僕が見た未来
NOTTI
第1話:奇跡の瞬間
2022年春、門戸正樹は外資系の企業に採用され、この春から国際業務部管理1課に配属され、企業の採用者研修を受けていた。
実は彼には会社員とは違う顔があった。
それは“マネジメント会社の社長”という肩書きだ。
この会社は業界内では有名ではないが、ここ2年で5人の有名人を輩出しながら、その人たちが他社からの引き抜き被害に悩んでいた。
会社自体も社員10人ほどの企業で、主にフリーランスの俳優さん・女優さん、声優さんが所属していて、子役やキッズモデルもアカデミーを卒業した子供たちが所属している。
その中に彼が最も推したい所属者がいた。
それは一般部門では中学2年生の藤野愛莉亜と高校2年生の浦野茉凜、子役部門では小学5年生の多野光輝、小学6年生の木田杏菜だ。
この4人は芸歴が5年から15年とそろそろ本格的に売り込みを始めないと遅れてしまうのではないか?と危惧していた。
ただ、子役から女優になった藤野と浦野は女優よりもモデルの仕事が多く、女優の仕事が出来ないという葛藤や焦りを彼は感じていて、特に浦野は高校3年生までに一定程度の実績を残せなかった場合には芸能活動を休止し、学業で実績を残したいという相談も受けていた。
他の3人もそれぞれ1つ目の目標として“中学3年生”や“高校3年生”という具体的な年齢を区切りとして考えていて、そこまでに何とかして実績を立てたいという気持ちが強かった。
そこで、正樹は希望者にあるグループのコンサートに連れて行った。
そのグループは所属者が100人いるが、実際にコンサートに立てるのは20人ほどで他のメンバーはコンサートの裏方スタッフとしてコンサートに参加しながらコンサートの進捗を見守っていた。
彼は中学生の時からこのグループを推していて、彼の推しメンは研究生の蓮田花恋というまだ小学生のメンバーだが、選抜メンバーのアンダーに唯一研究生の中で選ばれている回数が多い事で有名なメンバーで今回もリーダーの中本菜乃華のアンダーメンバーとして出演する事が発表されていた。
彼は高校生の時に今のマネジメント会社を起業し、20歳の時に芸能マネジメント会社を立ち上げた。
そのきっかけがこのグループとの出会いだった。
最初は多種多様な人材育成を中心にしていたが、彼がこのアイドルグループと出会ったことで、“アイドルを育ててみたい“という気持ちが芽生えたことやグループから卒業するメンバーも多く、卒業後の活動もトップメンバーにならないと有名な事務所からは声がかからないし、仕事も増えていかない。
そこで、「自分が事務所を開き、自分が芸能活動を続けたいというメンバーの受け皿として彼女たちをマネジメントすることが彼女たちの未来も応援できるのではないか?」と思い、芸能マネジメント会社を起業したときに女優部門と俳優部門、子役部門、モデル部門に加えて、アイドル部門も最初はアーティスト部門で創設し、1年後にアーティスト部門とアイドル部門に分けた。
彼が会社に入ったのは人を育てる上で必要な事を学びたいと思ったこと、一番上の社長という立場を社員から見たときにどう見えるのかを知りたかったという彼が今まで上に立って動かしてきた時に疑問に思っていた事を自分で就職活動をして、内定を勝ち取り、副業もOKの会社だったため、本業と副業を掛け持ちしながら会社を育てていこうとしていた。
そんなときだった。
彼が応援しているアイドルグループのプロデューサーから彼の元にメールが届いた。
彼は急いでパソコンのメールを開き、内容を確認した。
すると、びっくりする事が書かれていた。それは“貴社のアイドルグループと共同作品を作りたい”というオファーだった。
まさかの事態にアイドル部門の責任者である小園を社長室に呼び、メールを見せた。
実は小園は正樹の後輩で、彼が育てたアイドル志望の子たちはみんな有名グループへと合格し、会社内では“アイドル魔術師の小園”と言われるほど育成に関してすごく信頼を置かれていたのだ。
しかし、事務所にもアイドルグループはあるが、数ヶ月前にトップメンバー2人が有名グループからオファーを受けて、引き抜かれてしまい、今いるのは研究生と5人のトップメンバーだけだった。
この時、正樹はある事が頭をよぎった。
実は今回連絡をくれた先方のプロデューサーさんは顔見知りだったこともあるが、以前にある話を聞かされていた。
それは「いつか合同アイドルグループを作って、活動したいね」という話だったが、別のプロデューサーさんがこのような話のあとにこのグループのメンバーを引き抜いて勝手にグループを作っていたことがあったのだ。
僕が見た未来 NOTTI @masa_notti
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