22. 真正・悪魔
「す、
完全に、ボクを怒らせた。
「羽が…」
普段なら制御出来てるものが、全て取っ払われてしまったボクは、単なる悪魔だった。
「志井さんがいけないんだ…」
バカ。
志井さんのバカ。
「俺のせい、か…」
何、笑って…。
「須貝、その羽触らせて…」
そう言うと志井さんは、ボクを羽ごと抱きしめた。
「志井さん…?」
「落ち着こうか…」
よし。よし。と、頭を撫でてくれる。
「昔を思い出したよ…」
「昔って…」
そう言えば、昔一度だけ志井さんの前で抑制できずに羽が出て来てしまったことがあった…。
「思い出した、の…?」
「そうだな」
そう言って、志井さんはもっと強く抱きしめる。
『好きだよ…』
志井さんが言えないならば、ボクが先に言おう…。
「おかえりなさい…」
志井さん…。
嫌われてないなら、これくらい許してくれるのかなぁ。
ムギュッと掴んだ両腕の感触。
フワッとした加齢臭…。
志井さんだって実感する。
「ただいま…」
ボクには全てが大好きで。
すべてが愛おしいヒト。
「須貝…?」
「好きです…」
離したくない。
離れたくない。
「うん。知ってる…」
そう言って、ボクの背中を撫でる。
「だから、泣くなよ」
優しくて、
「おいおい…」
更に泣いてしまった。
もう止まらない。
「志井さん、は…、ボクのこと…、イヤ…?」
涙も、言葉も。
「須貝…」
更に志井さんとの距離感が近付いて、心臓の音がうるさくて…。
スゴく高揚しているのがわかるくらいの吐息が聞こえる。志井さんも…。
「好きだよ…」
え…?
「志井さん…」
今、何て…?
「イチャイチャするなら、営業時間外にしてくださいね…?」
そう言えば、
「す、すみませんっ」
さっきは銃口向けて、すみませんでしたっ!!
とばかりに、深々とお辞儀をした。
「可愛いだろ…?」
ニヤリと笑い、ボクの肩に手を置き、
「呉井にはやれないなぁ…」
「いらないわよっ」
言い合っている二人の声が入って来ないくらい、ボクには志井さんの「好き」だという言葉が響いていた。
AIMAI World 環 @tamaki_1130_2020
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます