21. 憑依

雪之丞ゆきのじょうくん…?」

 そもそも、いつも向かいの呉服屋にいるときは和装。

 なのに、今日に限って背広…。

「動かないでください」

 狙いを定めて、標的のモノを視る。

「な、何で…?」

 やっぱり、見えた。

呉井くれいさん、動かないでっ!!」

 怯えている呉井さんから、眩しい光を放ち標的は消える。

「チッ…」

 逃げた…。

 また遠くには行ってない筈。

 そう思って溜め息を吐くと、ドンッとデカい物音が聞こえたので、外へ繋がる扉を開けると、

「バケモノ…?」

「そう、ですね…」

 バケモノは奇声を発しながら、駐車場を破壊している。

須貝すかい、退け」

 一瞬、バケモノと目が合ったと思った瞬間に、防壁を作ってくれた志井しいさんに助けられた。

「呉井、弁償してくれるんだろうな…?」

「勿論よっ」

 勢いは強くて、志井さんが押され気味になっている。

「呉井、お前に興味ないからやめろ」

「はい…」

 呉井さんが志井さんにイタズラしていたらしく、ただ集中できなかったようで…。

 俺からは死角で見えなかった…。最近、ご無沙汰なのに…。

 思わず、舌打ちしてしまった…。

「ほら、須貝が…」

「羨ましい…?」

「全然」

 イライラしながら、バケモノを一撃した。

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