20. ボクの、なの。

呉井くれい、どうした…?」

 志井しいさんから「呉井」さんというワードが出て来なければ、

「『どうした…?』じゃないでしょっ!」

 オネエ口調が残念なボク好みのオジ様認識だった。

「コレ、志井ちゃんにあげたでしょっ?」

 そう言って、呉井さんは志井さんに布きれを叩きつける。

「いやいや、強引に渡されたブツじゃないか…?」

 覚えがない志井さんにとってはあまり興味のないもので、

「もうこれだから志井ちゃんはフラれるのよっ」

 でも、そういう仲なのか…。

 呉井さん、もしかして、いや、もしかしなくても志井さん狙い…?

須貝すかい、雑巾なら他にもあるぞ…」

 そういう目で見てたワケではなく、

「わかってます…」

 思わず溜め息が出て、顔を上げたら呉井さんと目が合った。

「志井ちゃんはヤメた方がいいわよ…」

 目を細めて、

「女性のことで苦労するから、オススメできません」

 そして、ボクを抱き寄せて、

「だから、俺にしない…?」

 呉井さんの低音が、また先程のオネエ口調からのギャップでボクのココロは射抜かれる。

 ドキドキする。

「しません」

 お断りする。

 だって、オネエだもん。

「志井ちゃん、フラれたじゃないっ!」

 志井さんにどさくさに紛れて抱きついて、

「は、離れろっ」

「嫌よ」

 楽しんでる呉井さんとは対照的に志井さんは本気で嫌がってるようで、

「須貝、コレどうにかして」

 コレとは、呉井さんのこと。

 呉井さんを指差して、必死で離れようとしている。

「はい…」

 とりあえず、呉井さんに銃口を向ける。

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