会場散策(30:鍋谷葵さん)

ここはクリエイティブな物書きと、それをこよなく愛する読者さんが住んでいる国『カクヨーム王国』である。


今日は日曜日。ということは、一週間もやって来てなかったのか!? と驚きを隠せない様子の和響とやらを早速今日も覗いてみよう。さすがに丸々一週間も更新してないなんて、酷すぎると、自分で自分を責めているようだ。


「まじで? 一週間も来てなかったの? 気持ちが他に行きすぎじゃん!バカバカ!私のおバカー! もこれは一刻も早く、 自主企画【戦争のない平和な世界になりますようにと、優しい「祈り」を込めて書いた作品募集します!https://kakuyomu.jp/user_events/16816927861270086890】へ行かなくちゃ!」


大急ぎでイベント会場へ向かったようだ。妄想世界も大急ぎで場面転換し、いつものイベント会場である。今日も多種多様な物語の登場人物たちが行き交っている。それにしても、あの上空に浮かんでいる、あれは一体なんだろうか、もしや幻のムー大陸、かもしれない。


「また少しだけ本屋さんが増えたみたい! もう一週間開いちゃうとかないわ。毎日更新しても、三ヶ月以上かかるというのに。本当、反省! 平日は一日一話を目標にしていたじゃん。全く、ノンアルコールでお願いしますよ、現実ワールドの私! 」


最近長編ミステリーを書いていて、頭がそっちばっかりだったようだ。反省の声が聞こえたところで、本日の本屋さんを探している様子。実は、エントリーナンバー29番の方もいらっしゃるのだが、ご挨拶したところ、紹介まではいいですよとのことだったので、お次の30番の本屋さんに向かうことにしたらしい。会場マップを見ながら、探していた本屋さんをどうやら見つけた和響は、声高らかに、本屋さんの名前を呼んだ。


「では早速、エントリーナンバー三十番、鍋谷葵さんhttps://kakuyomu.jp/users/dondon8989の本屋さんへレッツラゴー!」


くるりと世界がひっくり返って、到着したのは、どうやら現代シティと異世界ファンタジーシティの真ん中あたりの場所だった。リアルな街並みの中に、大きな杉の木があって、そこには大きな大きな蜘蛛の巣が張られているようだ。あそこに捕まってしまったら、人でも危ういかもしれない。


「へぇ、ここかぁ。鍋谷葵さんの本屋さん。なんか思ってた以上に大きいなぁ。図書館のようにも見える。さてさて、では早速、お邪魔しまぁす」


そう言って和響が図書館のような本屋さんの扉を開けると、内装も全く図書館のようだった。受付カウンターの前を横切り、奥へと進む。


「図書館、それもこの光の具合だと、夕暮れ時……、放課後の図書館って感じなんだね、きっと。あ!」


何やら見つけた様子。


――うわぁ。なんだろ、あそこの男子高校生たち。なんか雰囲気がいい感じ。あ! み、見てはいけないものを……。いかんいかん、おばちゃんお邪魔はしちゃいけません。早く今日読む本をさがさねば!


そう言って先を急ぐと、通路の真ん中に、「平和と祈りの祭典」と書いた看板があり、その手前の陳列台に本が一冊置いてあった。


「あった、これだこれ、では早速、


【寒空の雪カラス 作者 : 鍋谷葵 https://kakuyomu.jp/works/16816927861261086852


に入って来ますね!鍋谷さん!」


和響が本を手に取ると、いつものごとく、頭からすっぽりと本の中に入って言った。


「え? それは大変。え、でも外は雪だよ?危ないよ、ねぇ、大丈夫なの?」


声がやけに外まで漏れているようだ。図書館だからあまり大きな声が漏れるのはまずいと思うが、果たして大丈夫なのだろうか。そうこうしているうちに、ぽんっと、もといた位置に戻って来た。


「なんか、胸がつまるお話だった。確かに、平和への祈りな気がする。何だろう、いろいろ深く考えてしまう、ううむ。深い……」


そう言いながら、お手紙を書き書きして、受付カウンターの上に置いてあるご意見箱へと投函した。そして、ゆっくりと歩きながら図書館から出て来たようだ。


「うわっ!びっくりした! 大きな女郎蜘蛛だなぁ」


どうやら入口付近に立っていた杉の木に大きな蜘蛛がいたようだ。しかし、その蜘蛛のいる蜘蛛の巣は美しい水滴をキラキラと輝かせている。中に入っているうちに一雨降っていたのかもしれない。


「夕陽に煌く蜘蛛の巣の水。きれいだなぁ。これこそまさにドリームキャッチャーだ!」


――もしもこの蜘蛛の巣がドリームキャッチャーならば、願いをどうか叶えてください。この世界から戦争をなくして欲しいです。もう、直ぐにでも、お願いいたします。どうか、どうか、お願いいたします。


和響は、そう蜘蛛の巣に願いをかけているらしい。


いまだ、現実ワールドでは、戦争は終わりを迎えない。いつになったら終わるというのだろうか、もう沢山の命が奪われ、街は破壊された。日本も他人事ではない。もう身近な出来事なのだ。


一刻もはやく世界から戦争がなくなりますように。そして、お亡くなりになられた方々へ、お祈りを捧げて、本日の会場散策を終わりたいと思う。




――黙祷。



世界が平和になりますように。

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