会場散策(33:古井論理さん)

 ここはクリエイティブな物書きと、それをこよなく愛する読者さんが住んでいる国『カクヨーム王国』である。


 さて、本日もカクヨーム王国へやってきた和響は、なにやら思うことがあるようで、カキカキルームで「妄想主婦の日日是好日日記」を書き上げたようだ。


「今日の妄想日記、いろいろ思うところもあり、どうしても書きたかったんだよね。ほんと、大好きなカクヨムさんの心が萎んでしまってないかが、心配なんだ。


【第157話 日日是好日な日曜日の、本日。https://kakuyomu.jp/works/16816700429451766535/episodes/1681713955507999330


さて、それでは、平和と祈りの祭典の方にも行きますか。今日は誰かな、楽しみだなっと!」


 普通の古民家のような自分の本屋さんから出てきた和響は、空を見上げ、「平和と祈りの祭典イベント会場へレッツラゴー!」と声をあげた。


【戦争のない平和な世界になりますようにと、優しい「祈り」を込めて書いた作品募集します!https://kakuyomu.jp/user_events/16816927861270086890



 毎回便利な妄想世界。あっという間にイベント会場へとついたようだ。今日もカラフルポップな風船が浮かび上がり、その風船の上にはエプロンをつけたハムスターや、猪のような獣人が天ぷらを食べながら乗っている。どこかで天ぷらを振る舞ってくれるような本屋さんがあったのだろうか。


 「美味しそうな匂いと思ったら、天ぷら食べてるハムちゃんがいる! なんて可愛い! それに、あそこには猫耳の女の子がハーフドボイルドなお兄さんと一緒に天ぷらの屋台を出してるみたいだ! いいな、私も後で行かなきゃ!と、その前に。今日はエントリーナンバー33番の方だよね、えっと、古井論理さんという作者さんだね、では早速行ってみましょう! 古井論理さんの本屋さんへレッツゴー!」


【 古井論理さん https://kakuyomu.jp/users/Robot10ShoHei


 和響がそう声に出すと、足元に旋風が生まれ、それはどんどんどんどん大きくなって和響の身体を包み込んだ。そして、ごおぉおおと大きな音を出しながら天高く舞い上がり、そのまま和響を古井論理さんの本屋さんの前まで運んだようだ。


 あたりはどうやら日本ではなく外国である。戦闘機のようなものがいくつもいくつも並び、迷彩服をきた人々が忙しそうに歩いているのが見える。ここはまさに、ウクライナの空軍基地のようだ。ウクライナの黄色と水色の黒旗が風にたなびいている。


「ここは、もしかしてウクライナのキーウ? え? ちょま、ほんと?」


 和響は驚きを隠せないようだ。いつもであればカクヨーム王国内のどこかのシティにある本屋さんにいくはずが、いきなり物語の中のような場所である。


「もしかして、もうお話の中に? えっと、ここはどこですか? 居場所を出してください!」


 和響が少々うろたえながらそう言うと、目の前にホログラムが現れた。そこには、こう書いてある。


【キエフの亡霊――Phantom of Kyiv――  作者 : 古井論理】

https://kakuyomu.jp/works/16816927861113425846


「やっぱり、もう物語の中なんだ。てことは、ここはやっぱりウクライナのキエフ、今はキーウと言う方が多いけど。そっか、寒い寒いと思ったら、これはあれだね、ロシアがウクライナに侵攻を始めた頃のお話なんだね!」


 だんだん状況が飲み込めてきた和響は、戦闘機向かい歩いていく兵士に声をかけた。


「ちょっと、すいません」


「はい?」


「ここはウクライナのキーウですか?」


「そうです。ここは空軍基地。あなたは? みたところ普通のご婦人ようですが」


「和響というものです。カクヨーム王国で物書きをしています。今日は、古井論理さんの書かれたお話の中にお邪魔しにきました」


「そうですか。我らの創造主、古井論理様のお客様で。それでしたら、ここは大変危険です。もう間も無く、ロシア軍がこちらにやってくると連絡が入りました」


「まさに、ロシア軍による、キエフ進行が始まるといった場面なんですね」


「はい。本来ならここにいていただくことはできないのですが、あ、すいません! わたくしはもう行かなくては! あの、創造主様のお客様であれば、危険を回避しながら私どもの世界を見ていただけると思います。どうか、お気をつけて、ご覧ください。そして、今ここで起きていることをできるだけたくさんの世界中の人々にお伝えしてください。そのために我らが創造主、古井論理様はこのお話をお書きになったのですから」


「わかりました。たくさんの方に届けれるように、私のできる限りのことはします。どうか兵隊さんもご無事で!」


「大丈夫です! 我々には不死鳥フェニックスがいますから!」


 そういって和響に敬礼をしたウクライナ兵は、戦闘機のある方へ走っていった。あたりには戦闘機に乗り込む兵士がたくさんいる。


「どうか、みなさん、ご無事で!」


 和響はそういうと、兵士の方々の邪魔にならないように浮かび上がり、その様子をマジマジと体感した。ある時は戦闘機に一緒に乗り込み、またある時はウクライナの大統領の演説を聞いた。


「もう、涙が出てきました。ほんと、私も毎回KACで平和へ祈りを書いていて、エイプリルフールには戦争が終わりますようにって、祈り続けていました」


 だが、六月になろうとしている今でも戦争は続いている。和響は今の現実ワールドとは違う世界線の古井論理さんのお話に希望をもらい、黙祷を捧げた。


「すごいお話だった。って、あれ? 自分の本屋さんに戻ってきた」


 長い黙祷から目を開けると、和響は自分の本屋さんに戻ってきているようだった。古民家風の本屋さんには、縁側カフェが併設されている。そこに、中学生の男の子と女の子がお茶を飲みにきているようだった。


――あ、あれは多分、古井論理さんとこの、竹田さんと、丸木くんだね、きっと。そっか、遊びに来てくれたんだ。うんうん、うちにいつまでもいていいよ。あったかいご飯をみんなで食べようね。おばちゃん、お料理には自信があるよ。


 どうやらお節介な和響おばさんは、【君のとなりに 作者 : 古井論理 https://kakuyomu.jp/works/16816700427425289880 】の作中に出てくる発達障害の子供たちに話しかけにいくようだ。きっと、大丈夫だよって抱きしめたいのだろう。そういうことが好きな人と嫌いな人がいるということをあまり和響は深く考えていない。なぜなら、「助けて」っていえない人もいるからだ。お節介をして嫌われても、それは自分が嫌われただけのこと。でも、お節介をしなくて尊い命が奪われたら、それは取り返しがつかない。



 そう思っている和響は、二人に声をかけ、このあとは二人と一緒にカレーを作るようなので、本日はこの辺で。



 世界中の人々が安心して暮らせる日が来ますように。

 祈りを込めて。











――黙祷








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