依頼
目を瞑る。街の灯りが目の裏で舞っていた。そろそろ眠ろうと思ったとき耳障りな音が鳴った。ポケットの中のスマホが震えている。
「硲さん何なんですか」
「いつも通り冷たい声してるね〜
硲風斗はこの国に何人いるかわからない能力者の頂点だった。正直どういう能力を持ってるかは知らないが凄い人というのは確かだ。母の古くの知り合いらしく母が死んでからは私に仕事を紹介してくれた。
業界の通り名である「月」にちゃんをつけること以外はよく出来た人間だ。
「知ってるとは思うけど《影》が厄介なことになっている。何が厄介って魂の抜け殻を操る人間がいるってことだ。抜け殻だけじゃあ、さして問題にならない」
「私も今日、《影》を見かけました。というより襲われそうになって」
「月ちゃんならたくさんの人に恨まれてるからねっ」
「あの《影》はかなり弱い部類に入りますね。私が睨んで直ぐに祓えたしこちらに反動が全く来ていない」
あちらの言葉を無視した私に硲が苦笑する顔が即座に思い浮かんだ。
「そうかそうか。それはよかった。被害は大きくなってきたし心配してたんだ。そこでだが」
「《影》を祓えば良いんですね。」
「そうなんだよ月ちゃん。しっかりと謝礼はするから」
少し考える。硲の謝礼、危険な匂いしかしない。今まで硲からの依頼といえばうん百万単位だった。その分リスクは段違いに跳ね上がる。
この依頼の場合硲のバックにはたくさんの組織がいるのに違いなかった。久しぶりの大仕事、か。にっと笑う。
「わかりました。」
死が一瞬頭をよぎる。構わない。それに《影》を祓えば自分の死で多くの命が助かるかもしれない。今まで《睨み》をしてきた自分が思うこととはとても思えなかった。
「月ちゃんよく言ってくれたね。じゃ明日俺んとこ来てね。君以外にも依頼をしているんだ」
唐突に電話が切れる。
硲はこういう男だ、と思い出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます