラクへ投げて寄越した。明日の仕事次第では、これが最後の晩餐。心底感謝しながら、ラクは両手を合わせた。


「いつもいつも、輸血が足りないと世は言うだろ? あれってさ、俺たちみたいにハンターのバディやってるやつの食い物になってるからとか?」

「多少はあるだろうな」


 学校や各企業に献血車が訪れる。定期的に来訪する理由は、やはり輸血に使用する血液が足りないからである。原因の一端を、吸血鬼の食糧問題が担っていた。ラクは申し訳ないな、という顔をして輸血パックに吸い付いた。


「ありがたく飲むんだな」

「ん。それはそうなんだけどよ。病院側もよく輸血パック回してくれるよな。俺たち吸血鬼のこと、一番嫌ってそうじゃねえか」


 吸血鬼に襲われて、緊急搬送されてくる人間の多くなった医療業界。今では循環器内科に血を吸われてしまった人のための輸血外来なんてものがあるのだ。それほどまでに、現代の吸血鬼に関する問題は大きくなっている。

 今日は酒を飲まないのか、ダリアの手には炭酸水の入ったペットボトルが握られている。思えば、狩りの前日に酒を飲まない男だな、とラク。少し分けてもらおうと手を伸ばしたが、叩かれてしまう。


「向こうも、教会に協力することで実害が減ってきていることに気が付いている。手を加えた吸血鬼の脅威が極端に低下することも、まあ病院の連中は人体の専門家だからな。知っているんだろう」

「あー、そっか。ロボトミーって言ってたな。惨いわ、マジで」


 脳を弄るだなんて聞いただけでゾッとする。ラクは飲み終えた輸血パックを小さく折りたたんで、専用のごみ箱に捨てた。紙ごみなんかと一緒に捨てようとすると、ダリアがひどく怒るのだ。理由は、よくないものが集まってくるのだとか。詳しく訊くのも面倒で、ラクはそのよくないものが何なのか、一ミリも知らない。

 ダリアは開けていないペットボトルをラクにくれた。飲みかけを他人に渡したくなかっただけだった。


「お前も手術したくなったらすぐに言うと良い。ドクターに頼んで、完璧に仕上げてもらう」

「やらないっつったっしょ? なんでアンタ、そんなに手術すすめてくるわけ?」


 難しい顔をしたダリア。何か思い出している人間の特徴である、遠い目をして視界の斜め上を見上げていた。

 ダリアは様子のおかしくなった未改造の吸血鬼たちのことを思い出していた。殆どが第一世代と呼ばれる、生まれながらにして、純血の吸血鬼である、人間とはまるっきり種族の異なる者たち。ラクは第二世代に当たる。元人間の吸血鬼。

 彼ら第一世代は人間と吸血鬼に確かな一線を引いており、彼らにとって人間はどこまで行っても食糧でしかない。人間が米や肉を食べるのと同じように、それは決しておかしなことではないのだが、人間社会が認めるにはあまりにも非人道的であった。己の命の存続を脅かす存在が現れれば、排除しようというのが自然の理だった。

 そんな第一世代には強い魔力がある。ラクの血が起こす奇跡とも呼べる回復力をも凌駕する、強い強い魔力。かつての狩人はより強靭なバディを求めて、相棒には第一世代を選ぶことが多かった。


「昔は脳の手術が認められていなかった。吸血鬼の見てくれは、人間とまるっきり同じだからな。道徳心が働いたんだろうが、そいつがいけなかった。見てくれだけでなく、吸血鬼にも感情があった」

「当たり前じゃん」

「知らないやつが多かったんだ、古き良き時代には。当時はもう首輪の開発が成されていた。今と違い、爆弾ではなく電流だったが」

「マジで変じゃね。道徳心で頭は弄らなくても、電流は流すのかよ」

「サファリパークの電気柵のようなものだったんだ。考え方はな」


 お互いの身を守るための電流だったのだ。

 腹が減ったと、ダリアが呟く。ラクはもう毎度のことなので、文句ひとつ言わずにキッチンへ立った。調理を始めたラクを眺めながら、ダリアは話を続ける。


「自殺だ。吸血鬼の」


 ラクの包丁を持った右手が一度だけピクリと震える。が、次には淡々と食材を切っていた。なんでもないように、それで、と話を促した。


「感情を持ったままの第一世代のバディたちは、同族が惨たらしく殺されていくのに耐えられなかったんだ。目の前で家族が、幼いころ共に育った友人たちが、自分たちと同じ見た目をした人間に殺されていく。いつしか自分もあのように殺されるのだと、彼らを殺したのは自分だと思い始める」

「それと俺と、何が関係あるわけ? 俺は第二だし、吸血鬼に同情なんてしねえけど」

「罪悪感は人間にのみ与えられたものだと誰もが信じてやまなかった。それが覆された事件があった」


 ダリアはラクの背後に立ち、ラクを抱きしめるように両手を伸ばすと、頭上の棚より一冊のファイルを取り出す。ラクは身体を固くしていたが、ダリアは離れ、ラクの隣に並んだ。

 ファイルは新聞の切り抜きが集められた、スクラップブックだった。いずれの記事も、様々な書体で「吸血鬼の集団自決」と見出しがとられていた。


「心中だった。東京に居を構えている教会に所属していた吸血鬼たちが一斉に集まり、ダムに飛び込んだ。もちろん阻止しようとしたハンターは電流を流すスイッチを押した。皆がみんな、一斉にだ。あとはわかるな?」


 輝きだしたダムに、煮えたぎった血が混じる。赤く発光した大きな水溜りは、川を流れ、海に届き、水産業に様々な影響を及ぼした。

 始まりは大規模な青潮である。吸血鬼の血によって増えすぎたプランクトンにより魚は酸素が足りず、海面を覆うほど死んだ。異臭を放つ海上を鳥が羽ばたき、死んだ魚を食べた。そして食物連鎖により、流れ着いたのは我々人類。異常な長寿を手に入れたが、身体機能より脳の限界が早く来たことによる、精神疾患や重度の認知症の数々。

 自分を失ってまで生きていたくないと、安楽死制度が各国で取られ始めたのも、この頃になってからだった。

 ダリアはフライパンの上にあった肉を指さす。


「焼きすぎじゃないか」


 すっかり黒くなった肉を、ラクは皿に乗せる。毎日文句を言っていたら買ってもらえた米を、炊飯器より茶碗に盛った。

 ダリアはさしていた指を、開いたスクラップブックのある記事に移す。外国の新聞で、異国の言葉とともに写真が載っており、幸せそうな家族の笑った顔が並んでいた。皆、目に黒線が入ってはいたが、口元から溢れているのは幸せそのものだ。

 短い爪の先は、写真の人物のとある一人に向いていた。女の子。両親と比較してみると、十歳くらいの背丈。隣には同じくらいの男の子が立っている。


「彼女の名前はユバラ・イシュ・エル。現在は月宮千穂と名乗っているようだが。お前の姉で間違いないな、ラク」


 ラクは瞠目し少しの間だけ黙り込んだが、すぐに笑って、恥ずかしいとでも言いたげに鼻の頭を掻いた。


「話はさ、食ってからにしようぜ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヴァンパイアロード 佐野みつ @sanomitu0000

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ