会場散策(28:荒川馳夫さん)

ここはクリエイティブな物書きと、それをこよなく愛する読者さんが住んでいる国『カクヨーム王国』である。


今日は日曜日。やっとカクヨーム王国にやって来れたと胸を撫で下ろしている、いつもの和響とやらを、今日も早速覗き見してみよう。何やら今日も大きな独り言を言っている様子。


「昨日は忙しかった。土曜日は子供の習い事への送迎地獄なんだよねぇ。でもって、名探偵な子供が活躍する映画を昨日、見てきたんだけど、やっぱり面白かったな。ロシア語がいっぱい出てきて、ちょっと色々思い出しながら見ちゃった。と、そんなことは置いておいて、では早速、 自主企画【戦争のない平和な世界になりますようにと、優しい「祈り」を込めて書いた作品募集します!https://kakuyomu.jp/user_events/16816927861270086890】へと向かいますか!」


あっという間にイベント会場についたようだ。先ほどの大きな独り言は必要なくだりなのだろうか。と、そこはおいておいて、今日も色とりどりのバルーンが空に浮かび上がり、なんとも平和な会場。が、今日はウクライナの戦争で亡くなられた人々への追悼式が行われている。敵も味方も関係なく、ありとあらゆる国の人たち、ドラゴン、ケモ耳をつけたイケメン、魔女、スライムまでもがその式典に参加しているようだ。


――今日はどうやら、現実ワールドで起こっている戦争で亡くなられた方々の追悼式をしてるんだ。たくさんの人々が亡くなられているんだもんね。胸が痛い。私も喪服に着替えなきゃ。


和響がそう思ったら、すぐに着ているものが、黒いワンピースに変わった。なんとも便利である。さすが、妄想の世界。そして、みんなの輪の中に紛れていった。


――空にはカラフルなバルーン、これはきっと世界中の国旗の色なんだろうな。色々な国の色々な場所で起こっている紛争や戦争、全てがなくなって欲しい。そう、ここにいるみんなは思っている。


哀悼の祈りを捧げ、いつもの会場マップを取り出してきた。そして、そのマップを眺め、今日行く場所を見つけたようだ。


「今日は、エントリーナンバー28番の荒川馳夫さんだね。よし、それでは早速行ってみることにしますか。荒川さんの本屋さんへレッツゴー!【荒川馳夫さん:https://kakuyomu.jp/users/arakawa_haseo111】」


そう、和響が口に出すと、白い靄が和響を包み込み、ふわっと風に舞って、空へと消えた。そして、あっという間に、荒川さんの本屋さんがある場所についたようだ。どうやらここは、詩・童話シティ。その中でも、現代ドラマよりな場所のようで、ビル街なのだが、今日は休日だからなのだろうか、街を歩いている人は誰もいない。


――普通に東京かどこかのオフィス街みたいな街並みだけど、誰もいないなぁ。日曜日だからかな? でも、こうやって誰もいないオフィス街って、なんか寂しい感じがするよね。命が吹き込まれてない空間っていうか、人の温温もりがないというか。立派に見えるけれど、からっぽというか、なんだろう、この感じ。


そう思いながら、荒川馳夫さんの本屋さんに入っていくようだ。荒川馳夫さんの本屋さんは、ビルの一階に入っている店舗のようだ。ガラスの自動ドアが開いて、和響は中に入って行く。


「こんにちはぁ。荒川さん見えますか? あ、近況ノートに、仕事に慣れるために、一ヶ月お休みって書いてあるから、今はきっといないよね」


そう言いながら、本棚に向かっていく。外の無機質な街並みとは対照的に荒川さんの本屋さんの中は、温かみのある木の内装になっている。まるで、本当の優しさや、大切な事とはなにかを、空間で語りかけてくるように。


「あった。これだ。では、荒川さんの妄想アトラクション、【リアリティー 作者:荒川馳夫 https://kakuyomu.jp/works/16816927861194385230 】体験してきます」


と言って、頭からその本の中にすっぽりと入っていった。そして、あぁ、胸が苦しい。もう、涙も溢れてくる。不条理だ。なんでこんなことが起こるんだ。と、ハンカチで目を押さえながら、元いた場所に戻ってきた。


「荒川さん、胸が痛いけれど、これは真実ですよね。なんとかしたいと祈るだけでは、世界は変わらないのでしょうか、読ませていただき、ありがとうございました」


と言って、涙を吹きながら、お手紙を書いている。そして今もまた泣いている。


「リアリティだけじゃなく、荒川さんの作品はどれもショートな作品だけど、そのどれもが、何か深く考えさせられるし、胸に迫ってくる内容が多かったです。出会えて良かったです。本当にありがとうございました」


そう言いながら、本屋さんのご意見箱にそのお手紙を入れ、本屋さんから出てきた。



――誰もいない、立派な街並み。でも、その中身が詰まってるからこそ本物になる。その中身はきっと温かいものでないといけないと思うんだよね。大切なのは、本質。それをとても感じさせてくれる作品ばかりの本屋さんだったなぁ。


和響がそう思って、誰もいない街を歩いていると、目の前の曲がり角から、わらわらと、様々なジャンルの登場人物たちが、胸に花束を抱えて出てきた。その中には、兵士もたくさん混じっている。きっと、平和を祈りに、追悼式へ向かうんだろう。



――みんなみんな、争いで人が死ぬなんて、本当は嫌なんだ。なんでそれが分からないんだろう。もう、人を殺さない方法で、問題を解決して欲しい。それだけが、願いだよ。



そう思いながら、和響も、その列に並んだ。いつの間にか、胸には真白な花束を持っている。



そして、ついた場所は、追悼式会場。

戦争で亡くなられたすべての人々に、哀悼の祈りを捧げる場所である。

良ければ、これを読んでいるみなさんもご一緒に。




――黙祷。




戦争のない世界を望んでいます。







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